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「アーム上場目指す」孫氏、2月8日決算説明会の質疑一問一答で語られたこと

 8日、ソフトバンクグループの決算説明会が開催された。本記事では、代表取締役 会長兼社長執行役員の孫 正義氏による質疑応答の内容をお伝えする。

 質疑は、主にアームの株式売却断念と上場の方針、後継者問題、ソフトバンク・ビジョン・ファンドについてで占められたが、ここではアーム関連の話題を中心にまとめた。

アームについて

――2016年のアーム買収時の価格は3兆円強だったと思う。現在どう見ているのか。今後の上場で、エヌビディアへの売却よりも高い評価を得られると考えているのか。あるいは、再上場せずに保持する考えはないのか。

孫氏
 アーム買収時は32ビリオン(320億)ドル、約3兆円と少しだった。エヌビディアへの売却では、成果報酬を含め、40ビリオン(400億)ドル、約4兆円。1/3が現金、残りはエヌビディアの株式と交換する予定だった。「32が40」になり、その40のうち5ビリオン(50億)ドルの成果報酬が含まれている。

 アームは第2の成長期に入ったということで、売上・利益ともに満額回答の成果報酬に到達できる状況だった。つまり40ビリオンドルが達成できるという状況だった。

 ただ、40ビリオンの2/3はエヌビディア株式。合併が成就すれば、ソフトバンクグループがエヌビディアの筆頭株主になるという状況。今日現在のエヌビディアの株価に直すと、「現金+エヌビディアの株」が約80ビリオン(800億)ドルを超えるようなところまできていた。

 そして、アームの上場後の株価は市場が決めること。ただ、少なくともアームは第2の成長期、黄金期に入ると心から確信しており、「(株を)持っていてよかった」という金額になっていくと考えている。

 上場初日はわからないが、そこからさらに2年後、3年後、5年後と経過するとともに、アームの価値が上がり、利益も増える。大変な黄金期をこれから迎え、継続的に利益が伸びていく、2次曲線で伸びていくと信じている。

 ではなぜ再上場するのか。全株そのまま持っていればいいじゃないか。

 現在、アーム株式の25%は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1(SVF1)が保有しています。SVF1には、外部の投資家もいる。だから、上場株としての価値を作ることは使命のひとつになる。

 また理由の2つ目として、アーム社員にも充分なインセンティブを与える。彼らの労に報いるため、上場株のさまざまなストックオプションを提供していきたい。

 3つ目としては、これだけ社会のインフラを担うような会社になり、各国の政府も気にしているような会社になるため、できるだけ透明性を確保した経営をやっていく。そういう意味でも上場会社として、独立してやっていく方がベターだと考えている。これは買収当初から一貫して言い続けてきたことだ。

――アームはどこの市場で上場するのか。

孫氏
 米国で上場したい。恐らくナスダック(NASDAQ)じゃないかなと。

――プレゼンテーションで、アームが活躍する場としてメタバースが強調されていた。メタバースが第2のインフラ、第2のインターネットという呼ばれ方もしているがメタバースについての受け止めや、今後の関わり方は?

孫氏
 メタバースは、これから進化や姿形を変えながら、どんどん広がり、新たなカルチャー、生活様式になっていくのではないか。そのための要素技術も揃ってきた。この流れは間違いなく起こっていくだろう。

 メタバースの直接的な会社は、AIをいろんな意味で活用していく企業になっていく。SVFを通じてどんどん投資をしていくだろう。

 メタバースでは、クラウドコンピューティング、あるいはエッジコンピューティングの需要が二次曲線で増えていく。アームの黄金期にこれから入るという意味では、メタバース大歓迎ということになる。

――アーム売却断念で、何が決め手になったのか。

孫氏
 米国政府による、独禁法の訴訟が、方向として明確になってきたことがある。

 英国、EUなど各国の政府規制当局が非常に強い反対というか、懸念を表明しているなかでのこと。そうした懸念への解決策を幾つか提案しており、「これなら当然、規制当局も納得するだろう」と思っていたのですが、いろいろ提案しても、各国政府からは全く相手にしてもらえない状況がこの3カ月続いた。

 エヌビディアとしてこれ以上難しいだろうと話があり、お互い、急激に難しい状況に追い込まれたということになる。

――アーム売却を約一年半で、諦めざるを得なくなった点について、孫さんの率直な思いをあらためて聞かせてほしい。

孫氏
 率直にということで言えば、これほど各国政府、あるいは業界の中心の会社が反対に回ることは想定していなかった。エヌビディア側も、それはそれは驚いている

 ただ、今となってみれば、アームがいよいよ黄金期に入るということで、プランBのほうがむしろ良かったかもしれない、これから思えるんじゃないかなと。それくらい単独上場を楽しみにしている。

――2022年度中にアームを上場させるとのことだが、その後の保有方針は?

孫氏
 アームは本当にこれから黄金期に入ると思っている。できるだけ、あんまり売りたくないなあと、内心思っている。

 ただ、先述したように、ビジョンファンドで25%保有しており、外部の投資家がいる。その辺のバランスを見ながら、これから検討していきたい。

――SFVで、保有するユニコーン企業の株式自体を担保にして資金調達するという観測報道が、昨年末、一部の海外報道であった。

孫氏
 ビジョンファンドで保有している上場株、あるいは未上場株を担保価値として、健全な範囲の中の割合で資金を提供したいと言うオファーもいくつかある。ビジョンファンドの価値を有効活用できるのであれば、渡りに船だと言うことで一部活用をするように進めているところ。

――ビジョンファンドの日本株への投資について、どう考えているのか。

孫氏
 最近、二社ほど投資した。日本はAIの活用が非常に遅れているという懸念を、何回か表明していたが、いよいよ日本からもAIを活用した素晴らしい会社が生まれつつある。(ほかにも)何社か今、着目しているところで、交渉も開始している。日本の投資専門のチームも結成中で、ちょっと楽しみにし始めたということになる。

後継者について

――1月28日、副社長のマルセロ・クラウレ氏が退任した。いろいろな報道もあったが、あらためて背景を聞かせてほしい。

孫氏
 マルセロは、スプリント(かつて傘下に置いていた米国携帯電話事業者)や、WeWorkなどで、ソフトバンクグループが抱えていた難しい問題に対し、非常に貢献してくれた。

 ソフトバンクグループの事業内容が、「AI革命の資本家」になるというビジョンになっているが、経営も次のステージに移ると。お互い、ここで一区切りをつけようと合意に至り、退任が決まった。大変有能な人物ですから、これから大いに成功してくれると信じている。

――ソフトバンクビジョンファンド(SVF)2で、コミットメント総額が増えているが、今後、どの程度増やしていくのか。

孫氏
 SVF1は、ソフトバンク自身が投資していた金額を上回った金額に既になった。これも継続して着実に増やしたい。

 SVF2では、Web3分野も増えてきているが、とにかくAIを使い、世の中を革新するユニコーン軍団へ集中的に投資することに変わりない。売りながら投資していく。1社あたり100億円ぐらい投資している。上場して価値が出たら、徐々に売却して、また未上場に投資する。

――クラウレ副社長が退任したが、過去、孫氏は後継者探しが最重要課題としていた。現時点でその気持ちと、今後の方針を聞かせてほしい。

孫氏
 後継者探しは大変重要なテーマだという思いは変わりません。必ず見つけます。必ず育成します。

 ただし、今、僕自身がですね、ビジョンファンド、そして新たにアームと言うことで、もうエキサイティングでですね。楽しくてしょうがないと。

 こんな楽しいことを辞めて引退したら急におじいちゃんになっちゃうんじゃないか。今、楽しくてしょうがないんで、まあ、まだしばらくはバリバリの現役でと思っています。

 健康面については、この前、久しぶりにボーリングやったんですね。そしたらあの一日で、数ゲーム、投げましたけど、そのうちの二回は200以上のスコアを出しました。

 60代でアマチュアで、たまにしかやらないボーリングで、一日で二回、200オーバー出した。(こういう人は)あんまりいないと思うんですよね。結構、僕ね、スポーツマンなんですよ、ええ。

 ボーリングの球も結構スピードあってですね。バーンとストライクはじける。「まだまだ俺は若いんじゃないか」と自分で勝手に思ったりした。

 とにかく経営についてもまだまだ、新しい技術革新が楽しくてしょうがない。後継者探しは必ずやるが、もう少し楽しみたい。