石野純也の「スマホとお金」
ドコモの新プログラム「いつでもカエドキプログラム+」を徹底解説、「Galaxy Z Flip5/Fold5」は実質いくらになる?
2023年8月24日 00:00
サムスン電子が送り出すフォルダブルスマホの「Galaxy Z Flip5」「Galaxy Z Fold5」に合わせ、NTTドコモが新たな購入プログラムを導入します。「いつでもカエドキプログラム+」がそれです。
元々、ドコモは21年9月に、前身となる「いつでもカエドキプログラム」をスタートしていました。これは、いわゆる残価設定型のローン。分割払いにした際の24回目を残価とすることで、毎月の負担額を押さえられるのがメリットです。また、残価は機種変更などに伴い、端末を返却すれば免除されます。
いつでもカエドキプログラムそのものの仕組みは、本連載でも取り上げ、詳しく解説しています。
また、筆者が22年に「Galaxy Z Fold4」を購入した際には、およそ1年目で先代の「Galaxy Z Fold3 5G」を返却。その模様や実際の返却方法なども、本連載でレポートしています。
では、新たに導入されるいつでもカエドキプログラム+は、どんなところが“プラス”になっているのでしょうか。その仕組みを解説します。
これは令和の徳政令? 最大の違いは早期利用の大幅な改善
ドコモのいつでもカエドキプログラムは、「早期利用特典」が設けられているのが他社の同様の仕組みとの大きな違いでした。残価が設定された24回目を待たずに機種変更などで返却を行った場合、残った23回目までの支払いに割引がつくというのがそれです。
実際、先に紹介した筆者の記事でも、返却したGalaxy Z Fold3 5Gに対し、毎月1200円の早期利用特典がつきました。これによって、23回目までの支払い額は、毎月6198円から4998円まで下がっています。
このときは、トータルで1万3200円割引が上乗せされた形になりました。端末の下取りと引き替えのため、あくまで実質価格ではありますが、24万円弱だったGalaxy Z Fold3 5Gを、13万円弱で利用できた形になります。
購入時に残価が設定しているため、査定でいくらになるかが左右される下取りより安心。2年未満での機種変更にも早期利用特典という形でインセンティブがついているため、端末の買い替えサイクルを早める効果もありそうです。
新たに導入されるいつでもカエドキプログラム+は、この早期利用の部分にさらに磨きをかけたものと言えます。
具体的には、旧いつでもカエドキプログラムにあった早期利用特典がなくなる代わりに、ユーザーが「早期利用料」を支払う必要があります。
それだけ聞くと、お金を払うだけになった改悪のようにも思えてしまいますが、その対価として、13カ月目から23カ月目に支払う予定だった分割支払金まで免除されます。引かれる額の大きさを考えると、早期の機種変更がよりしやすくなったと言えるでしょう。
メリットが大きいのが、筆者のように1年で新モデルに買い替えているガジェッター。型落ちを使うのは御免、スマホは最新モデルを使ってナンボと考えている人にとって、非常に使いやすそうなプログラムに仕上がっています。
スマホの新モデルは、大体1年サイクルで登場しているため、同じシリーズの後継機を次々と購入していくことが可能になります。Galaxy Z Foldシリーズの二重ローンを抱えている筆者のようなユーザーには、非常にありがたいプログラムです。
ドコモが、なぜガジェッターをここまで優遇しまくるのかは不可解ですが、機種変更が頻繁で最新のハイエンドモデルを欲する人ほど、データ使用量も多く、キャリアにとって“上得意客”になりやすい傾向はあります。
毎月の支払い額が多いヘビーユーザーを手放してしまうのは、経営的に痛手なのかもしれません。全体で端末の販売が落ち込んでいるなか、テコ入れとしてこうした施策を導入した可能性もあります。
Galaxy Z Flip5、Fold5でそれぞれの実質価格を試算、1年返却だと驚きの額に
では、実際にこのプログラムを使うと、最新モデルの実質価格はいくらになるのでしょうか。すでに適用することが明かされているGalaxy Z Flip5およびGalaxy Z Fold5で、その実質価格を計算してみました。
まずは、Galaxy Z Flip5。こちらのドコモ版は、本体価格がドコモオンラインショップで16万820円に設定されています。残価は7万9200円。23回目までの月々の支払いは、3548円です。
まず、約2年間、23回目まできっちり支払い、24回目の残価を支払う前に機種変更したとしましょう。このときの価格は、残価の7万9200円が免除され、3548円×23回ぶんになります(なお、実際には1回目のみ支払額が端数の16円ぶん高くなる)。実質価格にすると、8万1620円です。
割引の少ないオープンマーケットモデル(SIMフリーモデル)の売れ筋はおおむね3万円から5万円のため、それよりはやや高めの設定と言えます。
一方で、早期利用特典が適用されると、残価に加え、23回中13回目から23回目、計11回ぶんの分割支払金が免除されます。Galaxy Z Flip5の場合、11回分の分割支払金は合計で3万9028円になります。残債と不要になった分割支払金を本体価格から引くと、実質価格は4万2592円です。
翌年、「Galaxy Z Flip6」(仮)が出た際に乗り換えたと仮定すると、4万円強の支払いで済んでしまうわけです。
ただし、ここに早期利用料の1万2100円がかかります。それを足したときの金額は5万4692円。5万円は超えてしまいましたが、実質価格は2年使ったときよりも、大きく下がっていることが分かります。
注意したいのは、早期利用は12回目の支払いが終わった直後がいいということ。13カ月目が過ぎ、23カ月目に近づくほど、実際に支払う分割支払金は増えていくからです。
早期利用料は1万2100円で変わらないため、なるべく早めに機種変更するのがお得。見方を変えると、早期利用料込みの実質価格は5万4692円から8万1620円まで幅が出てきたとも言えるでしょう。
逆に早期利用料が固定のため、21カ月目や22カ月目に権利を行使すると、免除される分割支払金が少なく、かえって割高になってしまうことすらあります。
上記のグラフのとおり、Galaxy Z Flip5の場合、最適解は12カ月目、遅くとも19カ月目までに返却するのが得策。それを過ぎたら、23カ月目を待つのがいいでしょう。
本体価格が25万7400円のGalaxy Z Fold5の場合、この差がさらに大きくなります。同モデルの残価は10万9560円、23回目までの分割支払金は6427円に設定されています(こちらも1回目に端数分の19円が乗る)。
差し引きした2年利用時の実質価格は、14万7840円です。12回支払ったあと端末を返却すると、11カ月分、計7万697円がここからさらに引かれます。早期利用料の1万2100円を加味すると、最安の実質価格は8万9243円。1年間早く機種変更すると、6万円近い差が生まれます。
12カ月未満の分割支払いには特典なし、smartあんしん補償の加入もマストに
1年での機種変更がお得になったいつでもカエドキプログラム+ですが、逆に、12回目までの支払いは必ずしなければなりません。この点は、端末の返却を済ませた段階で何カ月目であろうと早期利用特典を受けられた旧いつでもカエドキプログラムとの違いです。
ただし、特にハイエンドモデルは免除される金額が大きいため、早期利用料を支払ったとしても、いつでもカエドキプログラムの方がお得になることの方が多いでしょう。その点では、大きな改善と言えます。
もう1つ注意点として挙げておきたいのが、いつでもカエドキプログラム+は、「smartあんしん補償」への加入や継続が必要なところです。
名称には「+」がつきましたが、このサービスはいつでもカエドキプログラムとsmartあんしん補償の両方を契約しているときの総称。smartあんしん補償に入りたくないときには、既存のいつでもカエドキプログラムに加入することも可能です。
ただし、いつでもカエドキプログラム+が提供されるのに伴い、旧いつでもカエドキプログラムの早期利用特典が大きく減額されています。
Galaxy Z Flip5、Fold5はどちらも300円。Galaxy Z Flip4の800円や、Galaxy Z Fold5の1500円と比べると、魅力が損なわれています。早期利用を考えているユーザーにとって、旧プログラムを選ぶメリットはないと言ってもいいでしょう。
残価設定型のローンは、端末が故障していない状態で返却する必要があるため、利用の際には合わせて補償サービスに加入するのが一般的。無補償での利用はリスクが高まることもあり、あまりおすすめできません。
上記の例で挙げたフォルダブルスマホは故障時の修理費用も高額になるため、やはりsmartあんしん補償には入っておいた方がいいでしょう。月額料金はGalaxy Z Flip5、Fold5ともに1100円。ある種の抱き合わせに近いサービスであることは確かですが、利用実態から乖離しているわけではなさそうです。
Galaxy Z Flip5、Fold5のようなフォルダブルスマホは、まだまだ発展途上の分野。将来的には出荷台数が1億台を超えるとの予測もありますが、現状ではスマホ全体の中ではごく一部にすぎません。そのため、世代ごとのアップデートが大きく、競合メーカーも徐々に参入して、競争が激化しています。
7月にグーグルが発売し、3キャリアが取り扱っている「Pixel Fold」も、そんなライバルの1つ。買い替えや他メーカーのモデルに乗り換えが気軽にできる意味では、アーリーアダプターが多いフォルダブルスマホ向きのプログラムと言えるでしょう。
もっとも、当初の対象モデルがGalaxy Z Flip5、Fold5の2機種なだけで、今後、いつでもカエドキプログラム+は対応するスマホを拡大していくはずです。
特に注目したいのが、例年9月に発表されているiPhoneです。熱心なアップルファンの中には、毎年最新のiPhoneを発売日に購入する人もいますが、このようなケースにも、いつでもカエドキプログラム+は最適。端末の買い替えが頻繁な人にとっては非常に魅力的なだけに、対抗するキャリアが出てくるかどうかにも注目しておきたいところです。