法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Galaxy S23 Ultra」、2億画素センサーで最強のカメラを追求した一台

サムスン「Galaxy S23 Ultra」(グローバル版)、約163.4mm(高さ)×78.1mm(幅)×8.9mm(厚さ)、約234g(重さ)、クリーム(写真)、グリーン、ファントムブラック、ラベンダーをラインアップ

 2月2日、サムスンはグローバル向けのイベント「Galaxy Unpacked 2023」を開催し、同社のフラッグシップモデル「Galaxy S23」シリーズを発表した。本誌ではすでに速報記事などを掲載しているが、海外で販売されるグローバル市場向けモデルをひと足早く試すことができたので、レポートをお送りしよう。

何に最高峰を求めるのか

 現在、グローバル市場でシェアNo.1をキープし続けているサムスン。その主力モデルとして、十数年、進化を続けてきたのが「Galaxy S」シリーズだ。国内でも2010年にNTTドコモ向けの「GALAXY S SC-02B」を投入して以来、常に高い人気を保ち続けている。

 そんなGalaxyのラインアップにおいて、もうひとつの主力とされてきたSペン対応の「Galaxy Note」シリーズは、2020年の「Galaxy Note20 Ultra 5G」を最後に、「Galaxy S」シリーズに統合され、昨年は「Galaxy Note」シリーズのDNAを融合した「Galaxy S22 Ultra」がSペン内蔵モデルとして、発売された。

 その一方で、新しいスマートフォンの方向性として、一般的にも徐々に認知度が高まっているのが「Galaxy Z Fold」シリーズと「Galaxy Z Flip」シリーズだ。曲げられるという有機ELの特性を活かし、縦方向、もしくは横方向に折りたためる『フォルダブル』という新しいカテゴリーを確立したモデルとして注目を集めている。特に、昨年の「Galaxy Z Flip4」は韓国ドラマの影響などもあり、若い女性にもかなり注目を集めたとされる。

 サムスンとしては主力の「Galaxy S」シリーズに加え、フォルダブルスマートフォンというプレミアムラインを展開することになるが、フォルダブルが新しい方向性や利用スタイルを生み出そうとしているのに対し、「Galaxy S」シリーズはスタンダードなスマートフォンとしての性能を最大限に引き出す方向へ進化を続けるようだ。自分が持つ最高峰のスマートフォンに何を求めるかは人それぞれだが、サムスンとしては2つの主力ラインアップを揃えることで、幅広いユーザーの期待に応えようとしている。

 今回、グローバル向けに発表されたのは、主力モデルの「Galaxy S23」シリーズになる。昨年の「Galaxy S22」シリーズの流れをほぼそのまま継承し、「Galaxy S23 Ultra」「Galaxy S23+」「Galaxy S23」の3モデルがラインアップされる。3モデルはディスプレイ、ボディサイズ、バッテリー容量、カメラ構成などが違うが、ボディデザインは「Galaxy S23+」と「Galaxy S23」がほぼ同じデザインでまとめられているのに対し、「Galaxy S23 Ultra」は昨年の「Galaxy S22 Ultra」同様、「Galaxy Note20 Ultra 5G」の流れをくむデザインを継承している。

背面にはクアッドカメラを搭載。このクリームやラベンダーなど、明るいカラーがラインアップされるほか、オンライン限定カラーも用意される
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子、Sペンの格納部を備える。Sペンは左側の部分を押すと、突起部が飛び出すしくみ
右側面は電源キー、シーソー式音量キーを備える。カメラ部の突起もそれほど大きくない
左側面はボタン類などがない。側面のフレーム部分は従来よりも少し広く、直角に近づいた
画面の解像度は「FHD+」が出荷時設定。「WQHD+」も選べるが、バッテリー消費が増える
「Galaxy Note」シリーズから継承したSペンに対応。ペンを取り出せば、おなじみのメニューが表示される
本体下部にはピンで取り出すタイプのSIMカードトレイを装備。nanoSIMカードを表裏に1枚ずつ装着可能
SIMカードのメニューにはデュアルSIMのほか、eSIMのメニューも用意されている

 カメラの仕様については、「Galaxy S23+」と「Galaxy S23」が従来モデルの仕様をベースにしながら、セルフィーカメラや画像処理エンジンを進化させているのに対し、「Galaxy S23 Ultra」はGalaxy初の2億画素イメージセンサーを採用したクアッドカメラを搭載し、Galaxy史上最高峰のカメラを実現しようとしている。2億画素イメージセンサーは他社製品でも搭載例があるが、複数のピクセルを1つのピクセルとして使うピクセルビニングにより、暗いところでも明るく写真や動画が撮影できるというアドバンテージを持つ。従来の「Galaxy S22 Ultra」も非常に優れたカメラ機能を搭載していたが、さらなる高みを目指そうというわけだ。

 ちなみに、今回試用した「Galaxy S23 Ultra」は、グローバル市場向けに販売されるモデルであるため、総務省が定める「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」に登録のうえ、試用している。今後、国内版が発売されたとき、アプリや各機能などの内容が異なる可能性も十分あり、今回は外観やカメラ、基本的な操作などについて説明する。国内版については、正式な発表後、実機を入手次第、レポートをお送りしたい。

フラットに仕上げられたボディ

 まず、外観からチェックしてみよう。前述のように、「Galaxy S23」シリーズは従来の「Galaxy S22」シリーズに引き続き、大きく分けて、2つのデザインで仕上げられている。

 「Galaxy S23 Ultra」は上下面をスパッと切り落としたような形状に、わずかにラウンドさせた側面をアーマーアルミニウム製フレームで構成する。「Galaxy Note」シリーズから受け継いだSペンを格納しながら、内蔵バッテリーのスペースを確保するため、こうしたデザインにまとめられているようだ。昨年の「Galaxy S22 Ultra」と並べると、一見、同じような形状に見えるが、前後面ともに、フラットな部分が拡がり、左右側面の湾曲した部分もかなり狭くなり、全体的に見て、フラットなデザインに近づけられてきた印象だ。サイズは「Galaxy S22 Ultra」に比べ、幅が0.2mm、高さが0.1mm大きくなり、重さは5g増の234gとなっている。微妙な差ではあるが、左右側面の仕上げがややフラットになったこともあり、従来モデルのケースなどは流用できない。

「Galaxy S23 Ultra(グローバル版)」(左)と「Galaxy S22 Ultra(au版)」(右)。パッと見たところ、ほとんど外観の違いがわからない

 一方の「Galaxy S23+」と「Galaxy S23」は本体側面の周囲をのアーマーアルミニウム製フレームで囲み、フラットな背面とディスプレイで挟み込むようなデザインを採用しているが、従来モデルからカメラ部周囲のパーツが変更され、「Galaxy S23 Ultra」と同じような円柱状のカメラが並ぶデザインに仕上げられている。

「Galaxy S23 Ultra(グローバル版)」(左)と「Galaxy S22 Ultra(au版)」(右)の背面。側面のフレーム部分の形状が違うため、本体の角の部分が違う
「Galaxy S23 Ultra(グローバル版)」(上)と「Galaxy S22 Ultra(au版)」(下)の側面部分を底面側から撮ったところ。側面部分の形状がわずかに違うため、手にしたときの印象も少し異なる

フラット部分が拡大した6.8インチディスプレイ

 ディスプレイは従来に引き続き、6.8インチDynamic AMOLED(有機EL)ディスプレイを搭載する。対角サイズは同じだが、ディスプレイそのものの仕上がりは変更され、従来モデルよりも左右両端の湾曲部分がより直角に近づいた形状になり、フラット部分のエリアはさらに拡大している。

 ガラスはGorilla Glass Victus2を採用する。前後面のガラスは再生ガラスを含めて製造されていることが明らかにされたが、今回試用した限り、ディスプレイの発色などもたいへんきれいで、再生素材を使っているような印象はまったく受けなかった。サムスンは本製品だけでなく、多くの製品で再生素材の利用をはじめているが、昨今の環境保護などの流れを鑑みると、非常に重要な取り組みであり、今後もぜひ継続してほしいところだ。同時に、ユーザーもこうした取り組みを理解し、評価していく必要があるだろう。

 ディスプレイのリフレッシュレートは表示するコンテンツや利用状況に合わせ、1~120Hzの範囲で自動的に調整される。解像度も同じくWQHD+(3088×1440ドット表示)が最大だが、出荷時はFHD+(2316×1080ドット)表示が標準で設定されており、WQHD+表示に切り替えると、バッテリー消費は増えることになる。

 バッテリーは5000mAhの大容量バッテリーを内蔵しており、サムスンによれば、最大26時間の動画連続再生を可能としている。ちなみに、「Galaxy S23+」と「Galaxy S23」はどちらも従来モデルに比べ、バッテリー容量が200mAh分、増えており、よりロングライフに利用できる見込みだ。

 生体認証はディスプレイ内に超音波式指紋センサーが内蔵され、画面ロック解除やWebサイトにログインするときの認証に利用できる。認識のレスポンスは良好で、ストレスなく使うことができた。サイトへのログイン情報などは「Galaxy Pass」アプリで保存しておくと、指紋認証のみで入力することが可能だ。

 インカメラを利用した顔認証にも対応する。複数の顔データを登録して、より精度を高められるようにしたり、顔認証時に画面を明るくして、顔を認識しやすくする設定なども用意される。顔認証は指紋認証に比べ、セキュリティが低いが、「目を開いているときのみ認識」をオンにすれば、寝顔でのロック解除も回避できる。

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyが採用され、RAMは8/12GB、ストレージは256/512GB/1TBのモデルがラインアップされている。外部メモリーには対応していない。

One UIのホーム画面。グローバル版は天気予報アプリが違うため、ちょっと不思議な表現
ホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される
クイック設定のパネルは従来と基本的には同じ。Wi-FiテザリングやWindows連携などはワンタッチで操作できる

2億画素カメラを含むクアッドカメラを搭載

 カメラについては従来に引き続き、背面にクアッドカメラを搭載するが、メインとなる広角カメラは2億画素イメージセンサーを採用する。2億画素イメージセンサーは、国内向けではひと足早くシャオミの「Xiaomi 12T Pro」に搭載されたが、いよいよGalaxyにも搭載されることになった。

 クアッドカメラの構成としては、最上段から順に12MP/F2.2の超広角カメラ(13mm)、200MP/F1.7の広角カメラ(24mm)、10MP/F4.9の光学10倍望遠カメラ(230mm)で、内側の下段が10MP/F2.4の光学3倍望遠カメラ(70mm)となっている。メインで利用するのは2億画素イメージセンサーを採用した広角カメラで、超広角カメラと2つの望遠カメラは基本的に従来の「Galaxy S22 Ultra」の仕様を継承している。

 スマートフォンのカメラに搭載されるイメージセンサーについては、「Xiaomi 12T Pro」のレビュー記事でも少し触れたが、大きく分けて、2つの方向性がある。ひとつはイメージセンサーの大型化で、より多くの光を取り込むことにより、ダイナミックレンジの広い撮影を可能にする。

 ただし、イメージセンサーのサイズが大きくなれば、自ずとレンズも厚くなるため、スマートフォンのようにコンパクトなボディに組み込むことは難しいとされてきた。シャープの「AQUOS R7」や「Leitz Phone 2」などは、こうした課題をクリアすることで、1インチ(1.0型)イメージセンサーの搭載を実現している。

 もうひとつの方向性がイメージセンサーの高画素化だ。画素数が多くなれば、必ずしも高画質になるわけではないが、より高精細な情報を記録できる。その代わり、イメージセンサーのサイズ(面積)が限られているため、ひとつの画素で取り込める光の量が少なくなり、光量の少ない室内では暗くなってしまったり、感度を上げることでノイズが増えるといったマイナス面もある。

 そこで、格子状に並んだイメージセンサーの複数の画素をまとめて使う「ビニング」や「ピクセルビニング」と呼ばれる機能が搭載されている。ビニングを使うことで、より多くの光を取り込めるため、暗いところでも明るく撮影できたり、ノイズの少ないクリアな撮影ができるというメリットが得られる。

 今回の「Galaxy S23 Ultra」の広角カメラに採用されている2億画素イメージセンサーでは、標準時に16個(4×4/16in1ピクセルビニング)をひとつの画素として使い、3000×4000ドットの画像が撮影される。設定を「50MP」に切り替えると、4個(2×2/4in1ピクセルビニング)をひとつの画素として使い、6120×8160ドットで撮影される。ビニングを使わない「120MP」の設定では1万2240×1万4528ドットで撮影される。

 今回は屋外と暗めの室内などで撮影したが、それぞれに若干、明るさに違いがあるものの、晴天下でもクリアな写真を撮ることができた。暗いところでの撮影は明るさを保ちながら、雰囲気のある写真を撮ることができた。

ビニングを使わず、2億画素イメージセンサーをフルに活かした「200MP」モードで撮影。解像度は1万2240×1万4528ドットで撮影される。ビニングを有効にした他の写真よりは少し暗めになる。モデル:るびぃ(ボンボンファミンプロダクション)
2×2ビニングを有効にした「50MP」モードは6120×8160ドットで撮影される。背景の青空なども自然な色合いで再現されている
4×4ビニングを有効にした標準「写真」モードで撮影。同じ構図の他のモードに比べ、明るく撮影できる
ポートレートで撮影。背景がボケて、人物が際立っている
インカメラでセルフィー撮影
室内で横画面で撮影。背景がボケて、周辺部の歪みもほぼなく、きれいに撮影できている
薄暗いバーで撮影。ホットウイスキーの暖かさが伝わる?

 また、今回の「Galaxy S23 Ultra」では[Expert RAW]アプリを利用したアストロフォト(天体撮影)がアピールされている。[Expert RAW]アプリは昨年の「Galaxy S22」シリーズ、一昨年の「Galaxy S21 Ultra」でサポートされているもので、ISOやシャッタースピード、露出などを細かく設定し、イメージセンサーからの情報をそのまま記録する「RAWモード」で撮影することができる。

Expert RAWの天体写真モードではARのように、天体の星座などを重ね合わせて表示しながら、撮影ができる
Expert RAWのアプリはGalaxy Storeからダウンロードできる
Expert RAWの天体写真モードを使い、4分間のハイパーラプスを撮影したが、街中は街頭などで明るいため、今ひとつ

 「Galaxy S23 Ultra」ではこの機能を活かし、より簡単に天体撮影をできるようにしている。実際の操作としては、カメラを起動し、[その他]-[Expert RAW]を選び、左上の星座のアイコンをタップすると、4~10分の範囲で天体をハイパーラプスで撮影することが可能になる。

 よく上空の星空が円形に流れるような天体写真を見かけるが、あれを「Galaxy S23 Ultra」のみで簡単に撮影できるわけだ。撮影した写真は端末で確認できるが、アドビの「Lightroomモバイル版」を使い、さまざまの編集をすることも可能だ。

Expert RAWで撮影した写真はモバイル版「Lightroom」で編集が可能。無料でも編集機能が利用できる
モバイル版「Lightroom」を利用するときは、アドビアカウントでログインが必要。アカウントを持っていない場合は、GoogleアカウントやFacebookのアカウントでもログインが可能

 今回の試用期間中、実際に数回、天体撮影を試してみたが、筆者宅付近は住宅街で明るいこともあり、星が写っているものの、天体写真と言えるほどのものは撮影することが難しかった。また別の機会に星空のきれいな場所で試してみたい。ちなみに、天体写真は端末を手持ちでも撮影できるとしているが、実際には自撮り棒のような端末を固定できるものを用意し、三脚などに立てて撮影した方が良さそうだ。

Galaxy史上最高峰のカメラを搭載した期待の一台

 スマートフォンが完成の域に達し、機能的にも飽和状態と言われることも少なくないが、世界のスマートフォン市場でNo.1のポジションを確保し、市場をリードしてきたサムスンは、フォルダブルデザインで新しい方向性を指し示す一方、主力である「Galaxy S」シリーズもしっかりと進化を続けている。

 今回の「Galaxy S23 Ultra」はかつての「Galaxy Note」シリーズの流れを継承したモデルで、スタンダードモデルの「Galaxy S23+」と「Galaxy S23」に搭載されているものをベースにしながら、「Galaxy S」シリーズとして、最高峰の性能を追求したモデルになる。なかでもカメラはGalaxy初となる2億画素のイメージセンサーを採用し、天体写真という楽しみ方も提案している。

 本稿でも触れたように、撮影する環境に左右される面もあるが、旅先などで美しい風景といっしょに、満天の星空を撮影するのも楽しそうだ。従来モデルから継承したユーザビリティをはじめ、Sペンでの手書き入力やリモート操作など、実用面を考慮した機能も数多く搭載されており、非常に満足度の高い製品であることは間違いない。

 気になるところとしては、国内向けの販売と価格だが、昨年の「Galaxy S22 Ultra」と「Galaxy S22」が4月に発表されたことを考えると、おそらく今年も同じタイミングで登場することが期待される。価格もグローバル向けの価格設定があまり変わらないことから、同じ程度か、為替レートや部材高騰の影響で若干の値上げということになると予想している。国内向けの正式発表を待ちたいところだが、今回試用したグローバル版は東京・原宿の「Galaxy Harajuku」に展示されており、実機を試すことができる。ぜひ、一度、実機を手に取って、その完成度の高さをチェックしてみていただきたい。