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Arm、IoTデバイス向けCPU「Cortex-M85」など新製品を発表

 Armは、IoTデバイスなどに向けた最新のマイコン用CPU「Cortex-M85」を含めた新製品を発表した。

Cortex-M85

 Cortex-M85は、Armの最新プロセッサー。組み込みハードなどに広く用いられているCortex-Mシリーズの最新型で、スカラ性能は前モデルの「Cortex-M7」と比較して30%増加したという。

 従来のCortex-Mシリーズでは性能の限界から複雑な処理には限界があった。そのため、機能の実装を断念したり、大幅な仕様変更をしたりと開発期間に大きな影響を与えるケースがあるという。

 また、「Arm Helium」テクノロジーによりエンドポイントでの機械学習とDSP命令を強化したほか、「Arm TrustZone」で新たに、Cortex-A向けに提供されてきた「PACBTI」という命令を追加。これにより、IoTにおけるセキュリティ基準「PSA Cetified Level 2」の達成をサポートし、さらにセキュリティが向上した。

Cortex-A向けIoTソリューション

 「Arm Total Solutions for Cloud Native Edge Devices」も新たに発表。従来、組み込みソリューション向けに「Arm Total Solutions for IoT」としてハードウェア IPや機械学習モデル、各種ツールなどを組み合わせた開発ツールとして提供されてきた。

 今回は、新たにCortex-A向けの機能として設計されており、Cortex-A32/A35/53とCortex-M85を搭載する「Corstone-1000」を採用。LinyxなどのOSも利用可能で、ウェアラブル端末やスマートカメラなどのデバイスの迅速な開発に寄与する。

 Corstone-1000は「Arm SystemReady-IR」にも対応。課題になることが多いというLinuxへの移植がスムーズに行えるとしている。

 Arm 応用技術部 ディレクターの中島理志氏は、「Total Solution for Voice Recognition」にも採用されている、Corstone-M55とEthos-U55を搭載の「Corstone-310」と合わせて、超小型デバイスから小型Linuxボードなど、小型デバイス市場で求められるポートフォリオをほとんどカバーしたとアピールする。

Arm Virtual Hardware

 チップの出荷前にソフトウェア開発に着手できるソリューション「Arm Virtual Hardware」では新たに、Cortex-M0~M33までの7種のプロセッサーと最新のCorstoneに対応する。

 今回のアップデートは、2021年のArm Virtual Hardwreの発表以来受け取った、さまざまなフィードバックを反映させたもの。中島氏によれば、最新型のみでなく既存のプロセッサー、既存の開発ツール、ラズベリーパイなどさまざまなデバイスへのサポートへの対応を実施している。

 リリース当初に対応するのは、NXP製「i.MX8」、STマイクロエレクトロニクス製「ディスカバリーボード」とラズベリーパイ財団の「ラズベリーパイ 4」。ArmのWebサイトから開発時に利用できるデータを無料でダウンロードでき、対応する仮想ボードは今後も増やしていくという。

 このほか、セキュリティやエコシステム、標準化を構築する「Project Centauri」では、従来の「Open-CMSIS-Pack momentum」を拡張した「Open-CMSIS-CDI」として仕様策定を実施中。今後、半年~1年後に標準APIとしてリリースしていくという。

 加えて「Open-IoT SDK」では、Corstoneやデバイスボードのためのリファレンスプロジェクトファイルのテンプレートとして、今後の標準化を進めており、サードパーティやArm開発ツールを提供するベンダーも利用できるプラットフォームとして推奨していくという。

組み込み業界を支える

 Arm バイスプレジデントのブルーノ・プットマン氏も同社が、CorstoneやArm Vertial Hardwareなどの製品を提供して「高い性能、セキュリティ、開発期間短縮」や「選択肢の増加、シンプルな開発、セキュアな処理により大規模にスケーラビリティを高めていきたい」といったニーズがあることがわかったと語る。

 プットマン氏は、今回発表のソリューションやArm Total Solutions for IoTの内容拡充でそうした需要に応えるとした。

 中島氏は、プロセッサーや半導体プロセスの進化によりマイコンが高性能・多機能化。組み込みハードウェアの開発が複雑化しているとして、Armが組み込み向けのソリューションを提供する意義を語る。「Armは組み込み向けCPUから出発した。組み込み業界発展のためにも新しい価値を提供し続けたい」とコメントした。

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