インタビュー

ソフトバンク榛葉副社長インタビュー、「5G時代の新生活スタイル」に向けた施策の考えを聞く

 ソフトバンクは14日、「SoftBank Air」5G対応や「5Gパケ止まり対策」、「Pixel 6」シリーズの発売などを発表した。

 多岐にわたる発表となった今回、プレゼンテーションに登壇した同社代表取締役副社長の榛葉淳氏は、そのテーマが「New Lifestyle with 5G」、5G時代に向けた新たな提案群と説明する。

 本誌では発表会直後に榛葉氏へインタビューする機会を得られた。限られた時間ではあったが同社が、どのような考えのもと、ユーザーに5G時代の新たな体験を届けようとしているか聞いた。

SoftBank Air

――発表会を終えて、本誌でもその内容をお伝えしていますが、このインタビュー開始時点ですと、「SoftBank Air」の記事がもっとも読まれています。市場環境としては、8月下旬、NTTドコモが「home 5G」の提供を開始したところですが、あらためてソフトバンクのアドバンテージを教えて下さい。

榛葉氏
 宅内向けルーターでは、ソフトバンクは7年前からずっと積み重ねがあります。やはり本家本元として負けないようにしたいという思いがあるんです。

榛葉氏

 そしてウィズコロナ時代ということで、自宅のブロードバンド環境は今、見直されている状況です。

 お客様が見直すタイミングでありますから、我々にとっても追い風と言えます。ライバルが増えることで、競争が激しくなる面はありますが、興味を持たない方も、興味を持っていただけるようになる。

 その中で我々が多くのシェアを獲得できればと思いますし、むしろいいタイミングかなと捉えています。担当の佐々木からもご回答しますね。

佐々木一浩氏(ソフトバンク常務執行役員)
 ドコモさんの「home 5」が登場して、私どもも注意深く見守っております。現時点では、大きな変化がある、ということではないですが、予断を許さずに見ていこうと。

 ワイヤレスブロードバンドを提供する際、ソフトバンクが非常に重視している点は「安定した品質をどう実現するか」です。

 電波は、やはり“気まぐれ”です。建物の位置などその日によって状況が変わります。携帯電話と固定での大きな違いとして、「携帯電話は動ける」という点なんです。

 一方、宅内向けのワイヤレスブロードバンドでは、家の中に動かさず利用していただく。こうしたデバイスの性質を踏まえ、品質をいかに出すかが非常に重要で、なおかつ難しい。

 我々も7年前からいろいろと対応し、お客様からの声をしっかり受けて勉強してるところも数多くあります。そうした点を活かして安定した品質を出す。ドコモさんがどう品質を実現させるか、というところもありますが、絶対に負けたくないですし、負けられないですし、アドバンテージを出せるとも思っています。
 一例として、今回、私どものデバイスでは、アンテナが実は8本、内蔵されています。さまざまな角度から届く電波のうち、感度のよいアンテナを4本常に選んで、より良い電波状況でご利用いただけるような技術を取り入れています。

 それから「3日間たくさん通信されたら規制をかける」という発想は取り入れておりません。常に使いたい時に、使っていただける。

 そうしたサービス品質を実現するためには、ネットワーク構築の投資計画の打ち方も関連してきます。いわば総合力で品質をきちんと出して、「ソフトバンクのほうがいいね」と言っていただけるように取り組んでいます。

料金面での取り組み

――前日の9月13日、KDDIがオンライン専用料金の「povo」で新たな料金体系を発表しました。これまでにソフトバンクでは、「LINEMO」で月額990円の3GBとなる「ミニプラン」や、ワイモバイルでの繰り越し機能などが発表済みでしたが、14日の発表会に限ると料金面での発表はありませんでした。料金面では、どのような考え方なのでしょうか。

榛葉氏
 ソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOという3つのブランドをご用意する中、7月にLINEMOで「ミニプラン」を発表しました。3GBで月額990円です。昨日のKDDIさんの「povo」もそれに近いような形で発表されたかもしれませんが、3GB/990円で5Gを楽しんでいただけるようになっています。

 そしてソフトバンクブランドでは、「メリハリ無制限」は使い放題で7238円です。そしてSoftBank Airもあり、一緒にお使いいただけると1000円引きになります。

 家族向けの割引も、その定義は、同居されている、あるいは婚約者であるなど、お客様に寄り添った形での定義で提供しております。

 そして、具体的な数字は発表してないんですが、実は、ソフトバンクの「メリハリ無制限」ユーザーの大多数は、固定通信とセットでお使いなんです。

 すると、新みんな家族割、おうち割を組み合わせると、「メリハリ無制限」が月額4928円になります。ここが一番訴求していきたいポイントになるのです。

 もちろんそうした料金はいずれも発表済みのものですから、今回の発表会では新たな点がないという指摘かと思います。そこは、常にお客様と向き合って検討していくのですが、「本当に料金だけなのか」と言う議論もあります。

 今日の発表会では、5Gのエリア品質の取り組みや、新機種の販売、「スーパーPayPayクーポン」などをご案内しましたが、やっぱり「もっと便利」といった点もしっかりと提供していくべきじゃないか。

 「◯GBで◯円」も大切です。でも、それ以上の付加価値も、しっかりとソフトバンクの経済圏としてお届けしていますので、そこを見直した、という点が今回の発表会の趣旨になります。

「スーパーPayPayクーポン」で目指す体験、そしてLINEとの連携

――10月18日から「スーパーPayPayクーポン」の提供も発表されました。こうしたキャンペーンも、いくつかの候補があったかと思いますが「スーパーPayPayクーポン」に至った考えを教えてください。

榛葉氏
 ソフトバンク経済圏と言いますか、グループ内でのコラボは、数年前から実施してきました。たとえばYahoo!ショッピングとの連動です。たとえば、ソフトバンクユーザーであれば、ポイント10倍といったかたちです。その一方で、ヤフーの中立性もキープしながら試行錯誤してきました。

 おかげさまでヤフーのECも、それで一気に(利用が)上がりましたし、我々のスマートフォンも「ECの世界ならソフトバンクがいいな」というかたちになりました。

 PayPayは、400万人の方にご利用いただいて、320万カ所で、日常的にご利用いただけるようになりました。グループとしてはもっともっと加速させたい。

 そこで、ヤフーでのコラボの成功例をさらに踏み込んで、ということで、第2弾の施策がPayPayでの取り組みです。

 かつて「スーパーフライデー」というキャンペーンを実施していました。当時は、文字通り、金曜日だけのキャンペーンで、「決まった曜日」「決まったとき」だけにお客様に行動していただく。

 でもウィズコロナ時代の今、その形はそぐわない。24時間365日、PayPayで利用できるということで「スーパーPayPayクーポン」ということになりました。テイクアウトも利用していただけますし、ポイントも好みの場所でお使いいただけるのです。

――7月、「LINEMO」のミニプラン発表時には、LINEMO事業を手掛ける寺尾洋幸氏が、今後のテーマが「LINEとのシナジー」と語っていました。どのような姿を描いていますか?

榛葉氏
 個人的には、LINEさんとの話し合いがうまく進めば、次の一手をやりたいという思いは強くあります。今、LINEさんとは出澤剛社長や、舛田淳CSMOと話し合いを進めています。今日は寺尾もおりますので……。

寺尾氏
 5G時代に何をするか、という点で、やはり音楽やエンターテイメントの分野って、私たちは成長させていかなきゃいけない、5G時代では大きな種なのではないかと思っています。

 そのあたりについて、LINE側と、ソフトバンクの5G LAB側、GYAOチームと話をしており、大きなサービスが作れるんじゃないかということで、この辺が、大きなシナジーのポイントになっているんじゃないか。乞うご期待というところです。

榛葉氏
 今夏には、Z Entertainment(ゼット エンターテイメント)という新会社が設立されました。舛田さんが社長を務め、GYAOの田中 祐介社長が副社長です。

 ヤフーとLINEがそれぞれ有していた強さ、そしてLINEを通じた韓国のNAVER(ネイバー)も、たとえば(人気アーティストグループの)BTSの独占的なコンテンツを持って展開されているということがあります。その力を借りるということで、そのあたりでいろいろと仕掛けることができればと。

SIMフリー義務化の影響は?

――話は変わりまして、この10月からSIMロックが原則解除ということになります。ユーザーの動きにどのような影響を与えると見ていますか?

榛葉氏

 「一気呵成に(変わる)」はどうかな……というような感覚はあります。

 とはいえ、いずれにしろ、最終的にはお客様が決められることです。我々も(行政側で)決まったことに関しては着実に対応し、お客様の反応、ご意見を拝見しながら修正や対応をしてきます。

――会見後の質疑応答でも、スマートフォンの対応周波数についての問いがありました。たとえばソフトバンクの独自ラインアップが、競合他社の用いる周波数に対応していくことはあり得るのでしょうか。

榛葉氏
 現時点ではそんなに……と考えています。

寺尾氏
 補足すると、グローバルで使える周波数(日本国内で各社横断で使える周波数)は当然、対応しています。

14日の発表会ではPixel 6シリーズの取扱いも発表された

 ただ、キャリア固有の周波数については、我々の(接続テストの)試験範囲に入ってこないと思いますので、そこはキャリアごとにやっぱり差が出てしまうんじゃないかなと思います。

 これはどうしても、“キャリアの中央値”と言いますか、キャリブレーションしてまいります。やはり我々が選んだ端末は我々の周波数に一番最適化されていく。それは、設計上の構造として、そうなると思います。

――最後に5G対策について教えてください。正直申し上げて、今日のプレゼンテーションで「パケ止まり」と表現されると思っていませんでした。ユーザーから何かしら、非常に強い声とか出ているんでしょうか?

関和智弘氏(モバイルネットワーク本部長)
 Twitterなどでの声として、「パケ止まり」という声が、今春~6、7月ごろから大きくなってきたことに着目したことがきっかけなんです。そこから5Gのエリア展開の最適化に注力してきたことをご紹介したかったんです。

 ですので、ソフトバンクに対してのクレームが多いかというと、そういうわけではありません。

――6月、NTTドコモへ通信品質に関して取材記事を掲載していました。今日14日のプレゼンテーションは、他社の状況を踏まえたアピールという面もあるのかなと感じたのですが……。

関和氏
 「エリアが広い」と言うだけですと、5Gを無理に使わせているんじゃないか、という発想になりかねません。

 ソフトバンクでは、最適な5Gエリアを展開している、その品質にこだわった展開をしていると言うメッセージを伝えたかったのです。

――なるほど、ありがとうございました。

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