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金沢工大の研究グループ、無線電力伝送で世界最高の電力変換効率を達成

 金沢工業大学は、同大工学部電気電子工学科の伊東健治教授と坂井尚貴研究員らの研究グループが、マイクロ波を使った無線電力伝送で、1W入力時に92.8%という電力変換効率を達成したと発表した。世界最高の電力変換効率という。

 スマートフォンを置くだけで充電できるような近距離でのワイヤレス充電技術はすでに実用化されている。一方、今回の発表では、電気を電波に変換し、アンテナ経由で送受信するマイクロ波方式でのもの。

 今回発表された研究は、受電レクテナ(整流回路付きアンテナ)の構成に関するもの。これまでの「受電アンテナ+回路+ダイオード」から、回路機能を受電アンテナで実現することで「受電アンテナ+ダイオード」とし、回路による損失を削減した。

マイクロ波の無線電力伝送システム。
従来の受電レクテナの構成
今回の研究での受電レクテナ

 整流用ダイオードとして、三菱電機で開発されたガリウム砒素(GaAs)ダイオードを用いている。

 5.8GHz帯を使った1W入力時で電力変換効率が92.8%となった。これは世界最高の効率という。また5W入力時には電力変換効率が76.6%となっている。

電力変換効率と5.8GHz帯整流回路の性能を比較した図

 今後は、名古屋大学、名古屋工業大学、三菱電機で開発中という窒化ガリウム(GaN)を用いるダイオードを活用することで、さらなる大電力化を目指す。2022年度までの研究で、10W受電を高効率で実現する。

 これらの取り組みが実現すれば、ドローンなどへ、高効率かつ低価格で無線で充電できるようになるという。

 無線での電力伝送は、多くの研究が進められており、総務省でも実用化に向けた制度を整備しつつある。また企業でも「その場に入るだけでスマートフォンを充電できる」といった仕組みを実現すべく、研究開発が進められている。