インタビュー

UQが新料金プラン「コミコミ/トクトク/ミニミニ」を提供する理由は「ahamo」と「楽天モバイル」? その考えを聞く

 KDDIと沖縄セルラーは、「UQ mobile」の新料金プランとして、「コミコミプラン」「トクトクプラン」「ミニミニプラン」を発表した。いずれも6月1日に提供がはじまる。

 これまでUQでは、「くりこしプラン +5G」として、3GB(月額1628円)、15GB(同2728円)、25GB(同3828円)という3プランが用意されていた。一方、新プランは20GBで10分通話定額を含みつつ月額3278円となる「コミコミプラン」、段階制の「トクトクプラン」、4GBという「ミニミニプラン」が用意されることになった。

 従来のプランは容量の違いで3種類だったが、今回の3プランはそれぞれ性格の異なる内容に仕上げられている。はたしてどのような考えのもとで提供されることになったのか。KDDIパーソナル企画統括本部 副統括本部長の長谷川渡氏に聞いた。

UQの契約件数は800万件弱に

 これまでの「くりこしプラン」はもともと2021年2月に登場したもの。その登場以降、2年あまりで新プランへ切り替わることになったが、契約数は順調に拡大し、最近ではUQ mobileの契約数が800万件弱までにになった。

 2021年といえば、政府がリードするかたちで、携帯各社が新料金プランを続々と投入し、各社からオンライン専用料金プランが登場した時期でもあった。そうしたなかで、UQが強みとしてきたことは「auと同じエリア」と「全国2700以上の店舗」だ。

 一方、アフターコロナ時代、そして5G開始から3年を経た今春、長谷川氏は「環境が変化してきた」と指摘する。

 料金プランをデータ容量で見ると、UQ mobileは小~中容量をラインアップしてきたが、5Gの広がりで動画などの利用が増え、ユーザーの通信量は増加。そしてアフターコロナでふたたび外へ出るようになり、外でスマホを使う機会も増えた。動画コンテンツも充実する状況で、5Gの普及、外出機会の増加があわさり、UQユーザーのデータ利用量は、2020年4月からの3年間で、1.8倍にまで増えた。

 すると「小~中容量」なUQユーザーのうち、あまりスマホを使っていない人の割合は減少。その一方で、動画などを積極的に楽しむ人、そして使うときはがっつり使うといった人が増えた。単に容量の違いだけでは、ユーザーに選ばれなくなると考え「コミコミ」「トクトク」「ミニミニ」という3プランが登場するに至ったのだという。

ライバルは楽天モバイル、ドコモのahamo

 ユーザーに選ばれないということは、競合他社のプランのほうがアドバンテージがあるとも言える。ここで、KDDIが「UQ mobile」のライバルと見据えた2つの料金プランがある。

 どちらも20GBを軸に、ある程度の通話定額が用意されたもの。つまり、ひとつは1GB/20GB/使い放題の段階制で「Rakuten Link」による通話無料を用意する楽天モバイル、もうひとつが5分通話定額のあるNTTドコモの「ahamo」だ。

 そうして6月から提供されることになった3つの新プラン。「コミコミプラン」は20GBだけではなく、利用しきれなかった通信量は翌月へ繰り越せる。また、通話ニーズの9割をカバーするという1回あたり10分までの通話が使い放題となり、月額3278円となっている。

コミコミプラン

 使うときもあれば、使わないときもある、という人に向けて用意されるプランが「トクトクプラン」。1GBまで、そして15GBまでという2段階で区切られており、「コミコミプラン」にはない特典として、自宅セット割か家族セット割を適用できる。

トクトクプラン

 そして「ミニミニプラン」は、4GBで月額2365円。こちらも自宅セット割か、家族セット割を適用でき、au PAYカードお支払い割とあわせれば、月額1078円で利用することもできる。

新プランについて聞く

 発表にあたり、KDDI長谷川氏は報道関係者のグループインタビューに応えた。主な問答を紹介する。

コミコミプランと他社対抗について

――3つのプランが用意されたが、柱は「コミコミプラン」でいいのか。どういった層がターゲットになるのか。

長谷川氏
 はい、20GBで、ある程度スマホの量にも慣れて、いろんなサービスを使われている方がメインのターゲットになると思っています。

 通話定額をつけるかどうかは非常に悩んだところではあるのですが、やっぱり音声通話って、何かあるときに使うと、定額がもたらす安心感が非常に大きい。

 料金の仕組み上、「月末に必要なので別オプションを契約しました」となると、日割りの料金設定のバランスが成立しないのです。

 前月に申し込んでいただければ翌月から適用されますので、シンプルに10分通話定額がありますよ、という仕立てがいいのかなと考えました。

――ahamo対抗となるが、料金だけ見るとahamoより高くなっている。

長谷川氏
 金額だけ見るとその通り。ただ、「ahamo」は(10分ではなく)5分通話定額です。また、オンラインのみです。UQは店頭でも対応できますし、より多くの方にとって気軽に契約いただけるという点をメリットに感じていただければと思っています。

――UQではこれまでも店頭で、端末割引などを含め、さまざまな販売手法が採られてきた。店頭でも積極的にコミコミプランを展開していくのか。

長谷川氏
 はい、そうです。コミコミプランも店頭で、端末セットで新規契約などができるようになります。オンラインだけではなく、幅広くご利用いただきたいというかたちになっています。

――これまでのプランで800万契約弱になったということは、成功した料金プランだったと言えるのではないか。ahamoや楽天モバイルのどういった点が脅威だったのか。何がUQに欠けていたのか。

長谷川氏
 「ahamoのようなプランがUQにあるの?」という疑問に対して、そこで思い出していただけない点が非常にマイナスだと思っています。

 ahamoみたいなものがいい、というときに、選択肢がほかにない。そこにUQにもちゃんとプランがあることで効果があると思います。

――それだけ「ahamo」への認知が高いと見ているのか。

長谷川氏
 オンラインで契約できる料金プランとして、UQで直接、対抗はしていなかったところがあります。いま、(ahamoは)一定の支持を受けているところはあるでしょうし、今後、その存在感が増していくんじゃないのか、と先読みして手を打つ必要があると考え、リニューアルした次第です。

――裏を返すと、UQの料金プランは独自性があるものだったと捉えていた。

長谷川氏
 「くりこしプラン」の設計にも関わっていたので、そう評価いただけるのはありがたいんですが、やっぱりアフターコロナを意識すると、お客様のニーズにあわせていく必要があるだろうと、ということになります。

――「コミコミプラン」を提供するにあたり、より大容量にするといった考えも検討したと思うが、20GBになった理由は?

長谷川氏
 大容量の使い放題は、auで提供している。使い放題になると、具体的な数字は明らかにできないが、数十GBといった利用も珍しくありません。

 一方で、ある程度使うけれど使い放題までは必要ない、といったお客さまもいらっしゃいます。20GBだとちょうど良いと。

 容量を上げて金額を高くするよりは、繰り越し機能を用意することで、20GBでもちょっとした差分を吸収できるようにし、10分通話定額もセットにすれば、「シンプルにリーズナブル」と評価いただけるかと考えたのです。

――従来のプランですと、最大25GBだった。もちろん大容量、使い放題になればauへ、ということもあろうかと思うが、やはり20GBがちょうどいいということになるのか。

長谷川氏
 はい、その通りです。25GB、30GBと刻むより、そのレベルになると、一気に使い放題になるほうが満足度が高いかと思っています。

 これくらいでちょうどいいという、ひとつの基準が20GBかと思っており、今回、UQで主軸として設定した次第です。

――ahamoでは80GBを追加して、合計100GBにできる。「コミコミプラン」でそうした手法をどう考えるのか。

長谷川氏
 我々はオンライン専用の「povo2.0」も用意して、意欲的にさまざまなトッピングを提供しています。

 「大盛り」のようなしくみは、トッピングにとても向いているなと思っていますし、「そこまで大容量ならauの使い放題がオススメ」と考えるところもあります。

 「ahamo」の大盛りのような領域については、何か決まっているわけではないのですが、povoのほうが親和性があるのかなと思っています。実際、トッピングで出してみると、お客さまの反応がダイレクトに売れ行きで現れます。そうした動向も確認しながら考えていきたいです。

――コミコミプランだけ「au Pay カードお支払い割」や「自宅セット割」「家族セット割」の対象外になっている理由は?

長谷川氏
 「コミコミプラン」は、UQの「シンプル」で「お手頃」という性格を忘れないように、と言いますか、「割引後」「割引前」といった表記がないかたちで提供すべくご用意しました。

 そういう意味では、他社への対抗という意味でも必要なプランと考えています。

 一方で、ほかのプランで割引を用意しているのは、お客様のニーズというところがかなりあります。「固定回線とセットになったら安くなってほしい」「家族で入るのだから、何か割引があるよね」といった声にあわせて設計したものになります。

トクトクプランについて

――トクトクプランは1GBと15GBという2段階になっている理由は?

長谷川氏
 基本は15GBで、使わなければ1GBで安くなるといったかたちです。

――1GBと15GBはかなり極端に思えるが。

長谷川氏
 細かく段階を用意するとやはり複雑になります。いろいろあって使わなかった、というときにしっかり安くなるのが「トクトクプラン」ということになります。

ミニミニプランについて

――ミニミニプランは4GBで2365円だが、既存プランの「くりこしプランS」は3GBで1628円。割引前/後どちらも値上げに見える。

長谷川氏
 従来の「くりこしプラン」は、新規受付を停止しますが、新プラン登場後も、継続してご利用いただけます。ミニミニプランへ移行しなければならない、ということではありません。

 データ利用のニーズにあわせてご用意したものでして、ある程度、余裕をもって安心してご利用していただけるということで、4GBにしました。