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京セラのPHS基地局技術を活かした「ワイヤレス電力伝送」、CEATECより先にデモを見てきた

 外出先で充電しなくても済むスマートフォン、永遠に飛行可能なドローン、給油や充電スタンドいらずの自動車……そういった夢の世界が、京セラの基礎技術によって実現するかもしれない。

 京セラは11日、5.7GHz帯における「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」を実現する基礎技術を開発した。同社 研究開発本部 先端技術研究所 所長の小林正弘氏や、同第1基盤技術ラボ ワイヤレス研究課 課責任者の田中裕也氏が、この技術のしくみについて語った。

 本稿では、今月下旬に開催予定の「CEATEC 2023」に先がけて実施されたデモの様子とあわせてご紹介する。

小林氏
田中氏

遠距離のワイヤレス電力伝送の実現へ

 通信技術は有線からワイヤレスへと進化し、デジタル社会において発展してきた。一方、電力供給の多くは依然として有線という状況であり、ケーブルを使うことから物理的な故障のリスクも課題となっている。

 スマートフォンの充電器など、昨今では近距離のワイヤレス充電技術の開発も進むが、遠距離のワイヤレス電力伝送はまだ実現していない。

 今回京セラが開発した基礎技術は、電波(マイクロ波)の放射を集中させる「ビームフォーミング技術」と、電波の伝搬環境に応じてリアルタイムに電波放射を追従制御する「アダプティブアレー技術」を融合したもの。同社がPHSの基地局で培ってきた、電波の制御技術が活かされている。

 高精度な電波のコントロールが実現し、スマートフォンやドローンなどの移動体もリアルタイムに追従してワイヤレスで電力を伝送できる。人体や電子機器への影響を避けつつ電波を放射でき、スマートウォッチなどの電池レス化や、携帯電話などのモバイル機器への活用が期待されるという。

 京セラでは今回、5.7GHz帯を利用した空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムにおいて今回の技術を適用。1m先に対して2381mWの電力を供給できることなどを確認した。

 京セラの空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの特長は「高速追従する電波制御」「高精度な電波制御」「高効率な電力変換」の3つ。

 先述のビームフォーミング技術などとあわせて、不要な方向への電波放射を抑える「ヌルステアリング技術」により、電波の指向性を高精度に制御。人体や無線システムへの影響を防ぐ。

 また、独自の電波制御技術と、受信したマイクロ波を整流する独自のレクテナ回路技術を組み合わせ、高効率化を実現。エネルギーを電力へ変換する際の変化効率は、70%~80%となっている。

デモンストレーションの様子

 デモンストレーションでは、装置上部の送電アンテナから、小型モーターを搭載して走るミニカーを追従するかたちで電力を伝送。ミニカーが安定して走る様子が披露された。

 また、伝送先を切り替え、プロペラモーター付きのレクテナ(受電部)へ電力を送るデモも実施された。現在の電力はプロペラを飛ばすほどではないものの、将来的な目標として京セラは取り組みを続けていく。

プロペラ→ミニカー→プロペラの順で、伝送先が切り替えられている

 同社の空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムは、10月17日~20日に千葉県幕張メッセで開催される「CEATEC 2023」に出展される。

 CEATEC 2023での出展はよりインタラクティブな形式になる予定で、来場者がボタンを押すと電力の伝送を切り替えられるようなしくみも用意されるという。

デモ装置