インタビュー
楽天モバイル「Rakuten Link」スーパーアプリ化の狙い。担当者が語るエコシステム戦略
2026年6月9日 00:00
――現在、どういったミッションに携わられているか教えてください。
渡邊氏
楽天グループのマーケティングディビジョンというところに所属しておりまして、たとえば、楽天のエコシステム全体をどう強化するか、マーケティングの観点から考えて、いろいろな施策を実行することが主です。
楽天グループのエコシステムにおいて、楽天モバイルは非常に重要です。楽天モバイルとそれ以外のサービスとの連動をどう構築していくかといったことも、私の中でかなり大きな比重を占めています。
――マーケティングの観点から、ということでしたが、たとえばどういった施策になりますか。
渡邊氏
ひとつは、お客さまの利用傾向を調査、分析していきます。その上で、実際にお得にご活用いただいている方や、当社に好感を持ってくださっている方たちが、どのような層なのかを分析・理解します。
そして、そういう人たちを増やすために何をしていくのか……ということになりますね。
――楽天モバイルの登場以前は、どういう形だったんでしょうか。
渡邊氏
ひとつはSPU(スーパーポイントアッププログラム)です。たとえば楽天市場で買い物すると、当社のほかのサービスもお得になる。
ただ、SPUを知っていただいたり、実感いただけるタイミングは限られていました。
それが楽天モバイルによって変わりました。
かつては、楽天市場で買い物するときだけ、楽天トラベルを利用して旅行するときだけ、といったものでしたが、携帯電話サービスは日常的にご利用いただくものです。日々のタッチポイント(接点)を軸にできるようになった。
あるいは、コミュニケーションアプリとして登場した「Rakuten Link」を通じ、ほかの楽天のサービスをご利用いただけるようになったことも、かつてとの大きな違いです。
――これまでも、キーパーソンから楽天モバイルのユーザーは楽天市場の利用額が多いといった話はありましたね。
渡邊氏
はい、そういったところにすごく表われていると感じています。
――重視しているKPI(指標)はありますか。
渡邊氏
具体的な数値は非公表ですが、たとえば、楽天モバイルのお客さまが、どの程度、楽天グループのほかのサービスを利用されているか。
あるいは、Rakuten Link経由で、ほかのサービスの利用につながったか、と。
――5月26日には、「Rakuten Link」に関する記者説明会がありました。あらためて「スーパーアプリ化」が掲げられ、Rakuten Linkを経由して、ほかの楽天グループのサービスへ繋げることが紹介されました。このタイミングで説明したのはなぜだったのでしょうか。
渡邊氏
「Rakuten Link」では、企業・店舗が公式アカウントを持てるようになっています。もともと楽天グループの各サービスがそれぞれのアカウントを作ることから始まったのですが、今では、楽天市場の店舗様のアカウントが徐々に増えています。
つまり公式アカウントのような、我々として、「やりたい」と考えていたことを実現するための機能・サービスみたいなものが徐々に揃ってきているので、あらためて紹介の機会を設けたのです。
――1つの機能・サービスにフォーカスする一般的なアプリと違い、いわゆる「スーパーアプリ」は複数の機能をまとめて搭載するといったものを指すことが多いと思います。携帯電話会社という切り口でみると、携帯各社はコード決済アプリがスーパーアプリのような存在です。ライバルと見ている存在や、各社の動きをどう分析していますか。
渡邊氏
明確に競合として意識している存在はない……と実は思っています。
楽天グループ各社からサービスが提供される中で、「Rakuten Link」はコミュニケーション機能を担っています。楽天モバイルのお客さまが、ほかの楽天のサービスに興味を持っていただけるよう、より良い形を目指すことに集中しているわけです。
「Rakuten Link」は、ユーザー同士なら通話・メッセージ無料というコミュニケーションアプリです。多くのニーズをひとつのアプリでいかにカバーするか、という点にフォーカスしています。他社の取り組みをベンチマークして機能の差分を埋めていくという考え方は、今のところ、アプローチとしてあまり採っていないですね。
――そういう姿勢は、最初の頃から、すんなり決まったようなものですか。
渡邊氏
通話・メッセージをメインとした「Rakuten Link」はコミュニケーションアプリとして、日々、お客さまとのタッチポイント(顧客接点)になるわけです。
そしてRakuten Linkをお使いの方の中には、さまざまな楽天のサービスをご利用されている人もいる……ということが、徐々に明らかになってきたのです。そこで、「楽天のサービスの入口になるような形に進化させていこう」という考えがどんどん強くなっていきました。
その上で、「ホームタブ」のような機能を作った方がいいですとか、流れとしてはそういう進化をしてきているかなと思います。
――「Rakuten Link」は当然、楽天モバイルユーザーのためのアプリです。一方、メッセージングやIP電話というアプリは、どのキャリアのユーザーでも利用できるものがあります。メッセージ・通話無料という点はありますが、選択肢として「Rakuten Link」がそういうユニバーサルなアプリになっていくという考え方は、あまり現実味がないですか。
渡邊氏
現時点で、具体的に計画があるかというと、そういうわけでありません。
楽天モバイルのお客さまも増え、そのニーズにどう応えるか、まだ取り組むべきところもあります。はるか未来のこと、となればわかりませんが、現時点では楽天モバイルのお客さまのためのサービスです。
――楽天の各種サービスは、キャリアを問わず利用できます。「Rakuten Link」は、楽天モバイルユーザーのコミュニケーションアプリとは言え、エコシステムへの送客手段という役割からすると、なんだか入口を狭めているようにも見えます。
渡邊氏
もし、「Rakuten Link」を利用できる条件を広げることで、ニーズをきちんとカバーできて、楽天エコシステムをより良い形に持っていけるのであれば、そうしたアイデアは頭から否定するものではないのでしょう。ただ、今の段階では……と。
――「経済圏とスーパーアプリ」という観点では、ほかの経済圏のアプリはキャリアを問わず利用できます。経済圏競争という面で、ほかのアプリに押されているという懸念はありませんか。
渡邊氏
今の我々のアプローチは、まず楽天モバイルを使っている方と、より良い形でエコシステムを活用していただきたいというものです。
そのひとつが「Rakuten Link」の進化。また、すでに楽天のサービスを利用されている方が、楽天モバイルを契約することのメリットをいかに高めるかという点もあります。
楽天エコシステムにおけるコマースと、フィンテック、たとえば楽天銀行と楽天カード、楽天銀行と楽天証券といった組み合わせで利用いただくと、金利がアップしたり、証券を便利に使えたりするといった連携を進めています。
つまり「Rakuten Link」は、楽天モバイルにフォーカスしている取り組みで、それ以外のサービスも連動・連携を進めているということになります。
――楽天カードも楽天証券も、利用者数は多いですから、そうした方針になるのはよく理解できます。携帯電話会社間の競争に限ると、他社がさまざまな施策を打ち出しても、あまり影響を受けないのでしょうか。
渡邊氏
楽天グループの中で言うと、楽天モバイルはグループ内では新しいサービスです。その前に、楽天市場、フィンテック系といったサービスをご用意していました。
どちらかと言えば、既存の楽天内のサービスのご利用者さまに対し、いかに楽天モバイルをお使いいただくようにするかが、ひとつの挑戦だと思っています。
――今夏には、NTTドコモが銀行サービスの本格展開を打ち出すと宣言しています。彼らの新施策が進めば進むほど、楽天モバイルにとっては、ドコモから楽天モバイルへ切り替える可能性が低くなるのかなとも推測していたのですが……。
渡邊氏
はい、そうした取り組みの影響を受けることは当然あり得ます。一方で、楽天のエコシステム自体のご利用者さまは一定数いらっしゃいます。満足度を高め、ほかの楽天のサービスもどんどん使いたいと思っていただけるようにするにはどうするか、という意識のほうが強いです。
――通話アプリに送客の要素を入れると、どうしてもUI/UX上のノイズとなり、不満に感じるユーザーも出てくると思います。ユーザビリティと送客の難しいバランスをどう設計されているのか、そして、ユーザーからの厳しい声に対してどのようなサイクルで改善を図っているのでしょうか。
渡邊氏
まさにおっしゃる通りです。どう実現するかに取り組まなければなりません。
「Rakuten Link」上で、お客さま自身の興味があるサービスや商品であれば、ようやく(楽天からほかのサービスへ)アクセスしていただけると思っています。
そこで、どのサービスを利用されているのか、どんな公式アカウントをフォローされているのか……もちろんお客さまの許諾を得た上で、そうしたデータを把握し、「どういうコンテンツを、Rakuten Linkのどの面でお見せするか」といった視点がかなり重要だと思っています。実際に、お客さまの反応がデータとして残ります。お知らせなどの反応に対して、どう改善すべきか考えていく。
また、UI/UXを変えた時に、いわゆるユーザーインタビューを定期的に実施して、反応や意見をいただくこともあります。最初から100点は難しいでしょうから、ご意見をいただきながら、徐々に改善していきます。
――バナーのサイズや配置を変えるですとか。
渡邊氏
そうです。たとえば「ホームタブ」を設置したのも、そういった改善の取り組みの結果のひとつです。UI/UXも何度か変更しており、今は画面の一番上に大きめのものがスワイプできるような形で表現していますが、いろいろと試しています。
――今後の展開についても教えてください。Rakuten Linkの新機能みたいなものですとか、エコシステムの連携といった点で、ヒントと言うか、「今、考えていること」といったことはどうでしょうか。
渡邊氏
「Rakuten Link」では、楽天グループのエコシステムの入口たる機能を、より良い形になるよう提供していきたいですね。
たとえば、連携として最初に始まったのは、楽天市場のSPU(スーパーポイントアッププログラム)。楽天モバイルを契約すると、楽天市場のSPUで還元倍率がアップするというものです。
最近で言うと、楽天モバイルユーザーであれば、楽天銀行の普通預金の金利が上がるというものもあります。
そういった“モバイルとの連携”はもっといろいろと模索したい。キャンペーンがあるかもしれませんし、プログラムになるかもしれません。そうした施策を知っていただく場として、「Rakuten Link」が進化していければいいなと思います。
――ありがとうございました。









