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KDDIとJR東、「都市OS」連携で混雑回避など可能なロボット配送を検証

 KDDIとJR東日本は、JR目黒MARCビルにおいて、防犯カメラの映像データをAI分析し、配送ロボットが自動で混雑回避や回遊販売を行うフードデリバリーサービスの実証実験を開始した。期間は27日までで一般者の参加はできない。2025年春の実用化を目指す。

 本実証は、「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」のまちづくりをコアとしてJR東日本とKDDIが取り組む「空間自在プロジェクト」の一環として行われる。同プロジェクトでは、これまでにも相手と同じ空間にいるかのような臨場感を重視したビデオ会議のシステムなどを実用化し提供している。

JR東社員対象にお弁当やお菓子を配送

 今回の実証では、ロボットによる食料品の配送を通じて、ロボットの実用性を確認する。東京都目黒区のJR目黒MARCビル内で働くスタッフに、JR品川駅の商業施設「エキュート品川」で販売されるメニューの一部が試験的に提供される。

 実証のシナリオは、勤務するオフィスのフロアまで、注文したお弁当を配達するサービス、お菓子などの回遊販売、複数の機種のロボットの協調制御が予定されている。

 使用されるロボットは「都市OS」に連携することが特長。実証中では、ビル内に設置されたカメラの画像をAI解析し、ロボットに人の密集度のデータを伝え、最適なルートで移動できるかが検証される。

 加えて、人が多いエリアに移動してのお菓子の回遊販売のほか、異なるメーカー同士であっても、複数のロボットが鉢合わせてもスムーズに動けるよう制御するなど、ロボットプラットフォームと都市データ連携の有効性を確認する内容が想定されている。

人手不足・ニューノーマルに対応

 JR東日本 マーケティング本部 マネージャーの松尾俊彦氏は、警備や清掃といった街の機能維持に不可欠な仕事に対して人材が集まりにくいといった社会課題があると説明する。加えて、新型コロナウイルスにより始まった働き方や食事のとり方の変化といった新しいスタイル・ニーズが生まれているとして、今回の実証実験での内容を通じて、そうした課題の解決につなげる。

JR東日本 松尾氏
KDDI 保科氏

 今回の実証実験で使われるロボットは、ひとつのロボットプラットフォーム上で管理されており、さらに「都市OS」との連携がその特長としてアピールされている。都市OSとは、スマートシティを実現する仕組みのことで、さまざまなサービスに柔軟に対応できる体制を整えられる。

 データ連携などがない従来のロボットでは、人混みなど、回避が難しい状況になると待ち続けるしかなく、商品の遅配につながる問題があった。人間が介入して対処することも考えられるが人件費の増加が懸念される。

 一方で今回の都市OSと連携するロボットであれば、あらかじめ設置されたカメラなどのセンサー情報と連携し、その場の混雑具合を判断し、人のいないルートを自動で選択して走行するといったことが可能になる。

 これにより、遅配の可能性を減らすと同時に監視要員の人件費も削減することが期待される。実証では、ビル内に設置された監視カメラと連携し、人がいる場所を避け、誰もいない場所を走行する様子が披露された。

 また、ロボットプラットフォームは、複数のメーカーのロボットに対応可能。これにより、さまざまな種類のロボットの協調制御を可能にしており、警備用ロボットと配送ロボットが同じ進路上にあっても、指定された優先順位に沿って走行する様子が見られた。

実証エリアのビル内を走行する配送ロボ
人混みをしり目に進路を変更する配送ロボ
警備ロボと連携し先をゆく配送ロボ

25年の実用化に向けて

 食品の購入はスマートフォンのみで完結する。回遊販売を利用する場合は配送ロボットのQRコードを読み込み、Webサイトへアクセス。商品を選び、表示されるQRコードをロボットのセンサーにかざすとドアが開いて商品を受け取れる。

 オフィスへの配送時はエレベーターとも連携でき、人が介入せずにエレベーターに乗って勤務先までお弁当を届けに来てくれる。エレベーターとロボットの連携は、先行する例があるが、場所やエレベーターの機種などによってそれぞれの調整に手間がかかる。KDDI DX推進本部 グループリーダーの保科康弘氏は、このようなロボットを活用する下地を街が用意することで、今後ロボットの利用を促進したいと狙いを語る。

ひとりでエレベーターに乗り込む配送ロボ
バックでエレベーターから出て方向変換する配送ロボ
QRコードをかざして注文商品を受け取る人

 都市OSとの連携を活かすことで、回遊販売の効率化も期待できる。防犯カメラのデータを集めることで人が多く、販売が見込めそうなエリアを認識しそこへ向かうよう制御する。これまでのように決められたルートを回るだけでは、購入が期待できる人がいるかどうかがわからなかったが、センサーとの連携でより効率の良い販売が可能となるため、ロボットの台数削減や性別など属性にもとづき、販売商品を変更するといったことができるという。

お菓子を回遊販売する様子
回遊販売を利用する際のユーザーインターフェイス

 今回の実証の内容は、JR東日本が開発を進める「高輪ゲートウェイシティ」へ導入を予定しており、その街開きとなる2025年春の実用化に向けて開発が進められる。