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armの新プロセッサー発表会を実施、性能向上と顧客要望に対応

 Arm(アーム)は、27日次世代モバイルデバイス向けプロセッサの発表会をオンラインで実施した。

 製品の技術的な情報に関しては、弊誌別記事を参照いただき、本記事では国内向けの発表会にて、Arm国内法人向けのキーパーソンによって語られた内容を紹介する。

発表会の様子。左がリージョナルマーケティング・ディレクターの菅波 憲一氏、右が代表取締役社長の内海 弦氏

Armのプロセッサーは世界各国で利用されている

代表取締役社長 内海 弦氏

 まずは、同社代表取締役社長の内海 弦氏より、同社のプロセッサーに関しての紹介があった。

 同社のテクノロジーは、世界人口の約70%の人々によって利用されている。プロセッサーの出荷数をみると、2019年は228億個のベースチップを出荷し、累計で1660億個を出荷している。armのプロセッサーは32bitであり、世界には8bitや16bitのプロセッサもあるが、すべてのプロセッサーを含めた中でも、2019年の市場シェアは34%の高いシェアを獲得しているという。

 また、小電力で動く同社のプロセッサーは、携帯端末が中心であったが、現在では自動車やテレビなどの身近なデバイスやクラウドデータセンターのようなシステムの根幹にかかわるプロセッサーまで担うようになってきており、同社のプロセッサーは、人々の生活に密着したものになっている。

市場動向や顧客要望に応じた新たなプロセッサー開発

リージョナルマーケティング・ディレクター
菅波 憲一氏

 続いて、同社リージョナルマーケティング・ディレクターの菅波 憲一氏より、プロセッサーのマーケティングビジネスの動向について解説があった。

 5Gネットワークが着々と整備されていく中、次世代のデバイスにおいては、より多くのデータをリアルタイムで送受信できるだけのパフォーマンスが必要になっている。

 また、ビジネスユースで使用する場合、電池持ちが重要になってきており、現在は最大で5時間の電池持ちのデバイスでも、1日~数日の電池持ちを期待されているとのこと。

 プロセッサーの使用用途も、より多種多様になってきている。パフォーマンスを追求するデバイスもあれば、パフォーマンスはそこそこにより軽量化、省電力という顧客もいる。

 今回発表した「Cortex-A78」は、マイクロアーキテクチャ―から見直しを行い、高性能と高効率を両立したという。

Arm Cortex-X Customプログラム

 今回新発表する「Arm Cortex-X Custom」プログラムは、顧客の要望に応じて、その顧客のためだけに設計製造するプログラムだ。

 既存製品にとらわれずにプロセッサーをフルに上げてほしいなどといった顧客要望を、同社がヒアリングし、それを実現可能か判断、顧客要望にミートするカスタマイズしたプロセッサーを提供する。

 プロセッサーに関する設計・開発を行うほか、動作保証や品質管理も同社が責任を持って行うことで、顧客の開発リソースを抑えることができるとしている。

プロセッサーの面積は増えるが、性能をより向上させるプロセッサーを開発することもできる

25%の性能向上を実現したGPU

 グラフィックを演出するGPUでは、Mali-G78が登場。N77と比較して25%の性能向上を実現している。サイズが大きくなっても実現したいメーカーを対象に設計し、24コアをフルで効率よく動かすことで性能を向上させたという。

パフィーマンスアドバイザー

 また、ゲーム開発者向けにGPUやCPUの負荷状況など、プロセッサーの使用状況をモニタリングして、プロセッサーに関するゲーム開発上のボトルネックを抽出して可視化するツールを発表。

 より最適化されたソフト製作やより短時間のソフト開発を行えるようになる。

ハイエンドとミドルの中間となるMali-G68

 ハイエンドモデルのG78の機能をそのままに、性能をミドルモデルにもっていったMali-G68を発表。

 ハイエンドモデルと同一のプロセッサーのミドルモデルを顧客から求められており、G78と同一のプロセッサーに対して1~6コアをG68、7~24のコアをG78とすることで、顧客要求に応えたという。

機械学習に最適化したEthos-N78

 最新のXR技術に対応するため、NPU(ニューラルプロセッシングユニット:人工知能用チップ)であるEthos-N78を新たに開発。機械学習性能を強化しつつ、パフォーマンス効率を最大25%向上させたという。

プロセッサーの日本国内での製造回帰について

 新型コロナウイルス感染症で、中国やASEANの半導体製造ラインに影響し、稼働率が著しく低下していた。

 これに関して、内海氏は日本国内に半導体製造が戻ってくるという社会のトレンドは認識しているとし、同社の製造ラインの国内回帰も可能性があるとコメントした。