石野純也の「スマホとお金」
“ドコモ vs KDDI”新料金プランを徹底分析、特典・割引で見えるメリットとデメリット
2025年5月15日 00:00
NTTドコモ、KDDIが相次いで発表した新料金プラン。中低容量の「ドコモmini」やサブブランドのUQ mobileでは、値上げになってしまうケースが多いことは本連載でも取り上げました。
ただ、同じ値上げでも、データ容量無制限の料金プランは元々の料金が高いぶん、影響が軽微なことに加えて、豊富な特典がつくため人によってはお得さを感じるかもしれません。
奇しくも、ドコモ、KDDIともに値上げに伴ってサービスを強化する方向性を打ち出している一方で、その手法には違いもあります。
「DAZN for docomo」のバンドルを大きな売りにしたドコモに対し、KDDIは通信面でのサービス強化に加え、「Pontaパス」をバンドル。コンテンツは「サブスクぷらすポイント」で選べることを重視しています。
ここでは、2社の新料金の特徴やその考え方の違いから、戦略の違いを読み解いていきます。
割引適前の料金は1000円以上アップ、ただしフル適用ならその差は220円に
「ドコモMAX」は、各種割引適用前の料金が最大8448円。現行料金プランのeximoと同様、3段階に料金が変動する仕組みとなっており、3GBを超えた際にこの金額になります。同じ3GB超で比較すると、eximoの7315円から1133円の値上げになっています。ただし、 割引を加味するとこの差は縮まります 。同じ名目でも割引額が増えている上に、新設された割引があるからです。
例えば、家族で複数契約すると割引を受けられる「みんなドコモ割」は、3回線以上で1100円から1210円に110円アップ。
ドコモ光やhome 5Gとのセット割も、1100円から1210円に上がっています。
これに加えて、「dカードお支払割」は187円から最大で550円に拡大されました。
なお、この額の割引を受けるには「dカードPLATINUM」や「dカードGOLD/GOLD U」といった年会費のかかるクレジットカードが必要。通常のdカードの場合、キャンペーン終了後は割引額が220円に減額されます。
それぞれの割引額が増えていることに加え、「ドコモMAX」には新たな割引が加わりました。契約年数に応じた割引が受けられる「長期利用割」がそれです。
割引額は10年以上の場合110円、20年以上の場合220円です。
さらに、「ドコモでんき」とのセット割も設けられ、これが適用された場合にも110円が割り引かれます。既存の割引が110円から363円増額された上に、新設で最大330円の割引を受けられることで、eximoからの値上げ幅が抑えられる格好です。
すべての割引を加味した場合の金額は、「ドコモMAX」が5148円でeximoの4928円と大きな差はなくなります。 ザックリ言えば、どちらも5000円前後 。「値上げ」と大々的にうたえるかというと、少々微妙な金額です。
ただし、上記のように割引の増額と新設があるため、適用されない場合にはより料金が上がりやすくなる点には注意が必要。特に、クレジットカードの条件や、長期利用割などは適用される人が限られてきます。
ドコモの前田義晃社長によると、「eximoで割引がフル適用されている方は約半数」だといいますが、割引条件が増えていることで、その割合は減ることになりそうです。
もっとも、「ドコモMAX」にはeximoにない特典もあります。目玉になるのが、「DAZN for docomo」。単体で契約すると4200円にもなるサービスですが、「ドコモMAX」契約者は無料で利用できます。
海外渡航が多いユーザーにとっては、海外ローミングが無料になる点も見逃せません。現行の料金プランだと、「世界そのままギガ」で24時間あたり980円、5日間のまとめ買いをしても3980円かかります。これが無料になるのは、お得感が高いと言えるでしょう。しかも対象になる国や地域はahamoより広く、現行の海外ローミングの仕様をそのまま受け継いでいます。また、Amazonプライムが6カ月間無料になるのもeximoと同じです。
DANZ単体契約より安くなることも? auはPontaパス付帯で550円アップに
DAZN無料があまりにもお得なこともあり、元々、同サービスを契約していた人や、これから使ってみたいと思っていた人には非常にお得な料金プランと言えます。
DAZNを基準に考えると、各種割引適用後なら わずか948円 でドコモのデータ容量無制限の回線がついてくるようなもの。3GBを下回っていた場合、DAZNを単体で契約するより料金が安くなります。
割引適用前でも、1GB以下のデータ使用量を抑えれば、料金は5698円に。
三親等以内の親族にドコモユーザーを2人見つけてファミリー割引を組み、さらにドコモ光/home 5Gセット割が適用されれば、料金は3278円まで下がり、DAZNの月額料金より安くなります。
この条件さえ見たせれば、DAZNのためにドコモ回線を契約するのもアリだと思えるほどです。同様に、年間数回の海外渡航があるような人も、「ドコモMAX」を契約する価値が高いと言えます。
一方で、スポーツの映像配信に興味がなかったり、海外に行かなかったりという人には、単純な値上げになるのも事実。割引条件も増えるため、より複雑になると言ってもいいでしょう。
「ドコモMAX」が開始される前日の6月4日まではeximoを契約できるため、通信単体でなるべく料金を抑えたいという人は、今の内に料金プランを変更しておくのも手と言えます。
ドコモと切り口の異なる「auバリューリンクプラン」
その意味では、KDDIの「auバリューリンクプラン」の方が、偏りは少ないかもしれません。
ドコモと同様、料金プランに特典が加わっているのは同じですが、スポーツ映像に特化していないぶん、 間口が広い からです。同プランには、月額548円の「Pontaパス」が付属するほか、5G SAの優先制御を受けられる「au Fast Lane」が適用されます。
通信の特典としては、ドコモと同様、海外ローミングが15日分無料になります。また、現行の「使い放題MAX+」同様、「au Starlink Direct」の利用にも対応しています。
さらに、特定のサービスを月額契約するとポイント還元される「サブスクぷらすポイント」の還元率が、10もしくは15%から20%にアップします。この「サブスクぷらすポイント」を強化することで、自由にコンテンツを選んでお得感が出る点が、間口の広さにつながっていると言えるでしょう。
この点では、DAZNの印象が非常に強く出ているドコモの「ドコモMAX」とは対照的です。
料金は、1GBを超えた場合の各種割引適用前で8008円。現行の「使い放題MAX+」から、550円の値上げです。
割引は現行の「使い放題MAX+」と同じで、「家族割プラス」「auスマートバリュー」「au PAYカードお支払い割」の3つ。割引額も据え置かれているため、これらを適用した場合の料金は5478円になり、4928円だった使い放題MAX+からの値上げ幅も550円になります。
割引額の変更や新設があったドコモの「ドコモMAX」よりも、既存のユーザーが理解しやすい点も評価できます。
この550円という金額は、Pontaパスの月額料金とほぼ同じ。値上げと言いつつも、 実態としてはPontaパスがセットになり、特典が複数追加された料金プラン と捉えることもできます。元々Pontaパスを契約していたユーザーであれば、料金は据え置きに近いだけでなく、au Fast Laneや海外ローミング無料の特典までつくため、移行する価値が高いと言えるでしょう。
また、550円程度の値上げであれば、海外ローミングが無料になる方がうれしいという人もいるでしょう。
「サブスクぷらすポイント」の還元率が5から10ポイントアップすることもあり、ここで元を取ることも可能。Pontaパスも全力で使えばきっちり元を取れます。コンテンツの種類だけでなく、値上げ幅が小さいことも間口が広いと言える要因になっています。
現行プランも値上げするKDDI、値上げの手法が異なるドコモとKDDI
一方で、auの場合、新料金プラン導入前に 駆け込みで現行料金プランに加入してしまうという手が取れません 。auバリューリンクプラス導入後も、現行の使い放題MAX+も値上げされたうえで提供が継続されるからです。値上げ幅は330円。8月には、 現行の各種割引適用前の7458円から、7788円に上がります 。
ただし、値段だけがそのまま上がるのではなく、auバリューリンクプランにつく、Pontaパス以外の特典も付与されます。
au Fast Laneや海外ローミング無料、サブスクぷらすポイントの5ポイントアップを考えると、330円の値上げは許容範囲と言えるかもしれません。年1回の海外旅行や、サブスクぷらすポイントを駆使することで、元は取れるからです。
例えば、Netflixの広告つきスタンダードとYouTube Premiumに入ると、前者で40ポイント(差分の5%)、後者で117ポイント(差分の10%)、還元されるPontaポイントが増えます。
また、夏に増えるGoogle Oneの「AIプレミアム」に入れば、特別価格の1760円に320ポイントがついて、値上げぶん以上にポイントが戻ってきます。
こうしたサービスはスマホを活用するうえで欠かせないものになってきているため、元を取れるユーザーは多くなりそうです。
一方で、 値上げ後の使い放題MAX+とauバリューリンクプランを比較すると、220円の差 しかありません。その違いはPontaパスのみ。既存の使い放題MAX+のユーザーにとっては、220円でPontaパスが手に入るようなもの。この程度の差額であれば、もらえるクーポンやローソンでの還元率アップを考え、Pontaパスに入ってもいいと考える人は多いかもしれません。
その意味では、使い放題MAX+を値上げしつつ、Pontaパスがついているauバリューリンクプランに誘導していると捉えることができます。
現行料金と新料金を比較すると、2社の考え方の違いが透けて見えます。
割引適用後の料金をドンと上げつつ、自社サービスと連携した割引を増やし、DAZNでお得さを打ち出したドコモに対し、auは広く薄く値上げして「サブスクぷらすポイント」の利用を促しつつ、新料金でPontaパスを訴求していく戦略。
それぞれの既存ユーザーには、auの新料金プランの方が受け入れられやすそうに見えます(8月には受け入れざるをえなくなりますが……)。
逆にドコモの「ドコモMAX」は、DAZNのお得さという一点突破でユーザーを獲得できる可能性があります。正直、料金プランとしては少々偏りすぎでは……と思うところは多々ありますが、同社は今後、特典になるサービスを拡充する方針も示唆しています。
自分にハマるサービスがセットになれば、契約する価値は高まります。eximoで様子を見つつ、そのタイミングが来るのを待ってみるのもいいかもしれません。