レビュー

「Galaxy Z Fold5」「Galaxy Z Flip5」ファーストインプレッション

 サムスンは7月26日、新製品発表イベント「Galaxy UNPACKED」を韓国・ソウルで催し、フォルダブルスマートフォン「Galaxy Z Fold5」と「Galaxy Z Flip5」、Androidタブレット「Galaxy Tab S9」シリーズ3機種、スマートウォッチ「Galaxy Watch6」「Galaxy Watch6 Classic」を発表した。

 「Galaxy Z Fold5」と「Galaxy Z Flip5」を中心に、現地でのタッチ&トライで得たファーストインプレッションをお届けしよう。

上:「Galaxy Z Flip5」、下:「Galaxy Z Fold5」

UNPACKEDを韓国・ソウルで初開催

 スマートフォンで世界No.1のシェアを持つサムスンは、「Galaxy UNPACKED」と題した発表イベントを開催し、数々の新製品を発表してきた。イベントにはメディア関係者や各携帯電話会社などが招かれ、発表された製品をいち早く試すことができる。

 この「Galaxy UNPACKED」は世界各地で開催されてきたが、かつては展示会のIFA(ドイツ・ベルリン)やMWC(スペイン・バルセロナ)に合わせて、開催されることが多かった。近年は市場規模が大きい米国・ニューヨークやサンフランシスコ、フランス・パリなどで開催されている。

 コロナ禍においては一時的にオンラインに切り替えられたが、昨年からリアル開催に復帰し、今年2月には米国・サンフランシスコで開催され、「Galaxy S23」シリーズなどが発表された。

 今回、はじめてサムスンのお膝元である韓国・ソウルで「Galaxy UNPACKED」が開催され、世界各国から数百人のメディア関係者などが参加している。

 地元ソウルでの初開催ということもあり、街中のあちこちで「Galaxy UNPACKED」開催を伝える広告を掲示したり、参加者向けに韓国の文化を紹介するイベントを実施するなど、サムスンとしての並々ならぬ意気込みを感じさせる。

 近年、BTSや韓流ドラマ、映画など、エンターテインメントの分野で成長著しい韓国について、Galaxyをきっかけに、より理解を深めてもらいつつ、Galaxyそのものについてももっと幅広い層に意識してもらいという考えもある。

 もちろん、地元開催だからこそ、体験ツアーやイベントなど、より多くのメニューを提供できるという側面もあるようだ。

フォルダブルスマートフォンなど、7製品を発表

 今回のGalaxy UNPACKEDでは、フォルダブルスマートフォン「Galaxy Z Fold5」「Galaxy Z Flip5」、Androidタブレット「Galaxy Tab S9 Ultra」「Galaxy Tab S9+」「Galaxy Tab S9」、スマートウォッチ「Galaxy Watch6」「Galaxy Watch6 Classic」の7製品が発表された。

 各製品の内容やスペックについては、本誌の速報記事を参照していただくとして、ここでは「Galaxy Z Fold5」「Galaxy Z Flip5」について、タッチ&トライの限られた時間内でのファーストインプレッションをレポートしよう。

 いずれもグローバル向けの製品であり、限られた時間内での試用なので、短いレポートであることをお断りしておく。それぞれの製品が一定期間、試用できるようになった段階で、あらためてレビュー記事などを掲載する予定なので、詳細はそちらをお待ちいただきたい。

Galaxy Z Fold5

 フォルダブルスマートフォンとして、国内外でもっとも広く利用されている「Galaxy Z Fold」シリーズの最新モデル「Galaxy Z Fold5」だ。

 スリムで縦長のボディを横方向に開くと、ワイドなディスプレイが広がり、ブラウザやメール、マップといった一般的なアプリだけでなく、エンターテインメントコンテンツなどを大画面で利用できるアドバンテージを持つ。

 今回の「Galaxy Z Fold5」は一見、従来モデルとあまり変わらないように見えてしまうが、実機を手に取ると、明らかに別物に進化したと感じさせるほどの違いがある。筆者は約10カ月近く、「Galaxy Z Fold4」を愛用しており、その差がはっきりとわかるレベルだ。

 まず、内部のヒンジが大きく改良され、端末を折りたたんだ状態で、本体下部や上部から見たとき、上下の筐体がぴったりと合わさり、従来モデルにあったヒンジ部分のわずかな空間もなくなっている。まさに2つの筐体をぴったりと重ね合わせたボディに仕上げられている。

左:「Galaxy Z Fold4」、右:「Galaxy Z Fold5」

 折りたたんだ状態での厚みも13.4mmまで薄くなり(Galaxy Z Fold4は14.2mm)、カバーなどを装着してもポケットに収まりやすそうだ。

 また、本体の開閉についてもヒンジが改良されたためか、動きがスムーズになり、開閉がしやすくなった印象だ。

 個人的にはGalaxy Z Fold4を使っていて、「意外に開かないな」という印象を持ったことを本誌の「みんなのケータイ」でお伝えしたことがあったが、開閉の動作が軽くなったことで、端末を広げて使うシチュエーションが一段と増えてくるかもしれない。

 カメラ周りについては基本的に従来モデルと同じ仕様なので、今回の試用では違いがわからなかった。

 しかし、Galaxyシリーズに限らず、画像処理のソフトウェアは常に更新されているうえ、チップセットが米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyに進化したことで、処理能力が向上していることが推察される。暗いシーンや動きの速い被写体などの撮影などで、試してみたいところだ。

 チップセットに関連するところでは、ベイパーチャンバーが38%大型化したとのことで、ゲームなどの高負荷のアプリでもパフォーマンスを低下させないようにしている。

 この点も試用時間が短いため、何とも言えない部分があるが、カメラ機能の何度か試しているようなシチュエーションでもあまり熱を感じることはなかった。炎天下などでの利用も試してみたいところだ。

 さらに、「Galaxy Z Fold」シリーズでは2021年発売の「Galaxy Z Fold3」から「Galaxy Note」シリーズなどで採用されてきたSペンに対応している。

 ただし、「Galaxy Note」シリーズのように、本体には格納できないため、フォルダブルの本体を保護する意味合いもあり、Sペンを格納できるカバーが販売されている。

 今回の「Galaxy Z Fold5」向けには、従来モデル用よりも56%スリム化した「S Pen Fold Editon」が提供される。Sペンについては従来モデルに引き続き、「Samsung Notes」や「GoodNotes」などのペン対応アプリが利用できる。

 全体的に見ると、ヒンジの改良により、2つの筐体をぴったり合わせられる構造に進化したことで、仕上がりがグッと美しくなった印象だ。開閉時の動作も軽くなり、画面を広げて活用するシーンが増えそうな内容だ。

 ユーザーインターフェイスもタスクバーに表示できる使用履歴アプリをより多く表示できるようにしたり、分割表示を操作しやすくするなど、着実に改良が進められている。国内向けの発売が楽しみな一台と言えるだろう。

Galaxy Z Flip5

 「Galazy Z Fold」シリーズでフォルダブルスマートフォンという新しい世界を切り開いたサムスンが2020年2月に発表したのが「Galaxy Z Flip」シリーズであり、その最新モデルとなるのが「Galaxy Z Flip5」だ。

 「Galaxy Z Flip」シリーズは「Galaxy Z Fold」シリーズ同様、有機ELの曲げられる特徴を活かし、フォルダブルというスタイルを実現しているが、「Galaxy Z Fold」シリーズが文庫本のように端末を横開きするスタイルを採用しているのに対し、「Galaxy Z Flip」シリーズは端末を縦方向に開閉するスタイルを採用。かつてのケータイを彷彿させる折りたたみデザインに仕上げられている。

 今回発表された「Galaxy Z Flip5」も従来の「Galaxy Z Flip4」を正常進化させたデザインに仕上げられているが、「Galaxy Z Fold5」同様、ヒンジが大幅に改良されたことで、こちらも上下の筐体がぴったりと合わさる仕上がりとなっており、折りたたんだときのヒンジの内側部分の空間もほぼ見えない。

 本体を広げたときの厚みは従来と同じ6.9mmだが、折りたたんだときのヒンジ部分は約2mm薄くなり、ウェッジシェイプ(くさび形)だった折りたたんだときのスタイルが2枚の板状の筐体がぴったりと重なり、ほぼフラットな形状に仕上げられている。

 重さについてはまったく同じだが、ヒンジ部分のスリム化により、一段と持ちやすくなった印象だ。ちなみに、ヒンジ部分の構造が変更されたが、IPX8規格準拠の防水対応は継承されている。

 今回の「Galaxy Z Flip5」で、もっとも大きく変わったのは、端末を閉じたときの外側に搭載されたカバースクリーンだろう。

 従来の「Galaxy Z Flip4」も1.9インチの有機ELディスプレイを搭載していたが、「Galaxy Z Flip5」では上筐体の外側部分のうち、デュアルカメラとLEDフラッシュを除く部分を覆う3.4インチの有機ELディスプレイが搭載されている。

 「Galaxy Z Flip」シリーズではカバーディスプレイを使うことで、メインカメラでセルフィーを撮りやすくするなどのアドバンテージを実現してきたが、ディスプレイサイズが大きくなったことで、「Flex Window」として、多彩な機能を利用できるようにしている。

 たとえば、スマートフォンに通知があったとき、端末を開かなくても内容を確認できるだけでなく、そのままアプリを起動して、より詳しい情報を得たり、よく使うアプリを表示したり、オリジナル壁紙を設定するといった使い方ができる。

 少し変わったところでは、本体のカバーにブランドなどがプリントされたシートを挟むと、NFCタグを読み取り、カバーディスプレイに連動したアニメーションや壁紙が表示されるしくみが用意されている。

 今回はデモコーナーで目についたポテトチップスの「Pringles」のプレートを選んだところ、同製品のキャラクター「Mr.P」のアニメーションが表示された。コンテンツの連動をうまく仕掛ければ、自分だけのスマートフォンらしい楽しみ方ができそうだ。

 また、端末をL字に曲げた「Flex Mode」では、画面を上下に分割した使い方ができるが、画面左下に「Flex Mode」アイコンが表示されるようになり、それぞれの機能を使いやすくしている。

 たとえば、下側の画面にタッチパッドを表示して、上側の画面に表示されたアプリを操作しやすくしたり、通知パネルを表示したりできる。さらに、下画面に別のアプリを一覧から起動できるようにもしている。

 カメラについては基本的に同じ仕様だが、「Galaxy Z Flip5」でも触れたように、チップセットが米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyに変更されたため、画像処理などのプロセスが改善され、最終的な画質も向上していることが期待される。

 このあたりは国内向けの実機が入手できた段階で、あらためてチェックしてみたいところだ。

 全体的に見ると、「Galaxy Z Flip5」は従来モデルからカバーディスプレイを大型化することで、コンパクトな持ちやすさに加え、端末を開かなくても楽しめる新しいスタイルを提案しようとしている印象だ。

 フォルダブルというカテゴリーでは「Galaxy Z Fold」が先行しているが、サムスンとしては従来の「Galaxy Z Flip」シリーズを若い世代や女性などに訴求したいようで、現在、同社がプロモーションや今回のGalaxy UNPACKEDのタイトルでも使っている「Join the Flip Side」というキャッチフレーズからもわかるように、これからは「Galaxy Z Flip」シリーズを一段と積極的に展開していきたいのかもしれない。

 そんなことを感じさせるほど、完成度の高い「Galaxy Z Flip5」だった。こちらも国内向けに発売されることが楽しみなモデルと言えそうだ。