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OPPOの担当者が語る、「Find X3 Pro」の色彩技術とカメラのすごさとは
2021年7月12日 06:00
OPPOがフラッグシップスマートフォンとして打ち出した「Find X3 Pro」。国内では6月30日にauから発売され、7月16日にはSIMフリーモデルも発売される予定となっている。
Find X3 Proの特徴は、10億色を表現できる6.7インチの有機ELディスプレイと、同じく10億色の彩度を誇るというアウトカメラだ。
今回はメディア向けに、Find X3 Proの色彩技術を紹介するオンラインラウンドテーブルが開催された。OPPOのイメージングプロダクトマネージャーである、白浪(Bai Lang)氏が、その技術について語っている。
色彩技術に込められたOPPOの思いとは
冒頭では、4枚の異なる風景を組み合わせた写真が紹介された。たとえば桜を見るとロマンチックな気分になり、夕日に照らされた富士山を見ると癒やされるように、人間の感情は色彩によって左右される。
映像とディスプレイ技術の進歩によって、現実世界の色彩にデジタルな世界の色彩がどんどん近づいている。OPPOはテクノロジーを活用することで、リアルな色彩の再現を目指す。
色彩研究は、OPPOにとって非常に重要なテーマのひとつ。同社はインダストリアルデザインや映像技術、ディスプレイのキャリブレーションなど、あらゆるタッチポイントにおいて、美意識やプロダクトに対するこだわりを追求してきた。
OPPOは色彩研究を進める中で、2つの開発課題を掲げた。
ひとつは「良い色彩の定義」で、プロカメラマンたちとも連携しながら、色彩ソリューションの構築のために大量の実験データを蓄積してきた。
もうひとつの開発課題である「業界において前例のないこと」では、10bit(10億色)の写真・動画の撮影から表示までに対応する「10bitフルパスカラーシステム」を開発した。同システムに関しては、本記事後半で詳しく紹介する。
「色域」と「色深度」について
そもそも、色彩技術に関して重要な基本概念は、「色域」と「色深度」の2つ。
色域は、ディスプレイ表示や写真・動画撮影における色彩範囲を決めるものだ。スマートフォン業界では「sRGB」と「DCI-P3」という2種類の色域が用いられている。Find X3 Proが対応するDCI-P3の色彩範囲はsRGBより25%多くなっており、より豊かな色彩の表示が実現する。
色域が色彩の範囲を定める指針であるのに対し、色深度は色彩の数量を指すもので、色彩の濃度とも呼ばれる。
同じ色域の範囲であれば、色深度が高ければ高いほど、表示可能な色彩の種類が多くなり、色彩のグラデーションもなめらかに感じられる。
10bitの場合に表示できる色彩が10.7億色で、8bitは1670万色。したがって、10bitは8bitの64倍の表示能力を持っているということになる。
8bitと10bitの作例比較
ここで、8bitと10bitの作例として、夕日が美しい海の写真を見てみよう。
8bitの画像では、空に「色の断層」ができているのがおわかりだろうか。対して10bitでは、空の色がなめらかに描写されているのが一目瞭然だ。
「積層式DOL-HDR技術」の採用など
色彩の情報をスムーズに処理するにあたって、イメージングセンサーや映像アルゴリズムの向上は必要不可欠だった、と白浪氏は語る。
イメージングセンサーに対して新たに採用されたのは、「積層式DOL-HDR技術」。これは、従来のHDR技術との比較で、SN比率の向上やゴースト現象の回避、さらにダイナミックレンジの向上において優位性のある技術となる。
アルゴリズム面に関しては、OPPOのチームがAI強化を含め、20種類以上のアルゴリズムを全面的にアップグレードしたという。
HEIFの優位性
色彩情報がディスプレイに表示される前に、エンコーディングや保存、デコーディングのフローが必要になる。
10bitに含まれる膨大な色彩情報に対して、従来のH264コーディングおよびJPEG拡張子はすでに力不足になっているという。そこで、OPPOはH265コーディングとHEIF拡張子こそが、10bitに対して完璧に対応できるソリューションだと位置づける。
HEIFは最大で16bitの色深度までサポート可能で、画質の向上に貢献する。また、先進的な圧縮アルゴリズムにより、ストレージ容量はJPEGの50%まで抑えられる。さらに、GIFや連続撮影まで幅広くサポート可能な点も長所だ。
デコーダーの再構築により、10bitの画像処理に対応
デコーディングやレンダリングのプロセスで、10bitの情報をいかに劣化なく処理するか(ロスレス)という点も、OPPOが直面した課題だった。
現在のAndroidのシステムのボトムレイヤーをみると、8bitのコーディングしかサポートできない。したがって、デコーディングからレンダリングまでの過程で、画質の劣化が発生してしまう。
そこでOPPOは、デコーダーを再築し、10bitの画像データを処理できるソリューションを開発した。そのほか、レンダリングレイヤーの最適化など、さまざまな難関を突破した上で10bitフルパスカラーシステムを実現している。
ディスプレイにおける緻密な調整
前述のようなかたちで処理された10bitのデータをディスプレイに表示する上で、OPPOは緻密な調整を施している。
現在一般的に採用されているsRGBは、規格上、DCI-P3と異なるものだ。sRGBにおいて、色補正の基準となる「ホワイトポイント」の標準色温度はD65となっている。
それに対し、主として映画産業に採用されているDCI-P3のホワイトポイントは、D63。そこで、DCI-P3に対しD65を基点にすることで、異なる色域でも色温度を統一している。
また、色域マッピングのアルゴリズムも採用されており、sRGBデータも、Find X3 ProのDCI-P3ディスプレイに正確に表示される。
こうした緻密な調整により、Find X3 Proのディスプレイの色精度はJNCD=0.4となり、統一感のある発色を実現した。
Androidのエコシステムにおける色彩管理レベルを引き上げる
OPPOは、ICC(国際色彩連盟)に加盟しており、色彩の統一性などを多くのユーザーに届ける取り組みを続けてきた。
今後はライセンスの開放などにより、サードパーティによるアプリケーションなどもサポートして、Androidの色彩管理レベルを引き上げたいと意気込む。
多様な色の見え方に対応する「色彩補正システム2.0」
「色彩の統一性」を重視するOPPOだが、一方で「同じ赤色でも、人によって濃い赤で見えたり、ピンクがかって見えたりする」として、多様な色の見え方にも配慮している。
そこで同社が開発したのが、「色彩補正システム2.0」。開発にあたっては世界中で6000名以上の従業員を募集し、大規模なテストを実施した。
テストの結果を踏まえ、色彩の表現力や識別精度のバランスをとりつつ、OPPOは実に765種類ものソリューションを開発している。その上で「ベスト」とされたのが、今回の色彩補正システム2.0だという。
カメラに秘められたテクノロジー
白浪氏はプレゼンテーションの最後で、Find X3 Proのアウトカメラのシステムを紹介した。
同氏は「スマートフォン業界の中で『高画素』というのは、すでに新しいトピックではないかもしれません。ただし、果たしてそれは『高画質』を同時に意味するものなのでしょうか?」と一石を投じる。
スマートフォンのカメラにおいて広角レンズや超広角レンズは頻繁に使われるが、たとえば広角で撮影すると画角が狭くなり、超広角で撮ると画質が落ちるという「トレードオフ」が起きていた。そこでFind X3 Proが「新たな可能性」として打ち出すのが、広角と超広角のデュアルフラッグシップカメラだ。
セールスポイントは、超広角レンズにもメインの広角レンズと同様、ソニー製センサー「IMX766」を搭載していること。画質の大幅アップに貢献している。
また、独自開発の自由曲面レンズもユニークといえる。従来のトリミング手法やアルゴリズムによる歪み補正と異なり、ハードウェアレベルで周辺の歪みを抑えるしくみ。さらに、7枚のレンズで構成されていながら、前製品と比較して全体で11.7%の軽量化を実現している。
レンズ曲率の変化によって、レンズに入る光の変化が複雑になると、紫のにじみが出る「パープルフリンジ現象」が起きやすくなる。そこでOPPOのイメージングエンジニアたちは、アルゴリズムの調整と合わせてシミュレーションを重ね、パープルフリンジ現象を抑えることに成功したという。
Find X3 Proでは、ユニークな顕微鏡機能も用意されている。最大60倍率の拡大視野で、マイクロ世界の素晴らしさを味わえるとうたう。
顕微鏡機能において課題となったのは「ホコリ」。OPPOはソフトウェアサプライヤーやレンズメーカーなどと協力し、10パターン以上のデザイン検討・変更を経て、ホコリの問題を解決したとのことだ。
白浪氏は、「Find X3 ProとOPPOの色彩システムで、すべてのユーザーが色彩的にリアルな世界を体験できる」と強調する。
その上で、「Find X3 Proの超広角・広角レンズは、どこにいても何を撮っても、心の動く写真を撮影できるようなスペックになっている」とし、「顕微鏡機能を通じて、ユーザーの皆さんの好奇心が広がれば素晴らしいと思います。マクロ世界からマイクロ世界へようこそ!」とコメントしてプレゼンテーションを締めくくった。