インタビュー

「povo」がデータ使い放題を10回分プレゼントする大型施策の狙い——濱田社長に聞く「メイン回線化」の勝算

 KDDIのオンライン専用ブランド「povo2.0」が、大容量の年間トッピングや「24時間データ使い放題」を10回分、提供する大型キャンペーンを発表した。

 メイン回線の通信品質を補完するサブ回線としての需要にとどまらず、近年ではMNP(携帯電話番号ポータビリティ)を利用してメイン回線として乗り換えるユーザーも急増しているという。

 なぜ閑散期とされる6月にこれほどの施策を打って出たのか。18日の記者説明会で、KDDI Digital Life代表取締役社長の濱田達弥氏が囲み取材に応対。主な質疑をお送りする。

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KDDI品質アピールで攻勢、「これまでにない規模で」

――質疑で「6月は契約数の動向が静かだが、今年は成長している」ということだった。あらためて、なぜこのタイミングで説明会を開催するに至ったか教えてほしい。

濱田氏
 個社(個別の企業)についてコメントする立場にはないのですが、6月は少し静かで、これから夏に向かって利用が増えていくタイミングでもあります。トレンドをつかむという意味で6月に取り組むということがひとつ。

濱田社長

 それから、競合他社さんの通信品質に対して「使いにくい」といった声が挙がっていることは事実だと認識しています。SNS上もそうですし、私どもの調査でもそうです。

 そこに対して、何か打って出ようということは(今回の説明会開催に至った)背景にありました。

 そこで、24時間使い放題を10回、新規契約の方に提供し、「KDDIはこんな通信品質ですよ」とお見せする。これまでにない規模でのキャンペーンを打ち出す。そう考えた次第です。

「柔軟性」「適用性」「機敏性」

――今回、キャンペーンの実施とともに月110GBという新しいトッピングが発表された。

濱田氏
 povoのお客様は、いくつかのセグメントに分かれます。

 たとえば、ものすごくハードにデータをご利用されていて、日々、povoをご利用になられる方です。いわばメイン回線としての利用で、その需要がすごく増えている。MNPでの転入も増えています。

 あるいは、どこかの通信回線は解約できないが、通信品質のご都合か、povoもデュアルSIMの1枚としてお使いになられる方です。メイン回線の電話番号やポイントプログラムなどは別回線でご利用になりつつも、サブとしてpovoをお使いの方がたくさん
いらっしゃいます。

――どちらかと言うと、メインを狙いたいのか。

濱田氏
 どちらもです。メイン回線の方だけですと、auや他社さんと同じになると言いますか、固定された月額の利用料になります。

 povoの良さは、0.5GBもあれば、今回発表した月110GBのような、本当に幅広いラインアップです。フレキシブルにさまざまなライフスタイルにあわせたパッケージで、その特徴をなくすつもりはなく、むしろ強化してポートフォリオを増やしていきたいです。

――auの使い放題プランへ乗り換えてもらうことを目指すのか。

濱田氏
 KDDIで提供するau、UQ、povoはそれぞれ異なる価値を提供しています。

 たとえばauブランドでは、au PAY・Pontaポイント・金融サービスなどの経済圏などの価値を享受いただけます。

 一方、これだけ多様化している社会ですので、他社サービスをお使いの方は必ずいらっしゃいます。そこで、povoをお使いいただきつつ。他社の経済圏をお使いでもいいと思っています。

――メイン回線がKDDIで、さらにpovoも契約するという人は、どんな使い方なのか。

濱田氏
 全体の20%程度は、そういう方がいらっしゃいます。いろいろご事情があるのでしょうが、たとえば保護者がauやUQで、お子様は通信量が少ないのでpovoを選ぶですとか。

 2台目のスマホ、あるいはタブレットなどでの利用もあるでしょう。週末のお出かけの際、車のなかでYouTubeなどを流しっぱなしにするので、24時間使い放題のトッピングをご利用になるとか。本当にいろんなパターンというか、ライフスタイルがあると思います。

――他社経済圏の利用を許容するのであれば、povoの支払いでも他社のコード決済に対応すると、ユーザーにとって利便性が上がるのでは?

濱田氏
 面白いですよね。povoならできるかもしれません。やってみたいですね。決済手段は拡充する考えですので、そこに含まれるのもいい。

――ステーブルコインなどもあれば。

濱田氏
 ポイントとステーブルコインが一緒になったりすると面白いかもしれません。

――24時間使い放題と、大容量プランの使い分けはどうか。

濱田氏
 具体的な数値は非開示ですが、大容量プランの利用料は2万円~4万円台と高額です。それを避ける方もいらっしゃいます。

 お客さまの座談会を開催して、使い方をヒアリングすることもしています。

 ご意見をもとに開発を続けており、トッピングのバリエーションも固定化されず、ばらつくという状態が定着している。偏ってしまうとpovoらしさがなくなると思っています。

 povoの良さは「柔軟性」「適用性」「機敏性」です。たとえば機敏性は、スピーディにトッピングや機能をリリースし、パートナーシップもすぐ締結するといったことです。

 柔軟性は、幅広いオプション・トッピングの存在です。お客さまのライフスタイルは本当に異なっていて、それぞれに寄り添ったサービスをご用意できるかを重要視しています。

「povo3.0」の現在地

――以前、povoでは「povo3.0」やホワイトレーベルといったかたちで新たな計画を発表していたが、その進捗は?

濱田氏
 他社さんとの協業には、いくつかパターンがあります。

 ひとつは、povoの機能をそのままパートナー様のアプリやWebサービスに導入するものです。

 いわばミニアプリでしょうか。パートナー様のアプリの中にpovoへの導線があるような形で、SDK(ソフトウェア開発キット)を活用するものです。
 また、パートナー様とクーポンを交換して提供するモデルもあります。

 そのなかで「povo3.0」として打ち出したものは、SDKを用いるようなケースもしつつ、システム上でバンドルするようなパートナーシップです。たとえば2025年は大阪観光局とともに提供した「OSAKA eSIM」は一例ですし、「Japan SIM」もそうです。

――昨年、本誌のインタビューでは「ハイパーパーソナライゼーション」への意欲を示していたが、その進捗は。

濱田氏
 2025年4月に私が、povoを運営するKDDI Digital Lifeの社長へ就任し、ハイパーパーソナライゼーションのほか、AI化を進める「AIナイゼーション(AI化)」、さまざまなパートナーとの協業を進める「ビジネスエンパワーライゼーション」「グローバライゼーション」という4つのキーワードを定めました。

 先述したお話と重複しますが、さまざまなお客さまの考えやライフスタイルがあります。そこにあわせていくことが必須になるでしょう。あわせないと、「自分にマッチしていない」と感じさせてしまうことになる。

 今回の発表では、自動更新である「サブスクトッピング」の容量に、これまでの30GBと5GBに加え、0.5GBを追加しました。

 バリエーションを増やしていくと、アプリ上に全て表示しづらくなりますし、一番良いものがわかりにくくなる可能性があります。そこでAIコンシェルジュ、AIエージェントを使うのがAIナイゼーション(AI化)。サポートでもAIを活用した仕組みを取り入れており、これらは今年、さらに加速すると考えていますし、もっと加速させたいですね。