石川温の「スマホ業界 Watch」

4月20日発売の「Galaxy S23」シリーズで考える、サムスンとユーザーにとっての「SIMフリー」の意義

 サムスン電子は、4月20日に「Galaxy S23 Series」がNTTドコモ、KDDI、楽天モバイルから発売されると発表。例年のごとく、ソフトバンクの名前はなかった。

 「サムスン電子幹部の目の黒いうちはソフトバンクからGalaxyは発売されない」というまことしやかな都市伝説が聞かれるが、いずれにしても、なぜかGalaxyは3キャリアのみという取り扱いとなる。

 個人的にはサムスン電子もそろそろSIMフリーに本気になった方がいいのではないか、という気がしている。

 もちろん、Galaxyにも「Galaxy M23 5G」というSIMフリーモデルが存在するが、どちらかといえばエントリーモデルで、これまでGalaxyが強かった「ハイエンド」から遠い存在だ。

 ここ最近、Galaxyが売れているなかで、シェアを拡大している要因としてAシリーズがあるのだが、とはいっても、GalaxyファンとしてはハイエンドでSIMフリーモデルが欲しいのではないだろうか。

 サムスン電子としては、これまでキャリアにお世話になってきたという背景からSIMフリー市場への本格参入は慎重な構えを見せていたが、時代と市場は変わりつつある。

 確かにサムスン電子という海外メーカーが日本市場でスマートフォンを売って行くにはスペックや機能性のみならず、ブランド力などが重視される。サムスン電子単体で日本で認知を広げるのは難しかったが、NTTドコモやKDDIというキャリアがいて、全国のキャリアショップ網に支えられたことで、ここまで日本でも成功を収めることができた。

 これまで同社は日本市場において頑なに「Samsung」という企業名を使わず「Galaxy」というブランド名を通してきた。

 かつて、日本市場では年配者を中心に韓国メーカーを毛嫌いする傾向があり、Samsungというブランドでは正当な製品の評価をしてくれないということもあり、あえて「Galaxy」というブランドだけで訴求してきた。

 しかし、若者を中心にK-Popや韓流ドラマなど、韓国文化が根付いてきた。東京・原宿にあるGalaxyの旗艦店も、iPhoneを持ったBTSのファンであふれている。

 サムスン電子としては、企業として、SDGsに真剣に取り組んで製品作りをしているというアピールをしたいということもあり、今回のGalaxy S23 SeriesからGalaxyではなく「Samsung」という企業名のロゴを掲示するようになった。

 「Galaxy Harajuku」は、まさにSamsungと我々、ユーザーを直接つなげる接点だ。NTTドコモやKDDI、楽天モバイルといったキャリアの色はほとんどなく、ユーザーがSamsungやGalaxyを意識する貴重な場所と言えるのだ。

 せっかく、このような場所があり、ブランド認知が広がっているのだから、顧客とダイレクトにつながるSIMフリー端末のラインナップをもっと増やした方がいいのは間違いない。

 確かにキャリアの販売網を通すことで、高価なハイエンドモデルも「端末購入プログラム」を通して、実質、半額ぐらいの負担だけで買えるという、ユーザーのメリットがある。
 しかし、こうした端末購入プログラムのせいで、2年後の買取を意識した価格設定にならざるを得ず、各キャリアが海外市場に比べて割高な価格設定にしている感が強いのだ。

 たとえば、Galaxy S23 Ultra 256GBモデルの場合、NTTドコモで19万7670円、KDDIで19万7650円となっている。

 しかし、アメリカのGoogle Fiでは同じモデルが1199.99ドル(約15万9073円)だ。しかも、なぜか回線契約者に450ドルの割引が適用されており、現在、749.99ドル(約9万9420円)で買えてしまうのだ。

 ちなみに、アメリカのアマゾンでSIMフリーモデルが購入できるのだが、こちらは999.99ドル(約13万2561円、114ドルで日本への配送も可能)だ。

 つまり、アメリカのSIMフリー版と日本国内のキャリア版に6万5000円もの差があるということだ。

 当然、為替の影響もある。

 しかし、もし、サムスン電子がSIMフリーモデルを同時に発表、発売し、13万円程度の価格で売っていたら、キャリアに対して抑止力が働き、ここまで高価な値段をつけられなくなるのではないか。

 ちなみに昨年、iPhone 14シリーズが発売された際、iPhone 14 Pro 256GBは、SIMフリー版のApple Storeでの価格が16万4800円なのに対して、NTTドコモは19万8880円、KDDIは20万1925円であった。つまり、iPhoneの場合はSIMフリー版とキャリア版では最高でも3万7000円程度の差となっている。

 iPhoneの場合、キャリアとしてはSIMフリー版の値段を見つつ、他の3キャリアとの競争もあるので、べらぼうに高いという値付けはしにくい。

 一方で、あるメーカーが1キャリアだけにしか供給していないようなスマートフォンの場合、キャリアが値段を自由につけられるので、市場で想定される価格よりも割高な値付けにされてしまうことがある。昨年、「このスペックでなんでこんなに高いのか」とネットで指摘されたスマートフォンのメーカー関係者に話をきいたところ「値段は我々メーカーには決められず、キャリアの意向に従うことになる。今後はそのようなことを回避するため、SIMフリー版の販売も検討したい」と語っていた。

 SIMフリー版があれば、キャリアに一方的に価格を決められることなく、競争の上でスマートフォンの値付けが決まる。

 実際、高価で割引のないSIMフリーモデルがどれだけの数が売れるかは未知数だ。

 メーカーにとってキャリアだけに納入すれば「販売も保守もすべてお任せできてラク」なのは事実なのだが、大事なファンに適切な値段で買ってもらい、ファンをつなぎ止め、さらに支持層を拡大していくという点においてはSIMフリーの存在が必要不可欠になろうとしているのではないだろうか。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。