インタビュー

まもなく「Galaxy S23」シリーズ発売! サムスンモバイル部門リードのTMロー氏インタビュー

 サムスン製のハイエンドAndroidスマートフォン「Galaxy S23」シリーズが、日本国内で4月20日に発売される。

 今回、サムスン電子本社でモバイル部門をリードするTM Roh(ティー・エム ロー)氏が来日、グループインタビューに応えた。

サムスン電子本社のDX部門 Mobile eXperience事業部長・社長 TM Roh氏

 ロー氏は、国内での「Galaxy S23」シリーズの予約状況が先代モデルの「Galaxy S22」を上回り、カラーバリエーションもまんべんなく選ばれていると説明。

 そして、「最近、日本のスマートフォン市場の需要が減り続けており、難しい時期ですが、良い製品をよく見極めて必要なものへの投資を惜しまない日本のお客様に、Galaxy S23シリーズを支持していただけると確信している」と自信を見せた。

Galaxy S23シリーズの開発で重視した「4つ」の機能

――最近ではAIなどへの注目も高まっているが、Galaxy Sシリーズの進化はどういった方向性なのか。

ロー氏
 基本的には、お客さまがもっとも望んでいる機能、ニーズにあわせて、革新的な機能で新たな体験と価値を提供できるという方向で発展させたいと考えています。

 かつてとの違いとして、スマートフォンは今や、ハード、ソフト、AIなどのアルゴリズムが別個に動作するのではなく、それらが一体となって有機的に動作し、より良い性能、より良い経験を提供する方向に発展しています。

 今回の「Galaxy S23」シリーズもまた、企画段階~開発~生産と、グローバルで消費者のニーズや技術トレンドを分析し、調査・分析することからスタートしたのです。

 その結果、「4つの機能」へのニーズがあると考えています。

 ひとつ目は、カメラ機能です。「Galaxy S23」シリーズでさらに強化した部分でもありますが、夜間の撮影、さらに高品質になった動画を含めた体験を開発しています。

 ふたつ目はゲームを軸とした性能と、それを下支えするバッテリー性能です。

 発表会でもご紹介しましたが、クアルコムによるGalaxy専用のチップセットを搭載するなど、努力を重ねています。

 ハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズムのいずれも一生懸命、研究して努力して、今回最高の性能を実現できたと考えています。

 みっつ目は、グローバルで消費者から求められる接続性、そしてUX(ユーザー)の完成度です。具体的には、GalaxyシリーズのユーザーインターフェイスであるOneUIの高度化です。

 最後は、特に若い世代が関心を持っている持続可能性です。環境に優しいリサイクル素材を用いているほか、アップグレード期間の延長、などを重視しました。

SシリーズとZシリーズの違い

――あらためてGalaxyのハイエンドモデルのラインアップについて教えてほしい。今回登場するSシリーズのほかに、フォルダブルのZシリーズがある。Sシリーズではどのような特徴を打ち出していくのか。

ロー氏
 2012年、私たちはNoteシリーズを開始しました。その後、スマートフォンでの大画面が受け入れられたと思います。これもひとつのイノベーションを作ったと思います。

 4年前の2019年、フォルダブルという製品カテゴリーへ新たに挑戦しました。「大画面が欲しい、それでいてコンパクトに持ち運べる」というニーズに対応するもので、一般的なスマートフォンのような体験を提供しながらも、コンピューティングに近い大画面を実現したわけです。

 こういた取り組みは今後も続けていきますが、実はそれ以上に重要なのは、私たちサムスン、Galaxyが提供している性能・機能で、ユーザーが求めており、技術のトレンドに合致しているということです。

 Sシリーズは、初代モデルから、最高のカメラ、最高のディスプレイ、最高の処理能力、そして安定して利用できる性能という店を核心的な価値としており、今後も提供し続けていきます。Zシリーズとともに2つのプレミアム製品それぞれの方向性で継続的に発展させていくつもりです。

――あらためてフォルダブルであるZシリーズの位置づけを教えてほしい。競合他社からフォルダブル製品が登場する場合、どういった点がGalaxy Zシリーズのアドバンテージになるのか。

ロー氏
 私たちのプレミアム製品は、SシリーズとフォルダブルのZシリーズです。今後も継続するでしょう。

 フォルダブルについては、ニーズの調査を継続的に実施しており、満足度を高める商品開発を続けます。

 これまでの調査結果としては、フォルダブルでは、ほか(のフォームファクター)よりも大画面へのニーズに応えていると思っています。

 大画面でありながら、折りたたんだときにコンパクトに持ち運べるよう、「もっと薄くて軽くしてほしい」という要求も非常に多いです。

 大画面で楽しめるゲーム、快適に遊べる性能へのニーズもとても大きい。

 そこで、2022年に発売した「Galaxy Z Fold4」でそうしたニーズを満たせるよう開発を進めました。これからも、そうした点を優先したいと考えています。

 一方で、カメラに対するニーズが高いことも認識しています。大画面と両立する携帯性、薄くて軽く、処理性能などを発展させながら、カメラ性能もまた、消費者の方が望むレベルに達するための努力を継続的に進めています。

 最近のカメラに対する性能については、昔とは違って、カメラセンサーやレンズモジュールなどのハードウェアに限定されるのではなく、
アルゴリズム、AI技術といった点が、カメラ性能と画質に対し、非常に多くの影響を与えています。

 ハード・ソフト・アルゴリズムといった技術を総合して、カメラに対するニーズを満たせるよう努力します。

 また、Zシリーズのアドバンテージはもうひとつあります。

 4年前、フォルダブルというカテゴリーの製品を始めて投入したわけですが、単なるハードウェアの提供だけではなく、「フォルダブルの使いやすさ」を実現するために、アプリを最適化できるよう戦略的なパートナーと多くの努力を重ねてきました。

 フォルダブルスマートフォンで、ユーザーの方々が新しい体験をする際、ハードだけではなく、ソフトウェア、アプリがどれだけ完璧に動作するか、どれだけよくマッチするかが重要でしょう。

 Samsung Galaxyとしては、初代モデルから、さまざまな戦略パートナーとのオープンな協力を通じて最適化されたコンテンツ、サービスを追求しています。

 誰よりも完璧に早く、早期に消費者に提供できることが私たちの強みであり、差別化です。日本のお客さまのためにそうした姿勢で提供することも我々の強みです。

高騰する部材、それでもハイエンドに取り組む理由

――世界的なインフレや、日本では円安傾向が続いたことを踏まえ、S23シリーズの開発にあたり、価格面でどのような取り組みをしたのか。

ロー氏
 ご指摘の通り、昨年からグローバル市場のダウントレンド、原材料価格の上昇、景気の不確実性などから、多くの調査機関がグローバルでもスマートフォン市場の需要減少が予測しています。

 私たちが「Galaxy S23」シリーズを企画・開発し、発売の準備をする一方で、そうした調査を進めましたが、市場は厳しい状況にあります。

 しかし、新型コロナウィルス観戦料による影響を経て、消費者のトレンドとしては、「スマートフォンの使用時間が長くなり、データ量がさらに増え、特にその過程でハイエンド・プレミアムモデルの需要は維持される、あるいは大きくなる」ということが分かったのです。

 消費者の方が、より賢く、自分にとって価値があり、さまざまな使い方を実現してくれるプレミアム製品を購入したいと考えていることがわかったわけです。

 そこで、サムスンとしてもきちんと準備を進めて発売すれば、日本をはじめとするグローバル市場で良い結果があると期待しています。

――日本市場では、ハイエンドモデルの売れ行きが鈍っているが、どう考えているのか。また、Galaxyシリーズのパソコンなどエコシステムを構成する製品を今後、日本市場でどう扱っていくのか。

ロー氏
 日本市場は、グローバルのモバイル産業からすると、5~6位に位置する大きな市場です。そして、品質や性能を重視するユーザーのニーズを考えると、非常に素晴らしい、重要な先進市場だと思います。

 日本でのニーズを満たさねばなりませんし、日本で成功しなければ、グローバルできちんと成功できません。

 その特徴を見ると、まだ、プレミアムセグメントのシェアが非常に大きいです。

 「Galaxy S23」シリーズ、そしてまもなく売する「Galaxy A54」などを通じて、多様な選択肢を用意することが私たちの方向性です。

 日本では、昨年、SIMフリーモデルを発売しました。Amazonという販売チャネルを通じて提供したものですが、SIMフリーモデルも、最終的に日本の消費者が望む選択肢を提供する観点から、SIMフリーモデルも継続的に供給することについて、早期に検討します。

 悩ましい点は、日本市場は、日本の携帯電話事業者の方々が、非常に良い(購入)プログラムを用意されていることです。SIMフリーモデルが、海外のほかの国と同じように成功できるか、まだまだ悩んでいます。

 日本の通信事業者を通じた協力も強化しつつ、新しい選択肢を強化するという2つの方向を進めたいです。

 エコシステムデバイスについてはですが、日本市場はIT技術が発展しています。ノートパソコンは良い製品があり、要求レベルも非常に高いということを理解しています。

 そのことから、私たちが消費者の方々を満足させるための準備が必要です。その時期などを考えて、決めていきます。

 一方で、私たちの強みは、フォルダブルデバイスの際にご説明したようにオープンな協力体制です。私たちのノートパソコンだけではなく、Windows OSを基盤とした多様な協力、そしてChromebookと連携するプログラムも実装されています。

 今後も継続的に発展させていくので、日本の消費者の方が、Samsung Galaxy製品とWindows、Chromebookを一緒に使っていただいて、不便がないよう発展させていきたいですね。

Samsung Galaxyへの変化と日本での取り組み

――Sシリーズに先駆けて、Galaxyブランドのサービスやアプリがサムスンブランドに切り替えられた。

ロー氏
 Galaxyでは、日本市場には10年前から取り組み始め、意外性を高めながら、お客さまの満足度を高めるために取り組んできました。しかし、まだGalaxyブランドの認知度や、マーケットシェアは、日本のお客さまが満足するレベルには達しておらず、もっと努力しなければなりません。

 このような点を改善するために、私たちサムスン内部、そして主要なパートナー各社といろいろと話をしてきたのです。

 昨年を含む過去3年間、グローバルで展開するブランド力調査による指数で、「サムスン」というブランドは世界5位を3年間、維持してきており、そのブランド価値は少しずつ少しずつ
上昇してきました。

 今回発売する「Galaxy S23」シリーズを機に、日本のユーザーへ私たちが近づき、もっと知ってもらうために、市場調査や社内外との議論を重ねて、「Galaxy」から「Samsung Galaxy」へ変えることにしたのです。より多くの方に知っていただけるための努力やマーケティング活動をさらに強化していきます。

――日本の部品サプライヤーとの取り組みをどう考えているのか。また、アップル製品のシェアが大きな日本市場で携帯電話会社に求めることを教えてほしい

ロー氏
 Galaxyシリーズの成功において、日本の戦略的なパートナー各社、部品供給企業との協力やサポートは欠かせないものです。それらがなければ今のような競争力はなかったでしょう。

 Galaxy Sシリーズでは、初代モデルから現在まで、日本のパートナー各社と努力しており、多くの新しい技術と新しい部品に対する先行的な研究や議論、協力をしています。

 たとえば、Sペンは、日本のワコムというパートナーと10年以上の長いパートナーシップによるものです。毎年、こうしたハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズムを継続して発展させながらモバイルイノベーションをリードしてきたと自負しています。

 Sペンだけではなく、カメラセンサーや、内蔵されるさまざまなセンサーなども多くの協力で支えられており、今後もその関係は発展していくでしょう。

 日本の携帯電話会社との協力については、長い期間、多くの支援を受けてきました。

 私たちが日本で成功するためには、日本の消費者と市場をよく理解し、それに合った製品とサービスと機能を提供しなければなりません。

 日本の主要パートナーや携帯電話会社こそが、日本のユーザーの方々をよくご存知であり、私たちとの協力はさらに強化する方向で、話し合いを続けています。

 20日にいよいよ「Galaxy S23」シリーズが登場します。S23シリーズは、今後のSamsung Galaxyにとって、日本での成功において大変重要です。