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総務省「モバイル研究会」、中間報告書の骨子を公表

 総務省は、「モバイル市場の競争環境に関する研究会」(モバイル研究会)の第9回を開催した。

「モバイル市場の競争環境に関する研究会」第9回

 会合は中間報告に向けて議論の流れや意見をまとめる段階に入っており、今回は総務省側がまとめた「中間報告書骨子(案)」をベースに、構成員が議論を行った。同骨子案は総務省のWebサイトでも公開される予定。なお次回の第10回は、“骨子”が取れた「中間報告書(案)」について議論される予定になっている。

 第8回までの議論で各論点の討議が行われてきたこともあり、骨子案はそれらをまとめた形。第9回では構成員からの意見も補足的なものが中心となった。

 骨子案では、第1回で提示されていた論点案に沿って、料金などユーザーに直接関連する内容と、接続料など事業者間の競争環境に関する内容の大きく2つが取り扱われている。

 ユーザー向けでは、2年契約などでの総額表示をガイドラインに盛り込む「利用者の理解促進」、データ消去など中古事業者の自主的なガイドライン作成を評価した「中古端末の国内流通の促進」、ユーザーが支払う料金をより実態に近い状態で総務省が把握する「利用者料金等のモニタリング」などについて、方向性が示されている。

 事業者間の競争環境に関する部分では、MVNOがMNOに支払う接続料について、2020年度に適用の接続料(データ通信)から将来原価方式の導入が提案されているほか、MNOのグループ内ブランドの低廉な料金プランについて、MVNOを競争上不利な立場に置いていないか確認を行うとしている。MVNOへの音声卸料金は、透明性や適正性に課題があり、料金を下げる余地があるとされ、実質的な料金水準と卸料金の水準を比較・検証するとしている。セルラーLPWAについてはMVNOでも多様なサービスを提供できるようにするため、L2接続で適正な料金で提供される必要があるとした。

 競争政策と電波の有効利用の両面から、MNOに対して、(MVNOに)ネットワークを提供することにインセンティブを与えるべき、という議論では、周波数割当の審査にあたって、HLR/HSS連携機能の開放など、MVNOに提供する“ネットワークの多様性”の観点を審査に加える方針が示されている。

 全国BWA事業者の二種指定については、現行制度に基づいて指定することとし、総務省において速やかに指定のための手続を開始すべきとしている。同時に、二種指定にある音声通話の条項をBWA事業者は不要とするなどの見直しも行う。

中古端末について

 北俊一氏(野村総合研究所 パートナー)は、中古端末の流通促進について意見した。この論点は、モバイル研究会のこれまでの議論でもあまり深掘りされてこなかったが、「精力的に調べまくった」という北氏は、「これまでは市場性はなかったが、“完全分離”の後は、いよいよ選択肢として中古端末へのニーズが高まる」と指摘。

 一方で、業界関係者の懸念事項として、海外で販売された端末の日本国内での中古流通は、技適の問題があることから「電波法改正も含めて検討してほしい」と要望した。

 北氏はまた、“完全分離”の後では今よりもさらに端末の利用期間が伸び、「修理ニーズが高まる」とし、関係者へのヒアリングの結果として現在は「登録のハードルがかなり高い」という、電波法が定める「登録修理業者」について、認定や別の方法を含めて、修理業者が増えるような取り組みを検討する必要があるとした。

 大谷和子氏(日本総合研究所 執行役員 法務部長)は、中古端末の事業者が自主的にガイドラインを作成していることに関連し、取り組みを評価した上で、データ消去など安心面も含めてガイドラインが遵守されるのか、「実際には相当難しいことだろうが、実効性を担保する取り組みについても進めてほしい」と要望した。

そのほかの意見

 大谷氏は、音声卸料金が高止まりしている点について「規制がなく、競争阻害性が高まっていることの証左」と指摘。骨子案にある実態把握の後、「どのような制度にするのかを考えていく必要がある」と今後の具体的な方向性が必要とした。

 大谷氏はまた、BWA事業者の二種指定について、「5Gを想定すると、今のままの二種指定では限界がある」とし、現在の二種指定の議論はあくまで4G限定という認識を示している。

 大橋弘氏(東京大学 公共政策大学院・大学院経済学研究科 教授)は、利用者料金、事業者間の競争条件といった全体像について、あるべき姿や、「何が適正で、“競争”のレベルになるのか、あまり議論ができなかった」と振り返った上で、骨子案でもまとめられている利用者料金のモニタリングについて「分析はすごく重要」とし、分析を通じて、「モバイルの競争がどうあるべきか」が見えてくるとしている。

 関口博正氏(神奈川大学 経営学部 教授)はこれに関連し「各社で横並びにデータが出てこないと十分な分析はできない。インカメラ手続き(機密情報が提出拒否に値するかどうか、非公開で当該の機密情報を確認すること)など守秘義務契約を結ぶなどもできる。データの積極的な提出をお願いしたい」と意見している。