ニュース

Armが新CPU/GPUを発表、モバイル体験をさらなる高みへ

 Arm(アーム)は、モバイルコンピューティングプラットフォームとして、スマートフォン向けに「Arm Total Compute ソリューション 2023(TCS23)」を発表した。GPU「Arm Immortalis-G720」や、Armv9ベースのCPUが含まれ、モバイル体験を向上させる。

モバイルに関する状況と「TCS22」

 Armの日本法人であるアーム 代表取締役社長の横山崇幸氏は、モバイルに関する昨今の状況について言及。「昨年、モバイルゲームは920億ドル以上、モバイルアプリは4300億ドル以上の売上を記録した」と語る。

横山氏

 加えて、1人あたり月々の平均が19GBとされるモバイルデータの使用量も増加傾向にあり、「モバイルデバイスへの関心とイノベーションは今後も加速していく」(横山氏)。コンピューティングへの要求は、かつてないほど大きく複雑になっているとする。

 Armは2022年、「Arm Total Compute ソリューション 2022(TCS22)」を発表。ビジュアル体験を“爆上げ”するフラッグシップGPUとして、「Immortalis-G715」などが発表されていた。

 同社のGPUとしては初めてレイトレーシング機能をサポートする「Immortalis」は、モバイルゲームのビジュアル向上に大きく寄与する。チップセットとしては、メディアテック(MediaTek)の「Dimensity 9200」が「Immortalis-G715」を採用している。

「TCS23」の発表

 今回発表された「TCS23」には、「Immortalis-G715」の後継として「Immortalis-G720」が含まれる。先代と同様、フラッグシップGPUとして位置づけられる。

 そのほか、「Mali-G720」「Mali-G620」もArmのGPUポートフォリオに加わる。

 また、CPUとして、AI機能を強化した「Cortex-X4」「Cortex-A720」「Cortex-A520」が発表された。

「Immortalis-G720」

 先述の「Immortalis-G720」が採用するのが、Armの第5世代GPUアーキテクチャだ。第5世代のGPUアーキテクチャは、消費電力効率が14%向上し、これまでで最も効率的とアピールされている。

 「Immortalis-G720」は先代と比べて性能と効率が15%アップ。システムレベルでの効率性も40%向上し、高品質なグラフィックスを実現する。

「Cortex-X4」「Cortex-A720」「Cortex-A520」

 「Cortex-X4」は、そのネーミングの通り、「X」シリーズの4代目となるCPU。Armでは、「X」シリーズの発表以来、3年連続で2桁パーセントの性能向上を達成してきた。

 “Arm史上最速のCPU”とうたわれる「Cortex-X4」は、先代の「Cortex-X3」との比較で、15%の性能向上と、40%の消費電力低減を実現した。

 あわせて発表された「Cortex-A720」「Cortex-A520」は、これまでの“big.LITTLE”路線を継承するもの。

 高性能なCPU(big)の「Cortex-A720」は、先代の「Cortex-A715」と比べて電力効率が20%向上した。また、省電力なCPU(LITTLE)の「Cortex-A520」は、先代の「Cortex-A515」との比較で電力効率が22%アップしている。

 新たに提供されるDSU(DynamIQ Shared Unit)の「DSU-120」は、最大で14のCPUをサポートする。

将来のコンピュータプラットフォームはすべて“On Arm”で

 先述の通りパフォーマンス向上が実現した「TCS23」。それを実際に半導体として製造するうえで、「ファウンドリパートナーが持つ最先端の製造プロセスとの親和性が非常に重要」と語るのは、アーム 応用技術部 ディレクターの中島理志氏。

中島氏

 Armでは特にTSMCと長いパートナーシップがあるとし、「TCS23」に関しても協業する。

 ArmがCPU「Cortex-A53」「Cortex-A57」を引っ提げて64bit(ビット)の世界に参入したのが、2012年のこと。以来、32bitから64bitへの移行が進み、2022年にはGoogle(グーグル)の「Pixel 7」シリーズが、64bitのアプリのみをサポートするスマートフォンとして出荷された。

 中島氏は、「たとえばDimensity 9200は64bitのみに対応している。さらに、中国のアプリストアではほぼ100%のアプリが64bitとなっている」と語る。同氏は続けて、「10年という非常に長い時間をかけて、モバイルプラットフォームは32bitから64bitへの進化を完了させた」とコメントした。

 「TCS23」はあくまでモバイル向けのプラットフォームではあるものの、デジタルアーキテクチャとしてはほかの分野にも転用可能という。説明の締めくくりとして、「モバイルにとどまらず将来のコンピュータプラットフォームはすべて“On Arm”で実現する」という事業方針が紹介された。