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「Snapdragon 865」でカメラ、ゲームはどこまで進化するのか

 ついに発表されたクアルコムの新たなハイエンドスマートフォン向けチップセット「Snapdragon 865」。その詳細が4日、公開された。

構成図

 7nmプロセスで製造され、865はTSMC、765と765G(ゲーミング用チップ)はサムスンが担当する。

 プレゼンテーションで紹介されたのは「Snapdragon 865」のみ。チップセットの構成を見ると、カメラ関連処理はSpectra 480、グラフィックはArdeno 650、AIはHexagon 698、そして中心のCPUはKyro 585という製品になる。

 CPUのKyro 585は、「Snapdragon 855」よりパフォーマンス、電力効率どちらも25%向上させた。

 このほかセキュリティ機能、センサーとの中継機能なども搭載されている。本誌ではSnapdragon 865の特徴的な機能のうち、AIや関連の詳報を別途お伝えしている。

通信機能

 5G関連で見ると、「865」はX55モデムとセットで利用する形。X55ではサブ6(6GHz帯以下の5G向け周波数)とミリ波と呼ばれるきわめて高い周波数をサポートし、最大7.5Gbpsで通信できる。キャリアアグリゲーションにも対応する。

 また4Gと5Gで同じ周波数を共有できる仕組み「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」、グローバルでの5Gローミング、マルチSIMに対応する。

 同時に発表されたSnapdragon 765と違い、モデムは統合されておらず、別途、スマートフォン側にはX55モデムが搭載される。

 統合しなかった理由について、クリスティアーノ・アモン社長は、報道陣とのラウンドテーブルの席上で「妥協したくなかった」とコメント。5G時代には、映像コンテンツでのイノベーションがもたらされ、利用が拡大すると予測。

 さらにゲーミング用途でもスマートフォンでの利用が拡大すると見ており、5G通信のスペック面でも、アプリケーション処理のスペック面でも、能力をフルに発揮できるよう、今回は統合を避けたと語った。

 Qualcomm FastConnect 6800と名付けられた製品により、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)にも対応する。これまでもWi-Fi 6対応だったが、Wi-Fi 6自体がドラフト状態から正式な規格になったことで、スマートフォン側でも対応することになった。さらに最近の動画利用のトレンドにあわせ、Wi-Fiの上り通信時のMU-MIMOに対応する。

 Blueotooth 5.1対応で、aptX AdaptiveおよびQualcomm TrueWireless Stereo Plusに対応。超広帯域音声通話で、32Hzのクリアな音声通話を実現するほか、完全ワイヤレスイヤホンでは、それぞれ独立してスマートフォンと接続できる。

カメラ、映像処理のスペック

 画像処理のプロセッサーであるSpectra 480では、発熱を抑えながらグラフィックのレンダリングを25%改善、電力効率を35%改善した。

カメラ機能のハイライト

 5G時代に映像コンテンツの利用が促進するとの見通しもあって、Snapdragon 865は毎秒2ギガピクセル(2億画素)処理できるようになった。

 また200メガピクセル(2億画素)のセンサーもサポート。これにより、デジタルズームの写真でも、従来よりも高精細になり、ディティールが鮮明になるという。

 取り扱えるデータが拡充することで、4K HDRの映像と、64メガピクセル相当の写真を同時にキャプチャーすることもできる。また960fpsのスローモーション映像もサポートする。

 画像ファイル形式ではHEIFをサポート。動的な深度マップを写真とともに保存できるようになる。

 これにより、撮影後、被写体にあわせてボケを追加する、といったこともできる。またマルチフォーカスでは従来よりも早く、多くのポイントにフォーカスを当てられる。

動画撮影でDolby Vision

 Snapdragon 865では、動画撮影で、Dolby Vision For Video Captureをサポート。

 すでに映像再生では、HDR再生を楽しめるようDolby Visionが採り入れられてきたが、今回、スマートフォンでの動画撮影でも、チップセットレベルで対応することになった。

デスクトップレベルのゲーミング性能

 5G時代にはクラウドゲーム用途のニーズが高まると目される中、Snapdragon 865は、ディスプレイへの映像処理の改善もはかった。

 ゲーム関連のスペックは、Snapdragon elite gamingというブランド名のもとで実装される。

 90fpsのゲーミングモードだけではなく、120fpsのゲーミングにも対応。さらにはディスプレイ表示で144Hz駆動もサポートされ、より滑らかな映像表現のもと、ゲームを楽しめるようになる

 HDRでの表現や、別記事で先んじてご紹介したGPUドライバーソフトの更新など、常に最適な映像表現ができる環境を提供する。

セキュリティ機能も向上、スマホに免許証も

 Snapdragon 865は「セキュアプロセッシングユニット」が搭載されている。顔認証に使う写真など、個人のプライバシーに関わるデータは、クラウドへは送信されず、セキュアユニット内で格納されることになる。

 セキュアユニットの活用例として、グーグルと協力して、Androidで専用のAPIを使い、電子IDやスマートフォンへの運転免許証を格納できるようにするコンセプトが披露された。警察官の持つスマートフォンに、電子ID/電子運転免許証を読み取るリーダー機能が用意される。

 担当者によれば、FeliCaで用いられているセキュアエレメントの考え方と似ているという。運転免許証やIDカードを扱う際には、公的機関との連携が前提になる仕組みとして開発が進められていく方針。グーグルとの連携は良い兆しと見ているという。