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楽天グループ22年第2四半期決算、楽天モバイル0円廃止について三木谷氏「解約の8割は0円ユーザー」

代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏

 楽天グループは、2022年12月期第2四半期決算を発表した。売上収益は前年同期比+12.6%の8935億9800万円、営業利益は前年同期から約961億円減の-1970億7500万円となった。

 国内ECでは、コロナ前の2019年と比較しても予約流通総額は伸長しており、楽天トラベルも含め業界全体を上回る水準で順調に推移した。国内EC流通総額は、前年同期比+12.3%の約1.3兆円となった。

 また、楽天市場とほかのサービスとのクロスユースが拡大しているほか、楽天西友ネットスーパーや物流、「送料込みライン」の施策が順調に功を奏しているという。

 フィンテック事業についても、売上収益は前年同期比+6.3%の1627億2600万円となり、楽天カードの取扱高や楽天銀行の中長期目標の順調な進捗、楽天証券や保険事業なども順調に推移している。

楽天モバイルは「大きな障害を回避するよう設計されている」

 楽天モバイルのネットワークカバレッジは順次拡大を図っており、2023年中には4G屋外基地局を6万局超えに、人口カバー率を99%超を目指すという。

 楽天モバイルについて代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏は「他社さんで大規模障害、昨年にも障害が発生している。楽天モバイルは、安定的に大きな障害を回避するよう設計されている」とし、独自のアーキテクチャーで障害発生時にサービス影響を最小限に抑えて自動復旧を実現するとした。

 楽天モバイルのネットワークには冗長性があり、ネットワーク内をリアルタイムで可視化できているという。「さまざまなソフトウェアがダウンしてもレプリカが簡単に作れる」、「人的な介入を少なくしている」ことで安定性を向上させていると三木谷氏は説明する。

 タレック・アミン氏は、ネットワークの安定性について「共通のハードウェア上で動いている」(冗長性)、「ほぼリアルタイムのレイテンシーを提供する」(オブザーバビリティ)「ソフトウェアのバーチャル化で複雑なアーキテクチャーを作り既存のネットワークよりも信頼性を高める」(仮想化)「ヒューマンエラーをなくす自動化」の4点にフォーカスをあてているとコメント。楽天モバイルの品質は、これらの要素が裏打ちされているとした。

品質向上と地域マーケティングで申込数増を目指す

 これまで、データ利用量1GB以下のユーザーには月額料金無料で利用できたが、2022年8月末で月額料金無料が終了、10月末には還元も終了する。

 楽天モバイルの意義について三木谷氏は「世界の中でも高止まりしていた日本の携帯電話料金を劇的に下がってきた。楽天モバイルとしては携帯市場の民主化を目指している」と説明。

 三木谷氏は、「無料終了により、ARPUは上昇が見込まれる。今後、一人あたりの売り上げを増やしていくため、オプションやコンテンツの拡充を進める」とコメントした。

 0円プランについては「使ってもらわないと意味が無い、楽天シンフォニーの技術開発など、かなり大胆な価格設定だった」と振り返る。0円終了後は「ロイヤルエコシステムユーザー」「経済合理的」「ヘビーユーザー」の3本をターゲットユーザーに定め、1人あたりの単価上昇を目指す。楽天市場など楽天グループのクロスユースユーザーや使った分だけ料金がかかる合理的な料金を求めるユーザー、20GB以上データ通信を行うユーザーに向けて取り組みを進めていく方針を示した。

 日本で「No.1の携帯キャリア」を目指すべく、「価格優位性」「品質向上」「マーケティング戦略」の3本柱で取り組みを進めていく。

 データ利用量について三木谷氏は、楽天モバイルユーザーは、他社の1.4倍データ通信を利用していることを明らかにした。また、「5Gが普及するにつれてデータ利用量が全体的に上がっていく。データ利用量が増えることによりARPUが増える」とし、コスト削減なども進め増益に向けて舵を進めるという。

 品質については、外部機関(アムラウト)による評価で「世界最高のネットワークに匹敵する非常に優れたパフォーマンス」であるとともに、「Rakuten Casaによる屋内カバレッジの拡大」や「ビル外からの電波発射による高層階の電波改善」「地下鉄でのカバレッジ拡大やキャパシティ増加対応」により、つながりやすさ改善を図っていると説明。設備投資額について、2021年は3150億円かけていたが、2022年の計画値で3000億円とし、昨年がヤマで徐々に減少を見込んでいるとしている。

 三木谷氏は「東京23区では人口の9.4%が申し込みいただいている一方で、人口カバー率が低い地域では5%を切るようになってしまっている」とコメント。今後全都道府県で99%以上の人口カバー率を達成すると、申し込み率も増え、申込数1200万人に近づいてくる」とし、カバレッジ拡大が重要であることを改めて説明。6万局を達成した場合、全国で申し込み率を対人口比で10%を超えたいとした。

 マーケティングについては、「エリアマーケティング」を強化していくという。テスト的に実施した静岡、富山・石川ではともに申し込み数が20%以上上昇しており、今後地域に特化したマーケティングを展開していく。

 一方、楽天エコシステムユーザーにおける楽天モバイルの浸透率は、約2年で11.9%に上昇。これを30%まで上昇させることは「非現実的ではない」(三木谷氏)とし、さらなる浸透率上昇を目指す。また、楽天モバイル契約によりそのユーザーがロイヤル化することもあり、楽天モバイルは楽天エコシステム拡大に貢献していることを改めて示した。

0円終了の影響「解約ユーザーの8割は0円ユーザー」

 0円プラン終了後について三木谷氏は「ご心配をいただいているかもしれない」としながらも、「1GB以上利用するユーザー数は純増している」ことを明らかにした。新料金発表後解約は増えているが、現時点で「新料金発表後のMNO回線解約ユーザーのうち8割はデータ利用量1GB未満のユーザーだった」という。実際に月額料金を支払っているユーザーは増加しているといい、徐々にユーザーが入れ替わっているとした。

 メイン回線としての利用比率も新料金発表後は上昇しており、20GB以上利用するユーザーも5.7ポイント増加し「真剣に楽天モバイルを利用するユーザーが増えてきている」(三木谷氏)と説明。データ利用量が多い傾向にある若いユーザーも徐々に増えてきており、楽天エコシステムへの取り込みにおいても重要であると説明した。

 楽天モバイルの特徴として三木谷氏は「eSIMなら最短5分で開通できる」点や、キャリアメール「楽メール」の提供開始などを紹介。また、法人向けサービスも今後展開していくという。

 三木谷氏は、来春から実現されるとしている「ワンストップMNP」(乗り換え先での手続きだけで完結する)が「我々にとって追い風になる」と説明。解約数が減少傾向にあることについても「品質改善などを行っていく」とコメントした。

 収支については「0円プランの廃止」や「オプションの拡充」、「ネットワーク品質向上による解約率の低下」「ローミング費用の削減」などで収益改善を図っていくとした。

楽天シンフォニー

 楽天シンフォニーについて、「約115のお客様からいわゆる申し込みがあり、既存顧客数は13となっている」という。

 「1&1」ではすでに商用化ベースに向けてテストが続けられており、速度は最大1Gbps、レイテンシーが3msとなり「信じられないようなスピードをソフトウェアで実現している」(三木谷氏)としている。

 「圧倒的なコスト効率と圧倒的なパフォーマンス、AIを中心とした安定運用を実現できている」とアピールし、今後も展開を進めるとした。

主な質疑

 回答者は、代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏と副社長執行役員の武田 和徳氏。

――0円プラン廃止で契約者数が減っているが受け止めは?

代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏

三木谷氏
 いわゆる0円ユーザーが多かった。それを除くと30%くらい伸びているという風に考えておりまして、最初はゼロから始めたネットワークなので、やはり大盤振る舞いしなくちゃいけなかったと思いますが、これからは適正な売上を上げていくために大きな舵を切りました。

 その割に0円ユーザーを差し引けばプラス30%という形になってきているので、優良ユーザーに変えていきつつ成長するという意味ではこれでよかったのではと思っています。

 今後は地域のネットワークの更なる改善と、地域マーケティングの強化をしていくことで、早期に(申込数)1200万人を実現していきたいと思っています。

――4月から22~23万件数を減らしたようだが、予想よりもどうだったか?

三木谷氏
 当然0円だった方や、正直に全く使ってなかった方もいらっしゃったので、ある意味一定の離脱は致し方ないという風に思っています。

――楽天モバイルをやめたユーザーに何かメッセージがあれば。

三木谷氏
 楽天モバイルは進化しています。5G時代に最先端の技術でやっている、楽天ポイントの獲得率も大幅に上げました。総合的に見て、また時期を見て楽天モバイルを検討していただければという風に思います。

――0円ユーザー以外も全体の2割が抜けているが、それに対する考えは?

三木谷氏
 やめている理由について、まだローミング地域の方の5GB制限が一つ大きな理由だと思っていますので、独自ネットワークの開設を急ぐのが一番大きなポイントかと。

 当然KDDIやソフトバンク、ドコモなど一定の数の方が移っていると思いますが、有料ユーザーについては、従前から割合は変わっていないが、これをさらに減らしていくこと。(人口カバー率を)97%を99%に持って行くことがやはり必要なことだと思っています。

――1200万申し込みを目指すとしていたが、目標時期など詳細はあるか?

三木谷氏
 ネットワークの拡充と共に進んでいくと思っています。

 地域別のマーケティングなども行っているので、しかるべきタイミングで獲得目標を発表させていただきたい。

 現在3000万人に迫ろうとしている楽天カードの初速と比べても、依然として圧倒的に早いと考えておりますので、早い段階で1200万人、1500万人という数字については達成したい。

――0円廃止でどれだけ収益改善が見込めるのか?

三木谷氏
 前期比で約110億円の収益改善が実施されています。11月から本当にキャッシュバックもなくなり本当に980円~の値段になる。ある一定の離脱はあるかもしれませんが、ここでかなり収益改善が行われるとみています。

 それと、高額になってきているローミング費用について、データ使用量の7%くらいがローミングになっていますが、もともと78%がローミングだったがそこまで減ってきた。また、ローミング時の5GB制限について、ローミングエリアを少なくすることで、無くしていく方向にすることで、離脱を下げていきたい。

 また、9月にASTの衛星が打ち上がります。これにより、空から宇宙から国全部、地理的に楽天モバイルが100%カバー率となることが実現できるため、ここが大きな差別化ポイントになるだろう。これで離脱率を下げていきたい。

 本当の勝負は「無制限で使えるモバイルネットワークってどこになる?」となるため、これを全国で売り込んでいこうと思っています。

――モバイルユーザーとのクロスユースについて、ほかの事業にどれだけ貢献しているのか?

三木谷氏
 かなりの規模だと思っている。

 大体将来的にはARPU(ユーザー1人あたりの平均売上)で1000円を超えるようなものに持って行けると思っています。

 収益的にどう配分するかは迷っているところですが、利益貢献度については極めて大きいものがある。

 特に新規ユーザーの20%がモバイル経由のユーザーであり、モバイルに入った人は、楽天のロイヤル化(楽天の各種サービスを優先的に使うユーザー)がどんどん進んでいます。これを考えると、1200万人と言わず1500万人の方がもう楽天エコシステムのなかにいると思いますし、獲得ポイント(を料金に充当すること)でモバイルが(実質的に)無料で使えるということが実現していると思います。

代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏

――ECが非常に堅調だったとのことだが、ショッピングECではどのような感じだったか?

副社長執行役員の武田 和徳氏

武田氏
 トラベルが2019年レベルまで復活してきました。

 コロナ期間中にオフラインになったものがオンラインに向かってきており、数がコロナによる制限が明けるにつれ増えてきたのと、県民割が非常に貢献し第2四半期はプラスとなった。

 また、人々が外出することでEコマースの鈍化が警戒されたが、コロナ状況下で作り上げた顧客基盤で普通に当たり前に使うように変化してきた。このため、購入単価においてもプラスに動き、トラベル同様楽天市場含めた関連事業でもプラスとなっている。

 このほか、ゴルフやビューティーについても好調で、Eコマース全体でいい結果となった。

三木谷氏
 送料無料ラインの導入促進がやはり大きいと思います。

 その中で多種多様なもの、99%があす楽で販売できているのが大きいと思います。

 ジャンルで言うとネットスーパー含めた食品や、ファッションも以前は苦戦していたが「Rakuten Fashion」にZOZOさんに入らないようなハイブランドのものが入ってきていいます。

 家電がサプライチェーンの影響で苦戦していたが、猛暑の影響で猛暑対策グッズが好調。スポーツも生活スタイルの変化でいいと、コスメについてもハイブランドが入ってきており、人々が外に出てきているのでよい傾向にあります。

 書籍についても、卸の会社「楽天ブックネットワーク」が好調で、全体的に調子がいいのかなと思います。

――物流の効率化について、当日配送の実現の見込みは?

武田氏
 ステップを踏んでいって進めている。

 日本郵便と取り組みを進めており、配達拠点数としては全国の郵便局でカバーできている。倉庫を関東のみならず大阪や九州含めた各地に建築することで、在庫をよりユーザーの近くに持ってくることで、デーリバリーの効率化とスピードアップを図っている。また、倉庫と配達局をつなぐ直配送化、またラストワンマイルでの置き配などの実現で、安心安全な物流サービスを進めている。

 当日配送については、2~3年の間にそれぞれのステップをクリアしながら、実現していきたい。

――楽天銀行や楽天証券の上場でいわゆる「親子上場」となる。投資家に好まれない傾向にあるが、その狙いは?

三木谷氏
 楽天グループほど多様化し大きな収益を上げている「インターネット財閥」はないと思っています。アナリスト、投資家にとってわかりやすく見やすくするというのが一つあります。

 また、楽天銀行に関しては「資本を厚くする」ことで、さらに拡大することができる。ハイリスクではなく「ちょびっとリスクのちょびっとリターン」ですね。どういうふうに構造的に使っていくか、楽天グループと楽天銀行のシナジーによりデータを活用することで圧倒的に他社と差別化できる。

 一方で、銀行であるためガバナンス的にも楽天グループともともと独立しているということを考え、上場することになります。