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ドコモが2030年までにCO2排出を実質ゼロに、電力再エネ化を推進

「ドコモでんき」としてユーザーに提供も

代表取締役副社長の廣井 孝史氏

 NTTドコモは、カーボン・ニュートラルに関する取り組みを説明し、そのなかで「使用電力をクリーンエネルギーに転換する」や「ドコモでんき」などが発表された。

 説明会では、代表取締役副社長の廣井 孝史氏が登壇し、同社の取り組みを紹介した。

基地局などをクリーンエネルギー化

代表取締役副社長の廣井 孝史氏

 廣井氏は、携帯電話事業について「リモートワークなどで環境負荷が低減するという効果がある一方、基地局や販売拠点への配送やスマートフォンの製造などで多くのCO2(二酸化炭素)が排出されている」と指摘し、大胆な推計と前置きしながら「スマートフォン1台で年間約88kgもCO2を排出している」と説明する。

 これらから、日本で携帯電話事業を展開するドコモとして、同社が消費している電力の「省電力化」や「再生可能エネルギーの調達」などでCO2削減に取り組む責任があるという。

代表取締役副社長の廣井 孝史氏

 次に廣井氏は、CO2削減策として、「自社の省電力化の徹底」を挙げた。

 「自社の省電力化の徹底」では、ネットワーク設備の消費電力を徹底的に削減するという。ネットワークで転送されるデータ量が飛躍的に増出しているため、消費電力の伸びを徹底的に抑えていく方針をとっている。

 具体的には、再生可能エネルギーの調達の拡大や、電気信号から光信号処理に転換するIOWN技術の活用、基地局のアイドル時に稼働状況をコントロールすることなどによって、CO2排出量の削減に取り組むという。

2030年のカーボン・ニュートラルを目指す

 再生可能エネルギーの調達は、NTTグループの電力事業会社「NTTアノードエナジー」から行う。また、ドコモショップへの太陽光パネルの設置などもあわせて行い、グリーン化を推進していく格好だ。

代表取締役副社長の廣井 孝史氏

 これらの取り組みにより、2030年にCO2排出量の実質ゼロとなるカーボン・ニュートラルを実現する。

代表取締役副社長の廣井 孝史氏

「グリーン5G」や「ドコモでんき」でユーザーにも見える形で環境貢献

 カーボン・ニュートラルの取り組みは、ユーザーに見える形での取り組みもすすめるという。具体的には、5G通信サービスを「グリーン5G」と銘打ち、再生可能エネルギーで供給できるようにすすめていく。

 また、2022年3月のサービス開始が発表された「ドコモでんき」もこの取り組みの一つだという。携帯電話と電力を、生活インフラとしてワンストップで提供する。「ドコモでんき」では、再生可能エネルギーが活用されたプランも用意し、「グリーン5G」とともに生活インフラを再生可能エネルギーで提供するとしている。

 同社は今後、携帯電話と電力以外にも、投資やファッションなどへCO2排出量削減の取り組みを拡大させていく。同社では、これらの活動に「カボニュー」という愛称を命名し、ユーザーやパートナー企業を取り込み「日本全体のCO2削減」に向け取り組みを続けていく。

代表取締役副社長の廣井 孝史氏

主な質疑

左から、常務執行役員の南 俊行氏、代表取締役副社長の廣井 孝史氏、経営企画部サステナビリティ推進室長の浪方 竹葉氏

 質疑の対応者は、廣井氏のほか、経営企画部サステナビリティ推進室長の浪方 竹葉氏、常務執行役員の南 俊行氏が登壇した。

――「ドコモでんき」について、価格やドコモユーザーの優遇施策などはあるか?

廣井氏
 電力事業参入についての検討を進めているところ。具体的な内容については、年末を目処に説明させていただく。

――ほかのキャリアがすでに電力事業に参入して時間が経っていると思うが、このタイミングで参入に至った経緯は?

廣井氏
 我々としても、さまざまなサービスをユーザーに提供していきたい。電力事業も検討を続けている中で、環境問題の取り組みの拡大ということを契機にスタートさせた。

浪方氏
 検討を重ねてきたところで、「NTTアノードエナジー」と連携し、電力供給の方も整ったということでこのタイミングでの提供となった。

――NTTグループ全体で、ドコモはどれくらいの電力を消費しているのか? 電力消費の内訳を具体的に。

廣井氏
 おおよそNTTグループ全体の3割程度。

 消費電力の内訳として、ネットワーク設備の消費量が非常に大きい。

広報部
 2019年度のドコモの電力購入量は約30.4億kWh。そのうち通信設備は、約29億kWhとなり、ドコモ全体に対する比率は約96%となる。

――これまで2030年にCO2排出量を実質50%にするとあったが、今回これを実質0%とすると発表した。実現性はあるか?

廣井氏
 「NTTアノードエナジー」からの調達や太陽光発電などで再生可能エネルギーを調達していく。不足するようであれば、商社からの購入など、あわせ技でやっていきたい。

 前提とされている技術や価格を考えると、企業にとっては、大きなコスト負担となる。一方で企業は、利益成長ということが求められ、できるだけ可能な限りマネージしながら、両立させながらやっていく。

――2030年にどれくらいの消費電力の増大を見込んでいるのか、温室効果ガスの排出はどれくらい増えると予想しているのか? また、これを踏まえ、具体的な削減量は?

廣井氏
 具体的な削減量や内訳の提示は、非常に難しい。

 設備の増強だけでなく、設備の省エネ化が進むため、具体的な数字は差し控える。いずれにしても、相当の企業努力が必要と考えている。なかなか簡単なものではないという認識。

――再生可能エネルギーでの電力供給を、コンシューマー向けにも提供するが、そうするとかなりの供給量が必要になるかと思う。供給の目処は立っているのか?

廣井氏
 ドコモがこれまで電力調達していた地域の電力会社から「NTTアノードエナジー」に変更し、調達していくのが基本方針。「NTTアノードエナジー」が、地域電力(会社)から仕入れる場合もあると思う。

 コンシューマー向けへの供給についても、「NTTアノードエナジー」や地域電力と連携しながら話を進めている。ある程度の目処が立ったので、22年3月の参入を発表させていただいたと理解いただきたい。

 再生可能エネルギーの調達も、地域電力から調達することもあれば、発電施設など独立したところから調達することもあると思う。

――2030年までのカーボン・ニュートラル達成について、業績面でのメリット・デメリットは?

廣井氏
 すべての企業に当てはまると思うが、業績面とどう折り合いをつけていくのかが最大の課題。

 最大のリスクは「調達コスト」がどうなるか。前提がなかなか難しく、調達に不足がある場合電力の購入が必要となるため、その価格について、最大のリスクと考えている。

 一方で、環境問題に対する取り組みと業績面を両立させることが大切なので、ビジネスのオポチュニティ(機会)としてどんどん狙っていきたいと思う。

 たとえば、「グリーン5G」はあくまで再生可能エネルギー調達の1つの指標であるが、共感いただけるユーザーの方々が、ドコモの5Gを使っていただければ、業績の後押しになるのではないかと思う。

 やはり、調達リスクと環境活動でどれだけビジネスオポチュニティに変えられるかというところの両立が最大のポイントだと思うので、最大限知恵を絞っていきたい。

南氏
 長期的な投資として、価値のあるものにしていくということがやっぱり大事になってくるだろうと思っている。若い世代のユーザーは、地球温暖化に対する意識が非常に高いので、若い世代をターゲットにした携帯電話サービス全体のレピュテーション(評判)を上げていく意味でも、CO2削減の取り組みは非常に重要になってくるというふうに考えている。

【追記 2021/09/28 19:24】
 ドコモ広報部より、「消費電力の内訳」について具体的な電力量の提示と内容の訂正があったため、追記しました。