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KDDI総研、量子コンピューティング技術活用した5G周波数割り当て方式を開発

 KDDI総合研究所は、電波の有効活用に寄与する量子コンピューティング技術を適用した新たな周波数方式を開発した。

 5Gを提供する事業者に向けて、より使い勝手の良い周波数割り当てを実現するもので「事業者基地局の需要帯域と同じ帯域が利用できる」(需要応答)、「分割せず連続したチャネルが利用できる」(周波数軸の連続性)、「同じチャネルが使い続けられる」(時間軸の連続性)、「他の基地局と干渉量が抑えられる」(相互干渉量)の4つの指標を同時に高めるという。

 最適な割当パターンを発見するには、8基地局へ4チャネルを2タイムスロット分割り当てる場合、総当たり方式では1万年以上かかることから、数理モデルを量子アニーリングへ適用できるイジングモデルに変換。実証では日立製作所のイジングマシンで実行した。

 これにより1万年以上かかる既存の手法に対して、前述の4つの指標を平均で2倍改善する解を72マイクロ秒で算出できることを確認したという。また、2の3000乗通りの候補が存在する100基地局への15チャネルを2タイムスロット分割り当てる場合でも4つの指標を平均で1.3倍改善する解をおよそ34秒で算出することに成功したという。

 これにより5Gユーザーの状況に応じて、事業者が共用周波数を割り当てることができるようになり、5G端末で使用するアプリケーションがより快適に動作することが期待できる。

 高精細な映像や音楽ストリーミングによりトラフィックの負荷が増大し、ローカル5Gの普及で多数の事業者が同一周波数を同じ地域で共用することが予測される中、大容量トラフィックの対処や同一周波数の共用への対応として、ダイナミックな周波数割り当て技術に注目が集まっている。

 性能向上の限界を迎えつつある、現在のコンピューターの代替として期待される量子コンピューティング技術のひとつである量子アニーリングは、組合せ最適化問題に特化した高速処理を可能にする技術。量子アニーリングを実装したコンピューターなどはイジングマシンと呼称される。

 KDDI総研では、限りある電波資源を効率よく利用できる情報通信システムの構築に向けて、ユーザーニーズに沿った周波数利用の検討を進めるとともに社会課題の解決に向けて電子技術の応用に関する研究開発を推進するとしている。