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KDDIの23年3月期1Q決算は「増収減益」、金融など注力領域がけん引

 KDDIは29日、2023年3月期の第1四半期(1Q)決算を発表した。決算説明会には、同社代表取締役社長の髙橋誠氏や、代表取締役執行役員副社長の村本伸一氏らが登壇した。

 本稿では、決算や質疑応答の内容をお届けする。

髙橋氏

前年比+4.0%の増収、-0.8%の減益

 2023年3月期の第1四半期、KDDIの連結業績は増収減益となった。

 連結売上高は1兆3517億円で、前年比(YOY)+4.0%の増収を記録。一方、営業利益は2969億円と、前年比-0.8%の減益となった。

 KDDIが「注力領域」と位置づける領域の業績について、「ビジネスセグメント」では、売上高が2586億円(前年比+5.5%)、営業利益が458億円(同+2.6%)を記録。

 また、金融事業に関して髙橋氏は、「会計処理変更の一時的な影響もあり、売上高は646億円、営業利益は217億円になった」と説明した。

連結営業利益の増減要因は

 髙橋氏は続いて、連結営業利益の増減要因について説明し、「マルチブランド通信ARPU収入が292億円減少し、グループMVNO収入とローミング収入は微減(14億円)となった」とコメントした。

 ビジネスセグメントや金融事業、エネルギー事業などの注力領域については、+152億円の増益を記録した。

 そのほか、3Gの停波関連の影響や、減価償却費の減少などもあり、トータルでは「-23億円の減益となった」(髙橋氏)。

モバイル事業について

 モバイル事業に関して、マルチブランドID数は3093万で、前期比(QOQ)で減少する結果になった。ただ、2022年3月末の3G停波に伴う約25万の解約を除けば、順調に拡大しているという。

 髙橋氏は、「UQ mobileとpovoが好調で、2つのブランドの合計で約700万まで拡大した」とコメント。また、前年比-310円の3970円となったマルチブランド通信ARPUについて、同氏は「想定の範囲内」とした。

注力領域の成長

 注力領域のビジネスセグメントについて、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を中心とする「NEXTコア事業」は、売上高が870億円まで拡大。前年比+16%の成長を記録した。

 ビジネスセグメントの営業利益は、「NEXTコア事業」や既存の通信事業ともに増益し、順調な伸びを見せる。増減の要因としては、海外子会社の為替影響を含むNEXTコア事業の増益や、3G停波による解約の影響が挙げられた。

 金融事業では、住宅ローン手数料の会計処理の変更として、過年度繰延分を一括計上。大幅増益となった。

 エネルギー事業は、前年比で減益を記録。安定的な相対電源の調達比率を引き上げ、コストコントロールを実施しているという。髙橋氏は、「足元で燃料価格高騰の影響を受けているが、業績への影響は限定的」とコメントした。

 注力領域の主要指標について、決済・金融の取扱高は、前年比+33.0%となる3.3兆円を記録。auじぶん銀行のローン商品残高は1.8兆円となり、前年比+0.2兆円の成長となった。

 「au PAYカード」の会員数は、前年比で+120万となる790万。「auでんき」などの契約数は353万契約で、前年比で+57万となった。

 髙橋氏は7月上旬に発生した通信障害にも触れ、「今般発生させてしまった通信障害を踏まえまして、お客さまの信頼回復と5G時代を見すえた通信品質向上に向けた体制を強化し、持続的成長に向けた取り組みを推進してまいります」とコメントした。

質疑応答

――金融関係の数字を見ると、好調という印象がある。競合他社の動きもあるが、このあたりの領域に関する考えを教えてほしい。

髙橋氏
 金融事業というのも結構幅広いと思っていますが、我々、金融事業は(au)フィナンシャルホールディングスを立ち上げて、そこで金融系の事業をすべて束ねてやっています。

 この領域に関してはかなり積極的に進めていまして、auじぶん銀行の住宅ローン事業や、クレジットカード事業など、非常に順調に伸びています。我々の成長の源泉だと思っています。

 一方、「au PAY」のような少額決済のところは、採算から言うと黒字化にするのはまだ大変な事業なんだろうなと感じます。組織的には、「au PAY」や「auスマートパス」のような部局をコンシューマーの部局のなかに入れて、通信との融合を目指す分野としています。

 ですから、フィナンシャルホールディングス擁する金融事業を次の柱として伸ばしていきつつ、「au PAY」や「auスマートパス」のようなものは通信と融合させることで、相乗効果で伸ばしていくという戦略です。

――楽天モバイルの新プラン発表後、povoへのMNPが急増したという話もあった。直近の通信障害による影響も含め、このあたりの状況を教えてほしい。

髙橋氏
 楽天さんの発表があったあと、非常に多くのお客さまに来ていただいたというのは事実です。

 この動きがずっと続いていたんですが、今回の障害によって、うちから出ていく数よりも入ってくる数のほうがまだ多いものの、一時期よりは勢いが少し落ちている状況にあります。

 あと、povoは基本料金が0円となっていて、(利用がないまま)6カ月経つとお客さまに通知して、解約するというかたちになっています。その数を6月からちゃんと入れていますので、その分ちょっと弱くなっている部分もあります。

 結論として、まだ非常に順調に入ってきていますが、障害の影響で新規契約の流れが弱くなっている状況です。

――連結営業利益の増減要因のところで、グループMVNO収入とローミング収入が減少している。この要因として大きいのは、楽天モバイルが自社エリアを拡大しているから、という理解で間違いないか。

髙橋氏
 そのような理解で結構だと思います。

 楽天(モバイルの)ローミングの場合、人口カバー率が70%を超えてくると終了ということになりますが、そのなかでも「どうしても残してくれ」っていうエリアが多くて、完全に終了した県は非常に少ない状況です。

 ただ、連結営業利益においてグループMVNO収入とローミング収入が微減となったことに関しては、そういったこと(楽天モバイルの自社エリア拡大)が大きな要因となっています。

――通信障害に関する返金について、会計処理はどのようなかたちになるのか。

村本氏
 会計処理については、現時点でまだ確定はしていません。いろいろな面で検討しています。

髙橋氏
 障害が起きたのは7月ですので、今回の決算の数字には入っていませんし、そのあたりは第2四半期の決算で触れることになると思います。

村本氏

――「auポイントプログラム」から「au Ponta ポイントプログラム」への変更について、背景にはどのような意図があるのか。回線を長期間利用しているユーザーに対する考えもあわせて教えてほしい。

髙橋氏
 これまでのポイントプログラムが少し分かりづらかったという部分があります。そこを変えることによって、お客さまのエンゲージメントを高め、我々の経済圏の拡大につながっていけばと思い、今回変更しました。

 長年お使いいただいているお客さまは、当然我々としては大事にしていかなければいけないと思っています。ポイントプログラムに限らず、そのようなお客さまに提供できるようなことは、引き続き考えていきたいと考えています。