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“つまむ”だけのアンテナや空中基地局など、ドコモが秘める6G時代に向けたテクノロジー

 NTTドコモは、MWC2021 docomo Special Showcase in TokyoにおいてHAPS、メタサーフェスレンズ、つまむアンテナなどの技術を公開した。

 NTTドコモ 執行役員の中村武宏氏がビデオ出演し、同社の5G Evolutionや6G時代に向けた取り組みを説明。同社では「5Gの高度化と6G」というホワイトペーパーを2020年1月に初公開。その後も改訂を続け、2021年2月には第3版としてあらためて公開した。

 同社では、文書中の中で6Gへの要求条件として100Gbps以上の通信や1ms以下の超低遅延など6つを定義。その実現に向けた技術発展としては8つが挙げられているが、中でもカバレッジ拡張の技術が重要になってくると説明する。

つまむだけでそこが5Gエリアに

 同社が現在、取り組んでいるカバレッジ改善技術のひとつが「つまむアンテナ」だ。「誘電体導波路」といわれる線をつまむことで、電波を放射、放すことで停止するというもの。

 一般的に用いられている、同軸線路に対して中心導体がないことが特長で、鉄で覆われた空間内で電波を伝送する「導波管」のように金属で周囲を囲まれない。コアを別の材質の誘電体で囲むことで中に電波を閉じ込めるというもので、光ファイバーに近いという。

 同軸線路と比較して損失が少なく、ミリ波と呼ばれる28GHz帯の伝送が可能で、周波数が高ければ高いほど細い線路でも電波を送れるようになる。

 特に屋内での利用を想定した技術で、検証の結果、基地局のみでのエリア化では、奥まった場所の電波強度が低下するのに対して、中継装置とつまむアンテナを組み合わせた場合は明らかな改善が確認されている。

 この技術を用いることで、遮蔽物などにより、基地局からの電波が届かない場合でもエリア化が可能になる。通信品質の安定化に貢献することに加えて、特定の場所だけをエリア化・非エリア化したいというニーズにも答えられる。

会場ではこの洗濯バサミ状のものでつまむことでエリア化を実現した
遮蔽物があってもエリア化が容易に

 工場内などは機材のレイアウト変更により基地局設備の移動といったコストが発生するが、つまむアンテナを設置することで、機材により電波が遮蔽されてもつまむだけでその場所をエリア化できるようになる。

窓ガラスで5G電波を増幅

 メタサーフェスレンズは、住宅などの窓ガラスを活用し、基地局の電波を屋内に取り込みやすくするもの。

 5Gに用いられる高周波数帯の電波は屋内などには到達しづらく、窓際まで到達した電波を集約・活用する方法が、屋内のエリア化において有効な方法という。ドコモと旭硝子(AGC)は2020年にその実現に必要な最大200倍程度までの増幅性能を持つメタサーフェスレンズを開発。

 同社では、実際に窓のある環境を用いてメタサーフェスレンズの実カバレッジ改善効果の検証を実施。それによると、一般的な遮熱性の高い「Low-Eガラス」がほとんど電波を通していないのに対して、電波透過設計技術に加えてメタサーフェスレンズを組み合わせ、リピーターをもちいて増幅した場合は、大幅に電波強度が改善している。

空中基地局も構想中

 さらに、超カバレッジ拡張としては「HAPS」が挙げられる。これまでのように地上に基地局を設置するのではなく、高高度を飛ぶ航空機に無線装置などを搭載し、空からモバイルネットワークを構築するというもの。

 災害対策などに加えて、空、海、宇宙のエリア化などが期待できる。期待としてはエアバスの「Zephyr」(ゼファー)などがあり、飛行性能やコストの面でより実用的なものになりつつあるという。ドコモ ネットワークイノベーション研究所の外園悠貴氏によると「通信技術以外の面でも、機体が進化したことによりHAPSの実現が現実味を帯びてきた」と語る。

 このほか、同社ではHAPSシミュレーターを開発。HAPSのさまざまな使用例をビジュアル化するもので、個々の事例に合わせてスループットの評価が行えるという。