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最長10mのワイヤレス給電が可能な「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」、技術的条件について一部答申を公表
2020年7月15日 14:55
総務省は14日、情報通信審議会から、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」のうち、屋内における空間伝送型ワイヤレス電力伝送(WPT)システムの導入にむけた技術的条件について一部答申を受けたことを発表した。
空間伝送型WPTシステムは、電波を活用した遠距離のワイヤレス充電・給電システムで、有線で接続することなく利用できることから、幅広い用途での利用が期待されている。
総務省では、2019年2月に「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム作業班」を設置し、工場内で利用されるセンサー機器への給電などにおける空間伝送型WPTシステムの技術的条件について審議を進めてきた。今回、周波数帯や空中線電力などの技術的要件に関して、意見募集を経て情報通信審議会から受けた一部答申の内容を公表した。総務省では今後、一部答申をふまえて制度整備などを行う予定。
国際標準化の観点やニーズ、コストなどの面から920MHz帯、2.4GHz帯、5.7GHz帯の3つの仕様が策定された。屋内の無人の工場ラインや倉庫、有人の物流現場、老人介護施設での普及を想定し、920MHz帯以外は人がいない環境での電力送信を想定している。
2.4GHz帯および5.7GHz帯では、安全対策としてセンサーなどによる人体検出機能を備え、電波防護指針値を超える範囲に人が立ち入ったことを検出した場合は、送信を停止する機能を設けることや、電波防護指針を超える範囲に表示や柵などを設ける対応の実施も条件にした。
920MHz帯では、電波防護指針を満たす距離が数十cm程度と比較的近距離のため、人の有無やほかの無線システムとの干渉を考慮した運用を必要としない一般環境での使用を可能とした。
使用する周波数帯のうち、920MHz帯では携帯電話(LTE)基地局および移動局との共用は可能。2.4GHz帯および5.7GHz帯では、無線LANシステムと共用する場合、キャリアセンスによる干渉確認を実行した後、電力の送信を開始することが定められた。
今回の検討では、第1ステップとして、工場などの屋内での利用を前提とした空間伝送型WPTシステムに関して、ほかの無線通信システムとの共用や電波の安全性について検討を行った。
今後の第2ステップ以降における屋外での利用や大電力化を可能とする構想については、技術の発展や実用化に向けた取り組みの状況を踏まえて検討を行う。現時点で期待される第2ステップ以降のユースケースには、屋内外でのスマートフォンやタブレットといったモバイル端末への電力送信も含まれている。