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トヨタとNTTが資本業務提携、スマートシティで連携へ――「未来をもっと良くしたい」

 トヨタ自動車とNTTは、資本業務提携の締結を発表した。両者の専門である自動車分野と通信分野を持ち寄り、スマートシティの推進を図る。2000億円の相互出資が行われる。

 両者はスマートシティ化による課題解決や価値向上の効果の最大化を目的として、共にスマートシティ実現のコア基盤となる「スマートシティプラットフォーム」を共同で構築、先行ケースとして静岡県裾野市東富士エリア(Woven City)と東京都港区品川エリア(品川駅前のNTT街区の一部)にて実装し、その後連鎖的に他都市へ展開を図る。

トヨタ自動車 豊田章男氏
NTT 澤田純氏

 NTT 代表取締役社長の澤田純氏は、「住民や地域の社会基盤を構成していきたい」と合意の意義を語る。スマートシティは、8つの要素で成り立つという澤田氏。「自動車がコネクテッドな世界になっている今、自動車はスマートシティの要素の1つとなる」と語る。

 NTTでは、スマートシティ実装の取り組みとして札幌や横浜を始めとして国内のみならず国外での展開や地域創生支援などを行ってきているが、「コアとなる要素が今回の提携と考えている。スマートシティの社会基盤を作る。東富士の裾野から世界へ広げたい」と決意を示す。同時に「長期的な営みになる」と今後の見通しを示し、長い時間をかけた挑戦になることも明らかにした。

 これらを支える技術要素を「IOWN」「5G」「データマネジメント(人流把握/予測)」「再エネ直流グリッド(クリーンエネルギー等)」であると語る。澤田氏はIOWNで扱われるコンピューターをつなぐキーとして5Gを活用することに言及、さらに先の6Gを活用する考えがあることを明らかにした。

 さらに、澤田氏は「今回の資本業務提携のベースは人である」という。「豊田氏のトヨタ社内向け公演に多くの示唆が含まれており、感銘を受けた。この方(豊田氏)が率いる会社と一緒にスマートシティを通じて、より明るい未来を広げていきたい」と語った。

時代の変化に合わせた進化

 トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏は今回の業務提携について、「モノづくりにおけるソフトウェアの位置付けの変化」「自動車の役割の変化」という2つの点から説明する。

 従来のモノづくりにおいて、ハードウェアとソフトウェアは、一体として開発することが基本だったが、近年ではソフトの進化スピードにハードがついていけないという問題が顕在化していると指摘。

 こうした中、ソフトウェアを先行開発する「ソフトウェアファースト」の考え方の成功例をスマートフォンだと豊田氏。「クルマに例えると、フルモデルチェンジがハードウェア変更のタイミングで、マイナーチェンジはソフトを更新で運転支援機能など新しい機能・価値を提供すること」とクルマづくりにおけるソフトウェアファーストの考え方を語る。

 これは、ソフトウェアファーストにより、ハードが蔑ろにされるという意味ではない。トヨタのクルマが持つ耐久性、補給部品の入手しやすさ、修理しやすさというポイントは世界のMaaS事業者に評価されていると豊田氏。トヨタが積み上げてきたハードの強みとソフトウェアファーストの考え方で、これからのクルマ作りを変革していくと語る。

 また、社会におけるクルマの役割変化が訪れている。トヨタが2011年に発表した「Fun-Vii」、2017年に発表した「e-Palette」、そしてe-Palleteが走るための街が必要と考えて生まれたのがスマートシティの「Woven City」という。

 これにより、クルマや住宅が先にあり、街につながるのではなく、街が先にありクルマや住宅がつながる。そのために仕事のやり方を大きく変革するということにつながると豊田氏は語る。これがトヨタが街のプラットフォームづくりをする理由とした。

未来をもっと良くしたい

 コネクテッドな社会の到来により、クルマは個人の所有物としてではなく、社会システムの構成要素となり、果たす役目も変わる。自動車メーカーにとっても、クルマの進化と社会の進化は切り離せない関係へと変化する。

 NTTをパートナーとした選んだ理由にさまざまな社会インフラを提供する同社であれば「社会システム化したクルマを上手く扱える」と意見を示す。社会システムに結びついたクルマの未来をつくっていくことが、トヨタの「モビリティ・カンパニー」への変革につながると説明。

 これまで交換機などを用いたアナログ通信の時代からデジタル通信、携帯電話と時代の流れを歩んできたNTTを「企業のフルモデルチェンジの先駆者」という豊田氏。通信分野のトップを走るNTTと自動車業界の重鎮であるトヨタは、これからもさらに仲間を求めるとしながら「未来をもっと良くしたい」ということが共通の思いであると語った。