ニュース

楽天モバイル0円終了&課金ユーザー100%、第3四半期の業績は

 楽天グループは11日、2022年度第3四半期決算を発表した。モバイルセグメントにおける第3四半期の売上収益は893億円となり、前年同期比62.5%増となった。営業損失は1209億円を計上した。

 同日の説明会には、楽天グループの代表取締役会長兼社長 最高執行役員である三木谷浩史氏や、楽天モバイルの代表取締役CEOを務めるタレック・アミン(Tareq Amin)氏らが登壇。楽天モバイルの取り組みなどを中心にプレゼンテーションを行った。

 本稿では、楽天モバイルに関するプレゼンテーションと質疑応答の内容をあわせてお届けする。

三木谷氏
アミン氏

短期間での基地局整備を可能にしたものとは

 「携帯市場の民主化」というビジョンを掲げ、携帯電話事業に本格参入した楽天モバイル。ゼロから基地局を整備し、2022年10月には4Gの人口カバー率98%を達成した。

 短期間での基地局整備を可能にした要素として、アミン氏が挙げたのは「Mobile as a Software」という概念だ。楽天モバイルでは、完全仮想化ネットワークの運用や自動化などの取り組みを進める。これにより、CAPEX(資本的支出)を40%、OPEX(事業経費)を30%削減することにも成功した。

カバーエリアの拡大や、つながりやすさの向上に向けて

 通信のカバーエリア拡大に向けては、2023年12月までに、4Gの基地局数を6万以上、人口カバー率を99%以上という目標を掲げる。また、アミン氏は、プラチナバンドと呼ばれる周波数帯について、「2024年3月からの使用開始を目指す」とコメントした。

プラチナバンドについて

 屋内や地下鉄でのつながりやすさ向上に取り組むほか、ASTスペースモバイルとの協働により、衛星通信も活用していく。

回線契約数やARPUはどうなっている?

 回線契約数について、自社で基地局を整備するMNO事業は、2022年9月末時点で455万回線になった。前四半期の477万回線から22万件減少したが、ARPU(ユーザー平均単価)は増加している。ヘビーユーザー層の拡大などが、その一因になっているという。

 今回は、ARPU(ユーザー平均単価)の数値も初めて示された。料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」発表前の2022年度第1四半期の837円と比較し、第3四半期では1472円となり、75.9%増加した。

 なお、「楽天モバイル」の契約者に関して、「楽天市場」でのひとり当たりの平均年間購買額は非契約者よりも3万5831円高く、楽天グループが狙う“シナジー”が生まれていると言えそうだ。

 また、楽天モバイルの法人向けのサービスが、2023年初旬に提供される予定となっている。

ローミング費用は減少へ、「No.1携帯キャリア」を目指す

 今回の説明では、楽天モバイルの運営コスト面についても言及された。

 自社エリアをゼロから構築する楽天モバイルは、全国で利用できるよう、KDDIと提携し、ローミングによって楽天ユーザーが利用できるようにしている。自社エリアの拡大に伴いローミング費用が減少するほか、新たな基地局を開設する費用も減る見込み。

 楽天モバイルは「楽天市場」をはじめとした“楽天経済圏”とのシナジー効果や、始業から1周年を迎えた楽天シンフォニーの事業も含め、「No.1携帯キャリア」を目指していく。

質疑応答

――楽天モバイルで無料のユーザーがいなくなり、課金ユーザーが100%になった。これによる変化について知りたい。

三木谷氏
 10月まではポイントバックキャンペーンがありましたが、11月1日からユーザーの皆さんに利用料を払っていただくようになりました。11月になってからまだ10日ほどしか経っていませんが、今のところeコマースも非常に好調で、シナジーについて落ちているということは確認されていません。

――楽天モバイルが人員削減に踏み切るという報道があったが。

三木谷氏
 3年ぐらい、未曾有のスピードで基地局の建設というものを行ってきました。楽天グループ内で大幅なリソースを楽天モバイルの基地局建設に割いてきて、それが功を奏したということです。

 これからはそのスピードを調整しようということで、ほかの部署にまた戻っていただくということなどが中心になります。

 プラットフォームの技術についても、自動化などにより、人からシステムへシフトしていきます。レイオフ(人員削減)などではなく、他部署に人員を割り振る、というふうに考えていただければと思います。

――楽天モバイルの契約回線数について、今後の目標値はあるのか。ARPUの目標も教えてほしい。

矢澤氏
 具体的な目標は公表していませんが、11月になってから非常にいい感じで来ていますので、早急にどんどん増やしていきたいと思います。

 ARPUについては、月ごとに堅調な伸びを示しています。5G通信の浸透と、(楽天の)エコシステムが非常に大きい(要因)かなと思います。

楽天モバイル 代表取締役社長の矢澤俊介氏

――KDDIとの提携による、ローミング費用の減少の見立てを知りたい。

アミン氏
 2023年に6万基地局を達成できれば、ローミングコストも最適化されていく予定です。

矢澤氏
 KDDIさんとの契約もありますので、詳細については申し上げられないところもありますが、我々のローミングの場所は、郊外に集中しています。来年以降の基地局建設により、ローミング費用もかなり減っていく予定です。

――プラチナバンドの再割当てについて総務省の報告書案が出たが、新しい認定開設人が既存の免許人と合意すれば前倒しもできる。費用を負担しても前倒しをするつもりはあるのか。

矢澤氏
 終了促進措置に関する質問だと思いますが、我々は終了促進措置を使う予定はない、ということは変わっていません。

 以前、10年の移行期間を我々は提案しましたが、今回(の報告書案)は5年ということで、移行も早くなると思いますので、終了促進措置を使う予定はありません。