レビュー

ドコモがおくる未来のスポーツ観戦スタイル「5G LIVE SPORTS SUPPORTER+」を試す

 スタジアムにスポーツ観戦に行ってみたけど、いざ試合が目の前で始まると「何が起こっているのか分からない!」「いまリードしているのはどっちなんだ?」「この周りの歓声はなに……?」なんていう状態に陥ったという方は少なくないのではないだろうか。

 かく言う筆者もまさにそういうタイプの人間だ。テレビで見ると実況や解説がある分、展開を把握しやすいのだが、生で見ると目がついていかない。というか、頭もついていかない。

(C)KASHIMA ANTLERS

 しかし、もしテクノロジーの力で観戦体験をサポートしてくれるツールがあったとしたら……。NTTドコモが提供する「5G LIVE SPORTS SUPPORTER+」(仮称)は、生の興奮にプラスして、テクノロジーの力でリアルなスポーツ観戦体験に新しい風を巻き起こしてくれるサービスかもしれない。

 今回は、9月27日に行われた実証実験の体験レポートをお送りする。

5G LIVE SPORTS SUPPORTER+とは?

 5G LIVE SPORTS SUPPORTER+は、ドコモが提供する5G時代のスポーツ観戦ソリューション。競技場に複数台されたカメラからの映像をリアルタイムに配信。手元もスマートフォンで好みのアングルからマルチアングル映像を楽しめる。

 加えて、ゴールの瞬間など試合のハイライトをリプレイでき、お気に入りの選手のファインプレーを繰り返し見る、なんていうことも可能だ。

LIVE SPORTS SUPPORTER+用端末が設置された席。新型コロナ禍もあり、広めの間隔が取られていた(C)KASHIMA ANTLERS

 試合の映像に加えて選手の詳細情報も確認できる。サッカーであれば選手それぞれのポジションも表示されるので、コアなファンと一緒に観戦すれば画面の情報を通じて、チームの作戦や特徴を解説してもらえるかもしれない。

 つまり、スポーツにあまり明るくないという人でも、リアルタイムな試合展開をつかみやすい、そしてよりその競技を深く知るための入り口となるかもしれないサービスと言えるだろう。

実際に試してみたところ……

 9月27日、茨城県鹿嶋市のカシマサッカースタジアムにおいて行われた鹿島アントラーズ対大分トリニータ戦を実際にこのサービスを使いながら、観戦してみた。余談だが、筆者はサッカーについて、子供の頃に近所の友だちと一緒にやっていた程度の知識レベルである。

会場のカシマサッカースタジアム(茨城県)。手前の像は「ジーコ像」

 試合開始前には、双方のチームの紹介画面が表示されており、試合前の興奮を盛り上げてくれる。試合開始前にデュアルスクリーン上部に表示されている「START」ボタンを押すとマルチアングル配信が始まる。

試合開始前の画面。上の画面にはチームの解説、下ではそれぞれのチームの選手情報を見られた
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 今回、試合会場となったカシマサッカースタジアムには合計で7台のカメラが設置されており、端末上からは4つのアングルの映像を選べるようになっていた。ちなみに、そのうちのひとつはDAZNの中継カメラで、このアングルを選択した場合はDAZNの中継映像を同じものを見れるということだった。

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 筆者が座っていた席は、選手や監督のベンチがあるいわゆるメインスタンドと呼ばれる場所だった。フィールドのほぼ全てを見渡せるような位置だ。とは言っても、さすがに少々距離があり、忙しなく動く選手たちのプレーが追いづらいことも。

 そんなときにも意外と活躍するのが、この5G LIVE SPORTS SUPPORTER+だ。選手を追跡するアングルがあり、これを使えば目の前の画面で容易に試合展開を追いかけられる。正直な話、筆者としてはこれを体験する前には「スタジアムにいるのにスマホのちっちゃい画面なんか使うのか……?」と思っていた。

 が、これが予想以上に良い。

 座る席にもよるだろうが、どうしてもボールが追いづらくなるということが何度かあった。そんなときにスマートフォンの画面から選手を追跡するカメラに切り替えれば「ああ、いまあそこでこうなってるのね」と何がどうなってるかを把握するのにとても役立ったのだ。

リプレイを使用中のイメージ。下画面の「クリア」や「キャッチ」などの項目をタップすると再生開始 (C)KASHIMA ANTLERS

 いや、ひょっとするとその競技に造詣の深い方であれば「見りゃわかるだろ!」ということもあるだろう。しかしながらビギナーにとってはこうした機能は実に役立つのではないだろうか。

試合の流れをスマホ上から確認できる

 画面下部から確認できるスタッツ情報では、どちらのチームが有利に試合を進めているかのひとつの指標になるボール支配率も確認できた。マルチアングル映像と組み合わせれば試合の流れを把握しやすくなるだろう。

ボール支配率を表示した様子 (C)KASHIMA ANTLERS

 試合展開のほかにも、何メートル走ったのかを選手一人ひとりずつ確認できる「走行距離」やチームごとにゴールの数やシュート数、オフサイド、ファウルなど試合情報をリアルタイムに確かめられる。

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フォーメーションの表示
選手の走行距離
チームスタッツ
選手交代時の画面 (C)KASHIMA ANTLERS

 ちなみに筆者の観戦時にお目にかかることはなかったが、イエローカードやレッドカードも記録される。

 どの機能も対戦チーム双方の記録が蓄積されていくので「結局どっちが有利なの?」と思ったらこれらの情報を参照すれば把握しやすい。

素人にも玄人にも嬉しい機能

 試合中、デュアルスクリーンの下の画面に要所要所でのプレーが記録されていく。それらをタップすることでその瞬間を何度でも繰り返し見ることができるようになっており、決定的瞬間を確認するにも役立つ。

 具体的な話をすると、前半16分で関川選手がシュートを打っていたようだが筆者は全く気づかなかった。というかスタンドの歓声に気づいて慌ててフィールドを見てからスマホをチェック、その瞬間をリプレイするという具合だったが、これがあるおかげでどうにかなった。

 取材も兼ねた観戦、必死にメモを取りながらだったという言い訳をしておきつつ、この程度の筆者でも「おぉ!」と手に汗握る観戦の手助けとなったのは間違いない。

リプレイを使用中のイメージ (C)KASHIMA ANTLERS

 じゃあビギナーにだけ目を向けたサービスなのかと言われるとそんなことはなさそうだ。

 今回のサッカーであれば、たとえばハーフタイムの間などに仲間内で応援しているチームの選手のプレーについて、その瞬間を再生しながらあーでもないこーでもないと語り合うなんていう使い方ができるだろう。連れ立ってスタジアムに来たファン同士やそれ以外のファンともコミュニケーションの輪を広げるきっかけになるかもしれない。

ファン層の裾野を広げるきっかけにも、今後の展開に期待

 一通り、5G LIVE SPORTS SUPPORTER+を使ってみたが、筆者のようなド素人でも試合展開をつかめるし、リアルタイムに進行中の試合の瞬間を何度でもリプレイできるというのはこれまでにない新鮮な感覚だ。

 5Gのおかげか、中継画面と目の前の試合風景を同時に見ても、遅延は感じなかった。

アンテナピクトも5G

 テレビ中継と違い、解説や実況のない生の観戦は、試合の展開を把握しにくいという点で初心者にはハードルが高いと思う。そこに、5G LIVE SPORTS SUPPORTER+のようなサービスがあれば、これまでよりも幅広い層へそのスポーツの魅力を発信するきっかけになるかもしれない。

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 今回の鹿島アントラーズ対大分トリニータ戦での導入はあくまで試験的なもので、今後の具体的な導入については未定としているが、今回、5G LIVE SPORTS SUPPORTER+を使用した観客たちの声を取り入れつつ、前向きに検討しているという。

 ちなみにドコモでは昨年、ラグビーの試合で同サービスを招待客に向けて試験的に提供している。このサービスは多様なスポーツで応用できるのかもしれない。

 たとえば、会場に行っても自分の目でマシンを見られる時間が限られるモータースポーツは相性が良さそうだ。ドローンに搭載したカメラから、競技中のマシンを捉えた映像をLIVE SPORTS SUPPORTER+で配信する、というのは5G時代ならきっと夢物語ではないと思う。

 どんな競技に導入されるにせよ、これまでになかった新しい観戦のスタイルを生み出してくれることは違いなさそうだ。今後の幅広い展開にぜひとも期待したい。