石野純也の「スマホとお金」

au新料金プラン「U12/U16/シニアバリュープラン」徹底解説、旧プランから何が変わったの

 業界的な注目度の高さから、どちらかと言えば「au Starlink Direct」のデータ通信対応に話題が集まってしまいましたが、KDDIは8月28日、このサービスと同時に、特定の年齢のユーザーだけが加入できる新料金プランを3つ発表しています。

 これに伴い、バッティングする「スマホスタートプランベーシック」などが、8月31日に新規受付を終了しています。

 新たに導入されるのが、「U12バリュープラン」、「U16バリュープラン」、「シニアバリュープラン」の3つ。それぞれ、12歳以下、16歳以下、60歳以上を対象にした、年齢限定の料金プランです。

 合わせて、これらの料金プランで利用できる1日定額の「データ1日放題」も導入しています。では、8月までの年齢別料金とは、どのように違うのでしょうか。その仕組みを解説していきます。

KDDIは、9月に3つの年齢別新料金プランを導入した

対象年齢をより限定し恒久値下げしたU16バリュープラン、ただしデータ容量はダウン

 まずは、U16バリュープランから。その名の通り、この料金プランには5歳以上16歳以下のユーザーが加入することができます。契約さえしてしまえば、16歳を超えてしまってもOK。17歳になったからと言って、強制的にプラン変更させられることはありません。

 データ容量は20GBで、料金は4048円。「auスマートバリュー」、「家族割プラス(3人以上)」、「au PAYカードお支払い割」でそれぞれ550円、550円、220円の割引が適用され、最低価格は20GBで2728円になります。

 割引前提ではあるものの、サブブランドやオンライン専用ブランド並みの価格になるのが魅力的な料金プランと言えるでしょう。

 また、U16バリュープランは2段階制の料金体系になっており、3GB以下の月は割引前の料金が2398円、割引後が980円まで下がります。小学校、中学校、高校と年齢に応じてスマホの使い方は大きく変わるため、段階制で自動的に料金が変わるのは利便性が高いところと言えそうです。

2段階制の料金プランで、閾値は3GB。各種割引適用後は、2728円まで下がる

 ただし、19歳になった月の翌月から2段階制ではなくなり、フラットな料金プランに変わります。この点が少々特殊と言えば特殊かもしれません。名称が、6月にスタートした「auバリューリンクプラン」に似ていますが、Pontaパスなどへの“リンク”はありません。

 一方で、au Starlink Directには対応。月額払いのサービスにポイント還元を受けられる「サブスクぷらすポイント」も利用できます。

auバリューリンクプランほどのバリューはリンクされないが、au Starlink Directやサブスクぷらすポイントは料金プランに含まれる形だ

 特定の年齢に絞った料金プランというと、auには「スマホスタートプランベーシック」がありました。こちらは、22歳以下限定。データ容量は月30GBで、各種割引適用前の料金は5423円、割引後は4136円でした。

 また、1年間限定の「スマホスタート1年割」が適用されると、料金は2728円まで下がります。金額的にはU16バリュープランと同じ、データ容量は10GB多かった格好です。

U16バリュープランの登場で新規受付を終了したスマホスタートプランベーシック。1年目の料金は同じだが、2年目以降は割高になるため、すでに契約している人はU16バリュープランに移った方がいいかもしれない。ただし、データ容量は10GB減ってしまう

 比較すると分かるように、U16バリュープランはスマホプランベーシックを値下げしたような料金体系になっています。1年限定だった割引が恒久的に続くと考えると、お得感があります。

 逆に、最大のデータ容量は30GBから20GBに下がっている点には注意が必要。その意味では、10GBぶん安くなっていると捉えることもできます。

 少々引っかかるのが、17歳になってしまうと加入ができなくなってしまうところ。スマホスタートプランベーシックは22歳以下となっており、年齢的には17歳から22歳が対象外になってしまいました。

 高校入学から約1年は検討期間がありますが、それ以降だと手遅れになってしまうというわけです。対象が絞り込まれている点は、これまでの料金プランとの違いと言えるので、早め早めに決断することが肝心になります。

スマホスタートプランベーシックは、22歳以下が対象だった。U16バリュープランでその年齢が16歳まで引き下げられているため、17歳から22歳までのユーザーがお得になるプランがなくなってしまった

小学生向けに通信速度を制限したU12バリュープラン、1日限定で速度制限解除も

 子ども向けという意味では、もう1つ面白い料金プランが登場しました。それが、主に小学生を対象にしたU12バリュープランです。auには、子ども向けのケータイを対象にした「ジュニアケータイプランME」などがありますが、こちらはスマホ向け。子ども向けケータイを卒業して、スマホに持ち替えた時に契約することが想定されています。

 とは言え、料金はジュニアケータイプランMEに近い水準です。各種割引適用前の金額は1870円ですが、「U12家族割」で1100円、au PAYカードお支払い割で220円の割引が効き、すべて合わせると料金は550円まで下がります。ジュニアケータイプランMEでも、割引後は660円だったため、それ以下の金額で維持することが可能になります。

主に小学生をターゲットにしたU12バリュープラン。子ども向けケータイとほぼ同水準の金額だが、対象となる端末はスマホを想定している

 ただし、データ通信の速度は300Kbpsに制限されており、動画やゲームなどをフルに楽しむことはできません。ジュニアケータイプランMEでは1Mbpsだったため、それよりも速度は抑えられています。端末側でできることが広がるぶん、通信側で制限を設けることで子どもの使い過ぎを防ぐ設計になっていると言えるでしょう。

使い過ぎを防ぐため、端末側ではなく、通信側で速度を絞っているのが特徴だ

 このU12バリュープランには、子どもを犯罪やいじめ、自動課金などから守る「コドマモ」というアプリや、英語学習、仕事体験などのコンテンツが利用できる「auキッズラボ」もセットになっており、無料で利用が可能。

 こうした特典がついてくるのは、“バリュー”とついているからこそ。それぞれの月額料金は790円、1100円となっているため、料金にお得感もあります。

コドマモとauキッズラボが無料でついてくるため、お得感がある

 とは言え、小学校高学年にもなれば自分のスマホで動画などのコンテンツを見たいということもあるはず。このような時に便利なのが、データ1日放題です。povo2.0のトッピングを彷彿とさせる仕組みですが、これを使うと24時間、データ通信の制限がなくなります。1回の料金は550円。

 U12バリュープランの1カ月分と考えると、少々高めな印象も受けますが、どうしても制限を解除したいという時には便利そうです。

 なお、このデータ1日放題はU12バリュープランや先に挙げたU16バリュープランだけでなく、受付を終了したスマホスタートプランや、ピタットプランと旧料金プランでも利用が可能。小容量向けのスマホミニプラン+などにも対応しています。普段は節約しながら使いつつ、出張や旅行の時だけ契約するオプションとしてもよさそうです。

24時間限定でデータ通信が使い放題になるデータ1日放題も合わせて導入された

シニア向けは5分かけ放題をセットに、ユースケースに合わせてお得感を出したKDDI

 この2つとは打って変わって60歳以上が加入できる新料金プランが、シニアバリュープランになります。昨今のバリバリスマホを使う60代を見ていると、この年齢層をシニアと呼んでいいのかどうかは意見が分かれそうですが(笑)、こちらも、一般的な料金プランよりもその世代に合わせた設計になっており、5分かけ放題がセットになっています。

 また、月額440円のオプションサービスとして提供されている迷惑電話対策などがセットになった「電話きほんパック(V)」も無料に。データ容量は5GBです。

 各種割引適用前の料金は4048円。割引は、家族割引ではなくauスマートバリューで1100円、au PAYカードお支払い割もしくは新設された「auじぶん銀行お支払い割」で220円の割引を受けることができます。すべて適用すると、料金は2728円まで下がります。

シニア向けのシニアバリュープラン。データ容量は5GBだが、5分かけ放題や電話きほんパック(V)がセットになっている

 自宅でのWi-Fi利用を前提にしつつ、クレジットカード非契約者のためにauじぶん銀行での支払いもセットにするあたりは、世代に合わせたと言えそうです。

 親とまとめて契約することが多いであろうU12バリュープランがU12家族割とau PAYカードお支払い割だけというのと対照的。ユーザー層ごとに、なるべく割引が適用されやすいよう、工夫を凝らしている印象を受けました。

 シニア向けの料金プランには「スマホスタートプランライト」がありましたが、こちらはデータ容量が4GBで割引適用前の料金が2673円。恒常的な割引はau PAYカードお支払い割のみ。

 1年目は、「スマホスタート1年割」が効いて1078円になりますが、2年目からは2486円になります。これと比べると、データ容量は1GBアップしているのに対し、料金は242円増しに。1年限定の大幅な割引もなくなりました。

シニアバリュープランは、スマホスタートプランライトの後継。料金はやや上がっているが、そのぶん、音声通話をおトクに使えるため、実質的な値下げになる人は多そうだ

 ただし、オプションだった5分間の音声通話定額や電話きほんパック(V)がついている点を踏まえると、むしろ、割安になる人も多くなるはずです。シニア層は音声通話の利用が多いことを踏まえた料金設計になっており、単純な金額比較だけでは分からない安さが打ち出されています。

 値上げが注目されがちなキャリアの料金ですが、年齢限定のそれは、割引さえ適用されれば、ほぼ変わらないか実質的に値下げになっている感もあります。

 また、1年限定の割引などがなくなり、よりシンプルに使えるようになりました。年齢の条件に当てはまる人は、サブブランドだけでなく、こうしたメインブランドの年齢限定料金プランを検討してみてもいいでしょう。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya