インタビュー

SIMフリーでも“メイン端末”需要、フルラインナップで勝負するファーウェイ

ファーウェイ・ジャパン 呉 波氏に独占インタビュー

 ファーウェイ・ジャパンは、フラッグシップモデル「P10」「P10 Plus」と、「P10 lite」の日本市場での展開を発表した。

 6月6日に開催された発表会の後に、本誌はファーウェイ・ジャパン コリア リージョン デバイス・プレジデントの呉 波(ゴ・ハ)氏に独占インタビューを行う機会を得た。

ファーウェイ・ジャパン コリア リージョン デバイス・プレジデントの呉 波(ゴ・ハ)氏。手にしているのは「P10 Plus」と「P10 lite」

 なお製品発表についてのニュース発表会のレポート先行レビュー取り扱いMVNOについては、別途掲載している記事を参照していただきたい。

メディアとユーザーからの評価の向上に注力

――発表会では「P9」「P9 lite」などが好調だったことに触れられていました。これは、どのように取り組んだ結果でしょうか?

 2つのクチコミに注力してきました。メディアとユーザーです。また、評価を上げるためには、いろいろな取り組みが必要になります。

 まず、メーカーとして市場のニーズを満たした製品を出すことです。次に、製品とサービスを手にしてもらえるよう、オンライン、リアル店舗、SNSなどを活用して展開してきました。3つ目は、安心感を持って利用してもらえるようにしなければいけないということです。

 我々が独自に調査した結果、端末を手にした理由は、メディアでの紹介や、友人・家族が薦めたから、という結果が多かったですね。良いクチコミが広がるよう注力してきましたし、ブランド認知度が上がり、販売量も増えました。

――すでに銀座などにサポート専門の拠点を開設していますし、「P10」シリーズでは店舗や駅での体験スペースの展開も案内されました。タッチポイントを増やすのは、それが課題になっているという考えでしょうか?

 タッチポイントの増加は、これまでのSIMフリー端末のビジネスで特に力を入れてきた部分です。量販店での売場スペースも広くなるようにしてきましたし、今回は量販店以外の場所でも、同様のイベントを開催できる場所を用意します。

 ユーザーとのタッチポイントはできるだけ用意したいですし、自画自賛するのではなく、ユーザーが体験して「良い」と言ってもらわないといけません。

タッチ&トライスペースや「ファーウェイ・フォトスタジオ」を展開

メイン端末需要でフラッグシップモデルも拡大

――今回は「P10 Plus」も日本向けのラインナップに加わったことがトピックだと思います。これにはどういった背景があるのでしょうか?

 2017年に入ってから、前年比で数倍の勢いで販売数が拡大しています。これまで、過去2~3年は“2台目需要”が中心だったと思います。しかし、2017年は“メイン端末”として購入し使われるケースが増えてきました。

 これまでは2~3万円のモデルが人気でしたが、メイン端末として購入するユーザーは、フラッグシップモデルも購入するようになっています。

 「P9」が大きな成功を収めたため、我々として初めての7万円台になる「P10 Plus」を投入しようと考えました。もうひとつは「Mate 9」で、SIMロックフリー市場の端末でありながら、量販店を中心とした調査データでは、キャリアモデルより売れていたこともありました。これで「P10 Plus」の投入に自信が付きました。

「P10」と「P10 Plus」

――「P10」シリーズの具体的な部分についてですが、「P10」「P10 Plus」はDSDSをサポートし、「P10 lite」はau VoLTEに対応予定です。両方を同時にサポートすることは難しいのでしょうか?

 VoLTEについては、日本のキャリアは独自仕様で展開しています。キャリアが許可する範囲での対応になり、メーカーの意向だけで対応できるものではないのです。

――「P10」「P10 Plus」のフロントに移動した指紋センサーは、ナビゲーション機能もあって、慣れると便利で、ほかの端末に移れなくなりそうです。

 ナビゲーションで兼用できる指紋センサーが前面にきたことで、大幅にユーザー体験を向上できます。例えばニュースアプリの起動、終了にも指紋センサーのボタンが使えます。日本のユーザーならではの片手操作へのニーズを、最も満たしているのではないかと思います。

 こうしたように、ユーザーインターフェースやユーザー体験は、ただ単にしっかりと作るだけではなく、ハードウェアとどう組み合わせていくかにも力を入れています。

 日本では、機種変更などでSDカードを経由してデータを移すことが多いですが、NFCとアプリなどを利用してアカウントまるごと移行できる仕組みも用意しています。自然な形でユーザー体験を向上させるものですし、ぜひこうした機能も知ってもらいたいですね。

防水、FeliCaへの対応

――バルセロナでの発表会では、「P10」シリーズの防水性能についても触れられていましたが、日本での発表会では言及されませんでした。

 防水が日本市場で重要なのは理解しています。「P10 Plus」については、バルセロナでIPX3の生活防水であると発表しました。ただ、日本市場で防水といえば、IPX5/7もしくはIPX6/8です。誤解を招くといけないので、日本の発表では防水について言及しませんでした。

 防水は重要な要素であると捉えていますし、「日本市場で生き残る」という目標のためには重要です。

――日本向けモデルでは、FeliCa(おサイフケータイ)の搭載にも前向きな姿勢でしたが、今回の「P10」「P10 Plus」では対応されませんでした。

 まず、モバイル決済は大きな分野です。ある記事で読んだところによれば、中国でのモバイル決済の規模は、すでに日本のGDPに相当する規模にまで拡大しています。

 中国ではさまざまな方法でモバイル決済が行われています。日本ではFeliCaがメインである一方、中国では、NFCは重要ですが、メインではなく、2次元コードを経由する方法が拡大しています。

 日本では、Android Payはキャリア経由で提供されているのが実態ですし、メーカー主導ではありません。FeliCaとモバイル決済は重要な課題で、最終的には対応しなければいけませんが、どの技術かは市場のニーズで決めていきます。

――「HUAWEI WATCH 2」は、バルセロナの発表ではLTEやeSIMへの対応が話題になりましたが、日本ではWi-Fiモデルのみが発表されました。難しい点があるのでしょうか?

 日本市場は世界的にみてもハイエンドな市場ですが、それでもすべての製品を日本市場に投入するわけではありません。

 昨年の「P9」も今回の「P10」も、日本市場でニーズがあるか、リサーチを行っています。最先端の製品だからといって、無闇に日本で発売するわけではありません。市場のニーズに合った製品を投入していきたいですね。

細長いスマホ、AIへの取り組み

――サムスンやLGは、従来よりも縦長の画面の端末を発表しています。業界のトレンドになりそうですが、どう見ていますか?

 私が2011年に日本に来た時、市場について調査し、日本市場ならではのニーズがあると分かりました。片手で操作しやすくするため、小さな画面の製品が多く、5.5インチを超えるような大画面のスマートフォンは売れていませんでした。

 ただ、ディスプレイメーカーの技術も向上していますし、今は5.5インチでもきちんと片手で操作しやすい幅に収まっています。

 画面の比率は、現在は16:9や4:3が主流ですが、18:9なども出てくるでしょう。これは細長い形のスマートフォンです。

――今日(6日)、Appleが「HomePod」を発表しましたが、音声認識やAIへの取り組みについてはいかがですか?

 ホットなトピックですね。「Mate 9」はグローバルではAmazonの「Alexa」に対応していますし、ファーウェイとして中国や欧州ではクラウドを含めたサービスを開始しています。

 端末はユーザーにとって中心的な存在で、クラウドやAIの利用は端末が大きな役割を果たします。一貫してイノベーションの精神を持って取り組んでいる分野ですし、びっくりするようなサプライズ性のある技術をお見せしたいですね。

――それは、近い将来の話でしょうか?

 具体的な内容は言えませんが、最先端を行くようなスタンスで取り組んでいます。

 我々は端末事業だけではなく、ネットワークインフラや法人向けも手がけていますし、クラウドやAIは他社より強みがあります。AIは大きな帯域幅が必要になりますし、インフラ事業でも言っているように、大きなパイプを作るのが重要になります。

――本日はどうもありがとうございました。