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ソフトバンクG孫氏、アーム上場は「むしろこちらがオリジナルプラン」

 ソフトバンクグループ代表取締役 会長兼社長執行役員の孫 正義氏は8日、決算説明会のなかで、同日発表したエヌビディア(NVIDIA)によるアーム(Arm)買収断念について語った。

 孫氏は、コンピューターが進化を続けるなか、主にスマートフォンのCPUの設計図と言える部分を担っているアームの存在が、非常に強力であることを説明。

 ただ、2020年に始まるコロナ禍で、資金を得る必要に迫られ、アーム売却を選択。その上で、相手先にエヌビディアを選んだ。

孫氏
「泣く泣く手放すことを決めたが、単純に手放したくなかった。急成長しているエヌビディアと合併すれば、まさに鬼に金棒。そのエヌビディアの筆頭株主になるんだということで、発表したわけです

「欧米各国、GAFAが大反対」

 あらためてアームの将来性、そしてエヌビディアへ売却を決めた当時を振り返った孫氏。

 しかし、エヌビディアによるアーム買収は、「GAFAと呼ばれるような主要なIT業界の会社がこぞって猛反対した。さらに米国政府も英国政府も、EUの国々の政府も猛反対という状況」(孫氏)に陥った。

 孫氏は、同じ業界の競合の合併は、シェアが大きくなりすぎて問題だが、GPUを中心としたエヌビディアと、CPUの技術を開発するアームは「言ってみれば、エンジンとタイヤぐらい違う」とたとえて、「(異なる業界の企業の合併が阻まれることは)独禁法の法律が始まって以来。各国政府が阻止する方向で動き始めた。我々も驚いた」と説明。孫氏の「エンジンとタイヤ」というたとえが的を得ているかどうかはともかく、孫氏にも予見できなかった状況ということがうかがえる。

孫氏
「シリコンバレーの企業などアームを直接的、あるいは間接的に活用しており、(アームは)欠かすことのできない、最重要カンパニーということで、大変な反対運動が起きた。さきほど、アームの売却を中止するということを、エヌビディアと合意した」

 エヌビディア側も買収の意欲は強いものの、各国の意向が強く、止められないということで、断念に至った。

上場こそ「オリジナルプラン」

 エヌビディアへの売却を断念したものの、同時に、2023年度3月期中の上場を目指すことも発表された。

 2018年の決算会見で、当時の孫氏は「5年後、7年後にアームを上場させる」と語っていた。

 そのこと8日の決算説明会でもあらためて触れた孫氏は「アームは、買収で非上場になったが、そこからさまざまな投資をしてきた。(エヌビディアによる買収がなくなったことで)もともとのプランに戻ろうと。プランBというか、もともとオリジナルはこちら。我々としてはむしろプランAなのかもしれない」と計画変更にも動じない。

 そのアームは、ここ数年、開発者を多く雇用し、技術を蓄積してきたと孫氏。すでに、スマートフォンのほとんどでアームのCPU技術が使われている、とした孫氏は「これからスマホに使われていたアームが、自動車やクラウド、メタバース、IoTなど、さまざまな場面で利用される。そのように進化してきた」と説明。

孫氏

「電気自動車ではコストの4割が電池。電力を消費しないコンピューティング環境がもっとも重要。同じ電池容量で、走行距離をいかに伸ばすか。アームの技術でなければ、ほかの技術では話にならない」

 CPU設計には2~3年かかり、その技術を用いた製品が市場に登場するまで2年ほどかかる。買収後に費やしてきた開発力が、まもなく花開くとする孫氏は、演算能力の高さと低消費電力を実現するアームの技術の強みをあらためて紹介し、ここからアームの時代がやってくると予言する。

孫氏
「やっと植えた種がですね。これから花をつけて、実をなすという時期がついにやってきた。第二の成長期に入るということ。ワクワクしている。大変うれしい。半導体業界市場で、最大規模の上場を目指す」

 こう語った孫氏は、「これから第2の成長期。エヌビディアとのディールも成立してほしかったが、こちらも悪くない。アームの黄金期がやってくる。経営陣も刷新し、若返りを図る」として、スマホで証明されたアームの強みが、さまざまな業界で広がっていくとあらためてアピールしていた。

 上場する市場は、「米国、おそらくナスダック(NASDAQ)になる」(孫氏)という。