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ライブ配信を省人化、IIJの配信プラットフォームの裏側を公開

 例年開催される「東京・春・音楽祭」をライブ配信する、インターネットイニシアティブ(IIJ)がその裏側を報道陣向けに公開した。今後、同イベントで用いられる配信プラットフォームの商用サービス化を検討している。

写真はIIJ本社内にある試写室

コストをおさえて配信

 東京・春・音楽祭は、例年春に開催される音楽祭。2023年は東京都・上野の会場を中心にクラシック音楽を楽しめる祭典で、現地での鑑賞はもちろん自宅のパソコンやスマートフォンなどを通じてオンラインでも視聴できる体制を整えている。

 オンライン配信については、MVNOサービスの「IIJmio」などを展開するIIJがその役割を担っている。同社は例年、配信業務を担当しており、IIJ ネットワーク本部 xSPシステムサービス部の岡田裕夫氏は、2023年の取り組みは「キープコンセプト」と表現。

 各会場にはカメラを1台設置。会場へは配信機器を持ち込まずに1人でも設置が可能なレベルの機材の量とするなど、コストをおさえたかたちでの運用体制を整えた。配信時に必要な操作はすべて、東京都・飯田橋にあるIIJ本社のスタジオサブからリモートで行う。カメラが1台の関係上、マルチアングルでの視聴はできないが、4Kカメラによる自由視点移動が可能。2022年時点では対応していなかった、最大ズーム時以外の視点変更にも対応するアップデートが加えられた。

フレッツ・モバイル回線で伝送

 カメラからの映像はIPプロトコル(SRT)とSDIと呼ばれる2つの方式で伝送できるという。4Kの場合はSRTを用いて、IIJのVPNを介してフレッツ回線経由で伝送する。会場でフレッツ回線を引けない場合などは、2Kにビットレートを下げたうえで「LiveU」を用いてモバイルネットワーク経由での伝送も可能。遅延対策としてブロードバンドルーターも用意する。これにより、フレッツ回線とモバイルネットワークのアクティブスタンバイ体制を構築している。

 ネットワークの輻輳が懸念されるが、フレッツの折り返し網内の速度はおよそ300Mbps。配信で用いる30Mbpsと定めた速度に対してその10倍ほどの速度を実現できているという。回線の不具合で映像が乱れることはなかったとした。これまで、現地で行っていた配信のオペレーションをIIJ本社へ集中させたことにより、現地へ派遣するエンジニアの数を2/3程度に削減できた。

IIJ本社のスタジオサブ

 モバイルネットワークを用いる場合の課題として、ネットワークの混雑がある。岡田氏によれば、上野の会場周辺は観光客などで混雑しておりモバイルネットワークが思ったように速度が出なかった。そのため、ブロードバンドルーターを用意するなどの対応がとられた。コロナ禍の終焉とともに、こうしたケースは増えると考えられ、岡田氏は衛星通信などのバックアップ経路も考える必要があるとした。

商用展開も準備

 今回用いられた配信プラットフォームは、「IIJ Teatristaサービス」(Teatrista=テアトリスタ)として商用提供の準備が進められている。現状の配信サービスの課題として、配信コストが高額で継続的な提供ができないといったものがある。そこで、IIJで映像配信から会員・チケット管理、課金決済などのサービスを一元的に提供することで、課題解決を狙う。

 特に、さまざまな配信サービスが立ち上がっているなか、ユーザーはその都度アカウント作成が必要となっている現状があるが、Teatristaを用いる配信であれば同一のアカウントでさまざまなコンテンツが見られるようになるという仕組みが検討されている。

 Teatristaは、2023年度にも商用提供が予定されている。