三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

AIで進化した「Pixel 10 Pro XL」、カメラを徹底チェック

 今年もスマホの秋がやってきた。AIに磨きをかけた3機種がまずはグーグルから登場である。そのAndroidスマートフォン「Pixel 10」、「Pixel 10 Pro」、「Pixel 10 Pro XL」は、新SoC「Google Tensor G5」を搭載して、カメラ機能も向上している。特に「Pixel 10」は3カメラ化されたので人気を呼びそうだ。

 それではフラッグシップ機である「Pixel 10 Pro XL」を中心に、さっそくその写りを確認してみよう。なお、端末の特徴や価格、詳細スペックなどは、本誌別記事を参照いただければ幸いだ。

「Pro」シリーズのカメラは同性能

 「Pro」の名がつく「Pixel 10 Pro」、「Pixel 10 Pro XL」の2モデルはカメラ性能が同等である。スペックは下のとおり。独特なデザインのカメラバーに、カメラユニットが収まっているのは前モデルと同じである。

項目内容
広角カメラ5000万画素Octa PD、F値1.68、センサーサイズ1/1.3インチ
超広角カメラ4800万画素Quad PD(AF付き)、F値1.7、画角123度、センサーサイズ1/2.55インチ
望遠カメラ光学5倍、4800万画素Quad PD、光学式手ぶれ補正機能付き、F値2.8、センサーサイズ1/2.55インチ、最大100倍の超解像ズーム

「Pixel 10」

 「Pixel 10」はセンサーサイズが小さくなったものの、2カメラから3カメラ化された。これによって撮影領域がグンと広がることだろう。実写では申し分のない写りを見せてくれたので、サイズや価格を考慮して、この「Pixel 10」を選ぶのも悪くない判断だと思われる。

項目内容
広角カメラ4800万画素Quad PD、F値1.7、センサーサイズ1/2インチ
超広角カメラ1300万画素Quad PD、F値2.2、画角120度、センサーサイズ1/3.1インチ
望遠カメラ光学5倍、1080万画素Dual PD、光学式手ぶれ補正機能付き、F値3.1、センサーサイズ1/3.2インチ、最大20倍の超解像ズーム
0.5x
1x
2x
5x
20x(デジタルズーム最大時)

「Pixel 10 Pro XL」の描写は?

 フラッグシップ機「Pixel 10 Pro XL」各画角の写りを見てみよう。炎天下の中、横浜の港の見える丘公園から、大さん橋に停泊中の客船を狙った。猛暑で空気が暖められ揺らいでいるので、ややシャープさに欠けて見えるが、「Pixel 10 Pro XL」はそれでも優秀な写りであった。

撮影画面はいつもと同等。シンプルで使いやすい。
0.5x
1.0x
2.0x(デジタルズーム)
5x
10x
20x
50x(デジタルズーム)
100x(デジタルズーム)

 ズームが30倍を超えるとAIが介入する。新機能の「超解像ズーム Pro」だ。ディテール補完やノイズ処理を行い、AIが考える正しいであろう画像に生成してくれるのだ。なので写真的表現を心がけるのであれば30倍を超えてのズームは禁物である。

 川で魚を捕食するコサギを狙ったが、カット毎に「超解像ズーム Pro」が介入してコサギの描写が異なってしまった。両カットとも同じ個体だが、クチバシ付け根の部分が違っているのが分かるだろう。撮影時には元画像と生成画像の両方が保存されるので、写真の使用時にはジックリと検討することをオススメしたい。

オリジナル
オリジナル
「Pixel 10」シリーズには「C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)」がスマートフォンとして初搭載されている。写真に生成AIによる加工や関与があったか表示される。ちなみに30倍を超えるデジタルズーム「超解像ズーム Pro」で撮影した画像には「AIツールで編集」と表示された。それ以下だと「カメラ撮影のメディア」としか表示されなかった。これは「Googleフォト」で確認可能だ。

AIの写真教官「カメラコーチ」

 写真撮影に不慣れな人のための機能「カメラコーチ」が搭載された。これは被写体にレンズを向け、画面上部のカメラアイコンをタップすると、AIがシーンにあった撮影方法を教えてくれるというもの。日ごろからスマホで写真を撮っている人には必要ない機能だが、初心者には一定のニーズがあるかもしれない。シチュエーション次第では役に立つこともありそうだ。

上部のカメラアイコンをタップして「カメラコーチ」を起動し、表示されたガイダンスの中から目的のものを選択。その指示どおり数ステップの操作を経て撮影する。ガイダンスをリロードすることも可能だ。
元写真と指示に従って撮影した写真。AIの進化によって、より発展する可能性もありそうだ。ビデオへの適用も期待したい。

「Pixel 10 Pro XL」でブラブラ実写スナップ

 「Pixel」でのスナップ撮影は素晴らしい。毎回書いているが、電源ボタンのダブルクリックで即座に立ち上がるカメラが気持ちいい。それでいて遠くの被写体を手に取るように大きく撮ることも容易だ。また「夜景番長」の異名どおりナイトシーンの美しさも相変わらずである。新SoC「Google Tensor G5」によって描写も動作速度も十分で、使っていて楽しくなった。

50メガピクセルでのポートレートモード撮影ができるようになった。人物撮影はもちろんのこと、ボケを活かした商品や小物撮影もできるのがいい。ディテールもしっかりとしており、ネット通販のブツ撮りなどにいいかもしれない
古民家にあった石臼に迫った。レンズの間近まで寄れるマクロ機能は様々なシーンで重宝することだろう
スイカの置物と蚊取り線香。まだ暑い日が続いてるが、こんな光景を見られるのもあとわずかかもしれない。優しいポートレートモードのボケがいい感じ。もちろん撮影後にボケ量とピント位置の変更も可能である
夏の夕暮れ。太陽の沈む位置がだいぶ変わってきた。風にそよぐ草の葉のディテール、太陽のハイライト、自転車の親子まで「Pixel 10 Pro XL」のHDRは見た目同様に写しとってくれた
ひまわりの造花。ポートレートモードの境界判定は見事なものだ。しっかりと背景から分離してくれた
金属のボディ、ゴムのタイヤ、そしてディスクローターとブレーキキャリパーの質感がいい雰囲気だ。センターロックやサイドウォールの注意書きまで克明に「Pixel 10 Pro XL」は写しとった
超広角カメラは都市部で活躍する。大きな建造物や広い交差点などをいとも簡単にフレーム内に閉じ込めてくれる。もちろん狭い室内を広く見せたりと、現代のスマートフォンには必須の画角だろう
パノラマ撮影も楽しい。前モデルからボールをキャッチするようなUIになったが、水平が取りやすく誰でも手軽にパノラミック撮影を楽しめるのがイイ
公園のベンチに座って撮影結果を見ていたらスズメが寄ってきた。ちょっとモデルになってもらい「Pixel 10 Pro XL」のシャッターを切った。20倍での写りもなかなかのもの。羽毛の感じがよく分かる
相変わらずナイトモードが美しい。「Pixel 10 Pro XL」を持って、秋の夜長を楽しむのが待ち遠しい。レンガの立体感と質感、ペイントの色のりがとてもいい。光源のフレアはスマホならではのものと割り切ろう
ホテルのバーでのカット。「Pixel」シリーズはシャッター音が静かでいい。場の雰囲気を壊すような品のない音ではないので、安心して取り出すことができる。薄暮の描写も何とも言えないではないか

「Pixel 10 Pro XL」まとめ

 前モデルと比較すると劇的に変わった部分は少ないが、AIを活用した「超解像ズーム Pro」や「カメラコーチ」、編集機能で進化が見られた。使い勝手もキープコンセプトで、コンピュテーショナルフォトグラフィーのパイオニアとして熟成の域に達していることが証明されていると言えよう。

うれしいのは「PixelSnap」だ。いわゆる「MagSafe」対応となり、数々のアクセサリーが使用可能になったのだ。自分もさっそく手持ちのものを使って、タイムラプスなどを撮りまくっている。しっかりと互換性があり、撮影が手軽かつ楽しくなった。同時に発売されるケースもマグネットが埋め込まれており、必須のアイテムになっている。 素晴らしい写り、使い勝手、そして新アクセサリー対応とで「Pixel 10 Pro XL」での撮影は実に快適で楽しいものであった。
三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau