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GoogleのAIがサステナビリティを支える、一人からできる取り組み~地球規模の洞察とは

 グーグル(Google)は、22日シンガポールで開かれたアジア太平洋地域向けのプレスイベントで、同社のサステナビリティへの取り組みを説明した。

 Googleアジア太平洋代表のスコット・ボーモント氏は冒頭で、「アジア太平洋地域の人々は、サステナビリティへの取り組みやそれに向けて変化を起こそうと強い動機を持っていると思う」とし、テクノロジーの分野では「アジア太平洋地域にも起業の波が押し寄せている」と指摘。

Googleアジア太平洋代表のスコット・ボーモント氏

 また、グーグルが掲げる「2030年までにカーボン・フリー」の目標を挙げたボーモント氏は「この問題解決に取り組むことは、多くのイノベーションを生む」とし、アジア太平洋地域での取り組みを紹介した。

 また、環境団体への支援のほか、AIによる迅速かつ低コストな問題解決を図っているという。

 たとえば、オーストラリアの国立科学局(CSIRO)とは、新たに二酸化炭素を大量に消費する海草や草原をどのように保全・監視し、どのような行動をとるかを支援する取り組みを実施。また、洪水警報システムは、ここ数年の間に構築され拡張されており、多くのユーザーの命を救ってきたと説明する。

 一部の地域だけでなく、先日設立された「クリーンエネルギー連合」のようなより広範囲なイニシアティブと連携することもあるという。アジア太平洋地域で議論されるような気候変動対策においては、広範な取り組みは必要になるとしており、グーグルのクラウドサービスにおいても、クリーン電力を利用するほか、ユーザーが環境負荷を軽減できるような支援も行っている。

 たとえば、商品のライフサイクル全体にあたる二酸化炭素排出量を測るカーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products、CFP)のようなツールを使い、ユーザー業務に与える影響を把握することや、AIツールで影響を軽減できるようなオーダーメイドのソリューションを構築することもできる。

 インドでは、AIを活用した環境インサイトが実際に活用されており街の気温上昇を抑える取り組みを行っているほか、街中の交通を改善するプロジェクトも進められている。機械学習モデルを使い、街中の交通をスムーズにさせられることにより発進する頻度を抑え、環境負荷軽減を図ることができる。

 このほか、インドネシアでは水産業について「Google Cloudなどのテクノロジーによるサプライチェーンの効率化」で二酸化炭素排出量の削減や海の生物多様性を保護する取り組みを進めている。

Googleマップでの取り組み

二酸化炭素排出量を抑えたドライブルート(左)と、自転車や公共交通機関を使ったルート(右)

 Googleマップ エンジニアリング マネージャーのビクトリア・ウォン氏は、Googleマップにおけるサステナビリティへの取り組みを説明した。

Googleマップ エンジニアリング マネージャーのビクトリア・ウォン氏

 アジア太平洋地域の拠点となっているシンガポールの地域本部では、日本やオーストラリア、インドのチームのモビリティ機能開発をサポートするほか、各国政府との連携やグローバルで展開される機能のローカライズのサポートを行っている。

シンガポールで重要な「空気のクオリティ」情報

 シンガポールでは、「大気汚染」に関する検索が上位を占めているといい、ユーザーの関心が高いため、国家環境庁のデータをもとにした大気汚染情報をGoogleマップや検索で表示している。

 ウォン氏は「空気の質は環境の健康度を示す最も直接的な指標の一つ」とし、アジア全域の多くの場所で、子供がこの課題に直面していると指摘。2023年以降に、ほかの地域での展開に向け、当局と協力しあえるように取り組むという。

二酸化炭素排出を抑制するドライブルートの提案

 モビリティの分野において、世界の二酸化炭素排出量のおよそ4分の1が運輸関連から排出されているという。グーグルでは、自動車での移動が排出ガスにどのように影響を与えるかを分析し、気候変動への影響を軽減する移動ルートを提案する機能を、アメリカやヨーロッパで展開している。

 この機能により、すでに50万トン以上の二酸化炭素排出量を削減できたと試算されているといい、アジア太平洋地域への導入に現在取り組んでいるという。

 一方、ウォン氏は環境負荷軽減を図るこの機能の導入には「やるべきことがたくさんある」とコメント。

 たとえば、インドや日本では、道路や交通の流れ、車の種類がすべて異なるため、それぞれの実情に合わせて機能を調整する必要があるという。

 また、日本やオーストラリア、シンガポールでは、電気自動車ユーザーに向けたドライブ旅行を無事完了させられる情報を提供している。

環境負荷を軽減する自転車や公共交通機関

 ドライブルートの提案以外にも、公共交通機関の利用など、持続可能なルートの提案に取り組んでいる。

 グーグルでは、交通機関など信頼できるデータとユーザーからのフィードバックをAIで組み合わせてルート案内に活用している。混雑状況やアクセスしやすい出入り口の情報などを詳細に分析し、ユーザーがより簡単に公共交通機関を選択できるようにする。

 また、公共交通機関以外でのルート案内にも利用できるようにしている。たとえば、日本やオーストラリア、ニュージーランド、台湾の都市では、パートナーと協力してシェアサイクル情報をGoogleマップに掲載している。

 Googleマップで、自転車によるルートを検索するユーザー数は、この3年間で60%以上増えたという。また、ルート上の標高を掲載するなど、安全性を高める機能も追加されている。

 このほか、交通量が多いルートや階段ルートを避ける機能など、ユーザーがより持続可能な選択ができるように取り組みを進めているという。

Google Earthでは地球規模の環境負荷を評価

Google Earth Engineのイメージ

 「Google Earth Engine」では、何百ものセルライトや地球観測データから得られたデータを、強力なクラウドコンピューティングと組み合わせて、迅速かつ正確に確認できる。洪水や干ばつの予測に使用されるなど、世界の生態系に関する問題を解決するにも「Google Earth Engine」が活用されているという。

 たとえば、スマトラでは森林の水循環やサプライチェーンにおける生物多様性の観測に役立てられているほか、日本では東京電力(TEPCO)が太陽光発電の計算システムに活用している。

 東京電力のシステムでは、ユーザーの建物や土地にソーラーパネルを設置した際に、どれだけの費用がかかるのか、どれだけの発電量が期待できるかをシミュレーションできる。

都市当局への支援

 グーグルでは、持続可能な都市のための支援も実施している。

 都市は、地球全体の気候に大きな影響を与えるといい、温室効果ガス排出の約70%は都市からの排出だという。また、アジア太平洋地域には、世界最大の都市ベスト10のうち7箇所があるといい、アジア太平洋地域においては、都市のサステナビリティへの支援を率先して行う理由があると説明する。

 一方で、都市の職員からは「データはたくさんあるが、それをもとに行動することが難しい」という課題が出てきたという。

 そこで、グーグルは「Environmental insight Explorer」(EIE)を開発し、環境負荷軽減へ向けて支援している。都市が二酸化炭素排出量を測定し、環境への影響について考える支援ができるツールで、アジア太平洋地域1万7000以上の都市で利用できるようにしている。

 たとえば、ムンバイではこのツールでホットスポットを特定し、対策導入に向けて進められているほか、台北では排出量のモニタリングと住民への教育に利用されている。

さまざまなサステナビリティ活動を支援

 続いて登場したのは、グーグル チーフサステナビリティオフィサーのケイト・ブランド氏。ケイト氏は、オバマ大統領時代に連邦政府のサステナビリティ最高責任者を務めた、いくつかの職務を経験しており、オーストラリアや中国、シンガポール、日本など多くの地域で多くの時間を過ごしてきたという。

グーグル チーフサステナビリティオフィサーのケイト・ブランド氏

 グーグルでは、自社内での取り組みのほか、パートナー企業や政策立案者、研究者、非営利団体とともに、グーグルのテクノロジーを使って気候に関する目標達成に努力し、気候変動の影響に対処できるようにするとコメント。グーグルの技術を「気候変動に対して行動を起こそうとしている企業や政策立案者、個人」の手に届けることができるとアピールする。

 そのうちの一つは都市をエンパワーすることとケイト氏は続ける。

 先述のとおり、世界の二酸化炭素排出量の70%が都市から排出されていることからも、都市に対してツールを提供することが非常に重要だと指摘。たとえば、都市の屋根について太陽光発電の可能性についての情報提供や、建物や交通システムの二酸化炭素排出量などの情報を提供する。

 ビジネスでの活用については、多くの企業がもっている地球環境に関する大きな目標を達成するためのツールを用意しているとした。