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新中期経営計画策定の背景や5Gへの今後の投資――KDDI決算会見での質疑応答

 KDDIは13日、2022年3月期決算を発表した。本稿では決算会見における質疑応答の様子を紹介する。

KDDI 髙橋氏
KDDI 村本氏

新中期経営計画策定の背景や楽天モバイルへの受け止め

――今回の中期経営計画の策定の背景や狙いは?

髙橋氏
 前・中期経営計画で目標としていたのは「通信とライフデザインの融合」。ライフデザイン領域で1.5兆円、ビジネル領域で1兆円、株主還元、EPS1.5倍と定めた。ライフデザインは若干届かなかったが、おおむね順調だった。

 株主還元も連続増配、増収増益だったが、3年間の年平均成長率は1.5%程度しか伸びていない。値下げの影響が大きく残念なところだった。環境の変化なのでしょうがないと思い、次の3年間どうしようと悩んだのが今回。

 ライフデザイン領域は結構明瞭になってきた。5Gをど真ん中においた計画にしなくては行けないと思った。社内では「両利きの経営」として既存の領域と新規と(バランスをとって)やってきたが、新規のほうが飛び地に見えると困る。センターに5Gをおいて、値下げの影響もあるが、もういちど5Gで右肩上がりにしなくてはいけない。

 その周りの通信が溶け込む領域を選定して広げていきたい。いままでのライフデザイン領域よりもDXをまずセンターにおき、金融・エネルギーを上げていく。新しいワクワクしたものにもとりくみたくて、言葉を変えて「ライフトランスフォーメーション」と。そして社会の還元として地域共創とした。

 EPS成長についても引き続き1.5倍成長を目指していきたい。

――楽天モバイルが0円プランを廃止したが、その受け止めは

髙橋氏
 他社の料金のことなのでコメントはしづらいが「やめるんだ」という感じ。povo2.0も0円だが、楽天モバイルの0円とは意味合いが違うと思う。よく(楽天モバイルの)発表を見ながら、捉え方を整理しておきたい。

――通信ARPUは23年3月期が底打ちなのか? 値下げの影響は今期、どの程度高まると見ているか、楽天モバイルはローミングを終了していくが利益の構造はどうなるのか

髙橋氏
 マルチブランド通信ARPUは、今年度底打ちとしたいというのが目指すところ。新規領域も伸ばすが、サテライトグロース戦略の中心の5Gをもう1度持ち上げないと話にならないと思うので、今年度を底打ちとしたい。

 前年度の通信ARPUは、872億円ほど値下げの影響があった。グループMVNOやローミング収入は、前年度比で757億円のプラスで相殺できていたと思う。今期は、値下げの影響が700億~800億円の間と想定している。

 楽天のローミング収入は、すぐにもなくなってしまうという報道もあったが、そうではない。500億円程度は減ると考えている。3G停波コストが前年度で800億円ほどあったので、その分が今期は軽くなる。それに注力領域500億円とそのほかを足し合わせて、1兆1000億円(の営業利益予想)としている。

――成長戦略について、グローバル要素が少ないが、ミャンマーなど含めて今後どうなるか?

髙橋氏
 確かに今回は載せていない。理由は2つあってビジネス領域におけるグローバル。IoTの延長線上で、データセンターやIoTソリューションなどを伸ばしていくという計画。ミャンマー、モンゴルなどコンシューマー系は順調に推移しているが、「ポストミャンマー」というものがでてこない。このあたりは今回は記載していないが、引き続き展開できるように考えており、明確になり次第開示していきたい。

――ARPUについて、他社はもう上がらないと考えているようだが、なぜKDDIはこれからあげられるという自信があるのか?

髙橋氏
 4Gから5Gに移行するユーザーが多い。そのタイミングでauの上位プランを選んでいただける可能性が十分残っていると思う。他社と違い、OTTプレイヤーとの連携を非常に強くやっており、他社にない強みだと思う。

 海外ではベライゾンも同様の戦略をとっており、米国でも5GでARPUが上がっている事業者が見受けられる。それをモデルとすれば、まだまだ伸ばしていけるんじゃないか、伸ばしていかないといけないんじゃないか。

 デジタル田園都市国家構想もあり、5Gのネットワークを広げていくのが我々の責務。そしてARPUも上げていきながら、投資を積み重ねていくのがあるべき姿。自信があるというか、やらなくてはいけない。

5Gへの投資は

――成長投資について、5Gはどのくらいの規模感か?

髙橋氏
 成長投資の1兆3000億のうち、5Gは7000億円。それ以外の投資は、J:COMや固定なども合算して1兆3000億となる。

 事業投資は、注力領域(サテライトグロース戦略)に7000億円ほど使っていきたいと思っている。

――値下げの影響が800億とあったが、1年前は値下げ影響予想は600億~700億だったが、なぜ膨らんだのか? ブランド間移行や他社への移行などの影響があるのか

髙橋氏
 最初は600億程度かなと最初は予定していた。実際には、ユーザーの移動があり結果的に872億円となった。ブランド間移行としては、値下げ前のシェアではauが全体の90%、UQとpovoが10%だったが、終わった期の最後でその10%が20%となった。

村本氏
 ID数が出だしのところで凹んだというところがあり、前年度は第1四半期~第2四半期で苦戦した。通年で行くと後半でリカバリーして純増となったが、その影響があり上半期で計画以上に下ぶれたというところがある。

――昨春ごろからオンライン専用ブランドなど競争激化があった。この1年を振り返るとどうだったか

髙橋氏
 本当にいろいろな環境変化があり、大変だった。年の当初は結構モメンタムが落ちた。大変だな、と思っていたがUQ mobileを中心に2021年6月頃から持ち上げて、夏に純増に転換して、最終的に非常にモメンタムが上がり、第4四半期は予定よりも上ぶれており、1年間を通してだいぶモメンタムを取り戻せたのは良かった。

 値下げの影響があったが、楽天モバイルのローミングもあり、うまく打ち返せたと思う。3Gの巻き取りが、はやくきれいに終わったことが一番大きい。大きなトラブルもなく、前年度までに撤去費用など800億程度、コストを(前年度に)入れられた。これからは「他社の3Gユーザーが、我々に来てほしい」というフェイズに入れるので、そこのコストがもう終わったので、これが一番良かった。

 (今期は)次の中期経営計画の初年度。5Gを中心になんとかARPUを右肩上がりにしたい。ここに今年度は注力していきたい。

――auが80%、UQ mobileとpovoが20%とのことだが、ARPUを持ち上げていく過程でこの割合はどうなっていくか?

髙橋氏
 auの比率については、下がってくるのかなと思っている。今の段階では何%とは言いづらい。

5G人口カバー率は今期中にも

――以前の決算会見では、22年度の早い段階で90%を達成したいということだったが、現状の5Gの人口カバー率はどの程度か?

髙橋氏
 90%達成したと今日言いたかったが、工事が若干苦しんでいて、今期の早い段階で90%を超えたいとしか今日の段階では言えない。

 生活動線についてこだわってやっているので、私鉄を含む関東25路線、関西5路線でエリア化している。ここは非常に好評をもらっている。5Gのトラフィックが4G比で2.5倍程度使われているということなので、いち早くエリアを広げていこうと思う。

――ハイエンド端末の販売商戦が激化している。業績への影響はあるのか?

髙橋氏
 具体的な数字については難しい。基本的に端末販売の数が増えるとプラスにはなる。販売コストがオープン価格に対しても含めたインセンティブがあり、当年度にかかるコストと来年度以降にかかるコストにわかれる。単純にいくらとは言えない。そういうものがあいまっている。昨年度販売コストは前年度に比べると上ぶれたと思う。

 ひとつ感じるのは、ユーザーが端末の価格にはセンシティブ。端末がある程度手頃な価格で長く利用できるというのが3G~4Gであったモデル。これがうまく回転すると、すごく早いスピードでエリア拡大できたということはあったと思う。

 5Gについても安い端末で長く使えると、5Gの展開スピードを早めるには悪くない形ではないかと思う。このあたりは制度をしっかり守りながら、どこまで安価に提供できるかというのが大きな経営のやり方かなと思っている。

――KDDI Digital Divergence HoldingsなどDX開発について、新しい体制でどのようなビジネスを目指しているのか?

髙橋氏
 サテライトグロース戦略と定義して、DX、金融、エネルギーがど真ん中にある。基本的にはひとつのホールディングスの傘下においている。金融であれば、auフィナンシャルホールディングスで、今度はエネルギーも切り出しをしてホールディングスにしてと、成長領域はそういうかたちにしてきた。

 DXについても、本体でやっていくが開発体制の強化として、開発能力を高める。足りない領域があればM&Aも含めてこのホールディングスでやる。一義的には、開発能力の強化と思ってもらえれば。いずれにしてもDXなのでコンサル能力、開発能力を兼ね備えてそこでも成長を支えるような組織としたい。