石野純也の「スマホとお金」

UQ新料金プランは本当に「ahamo」や楽天モバイルに対抗できる内容なのか

 6月1日に、UQ mobileが新料金プランを導入しました。5月までの「くりこしプラン +5G」はデータ容量別にS/M/Lと3つに分かれた料金体系でしたが、新料金プランでは、それぞれに特徴がつけられ、「ミニミニ」「トクトク」「コミコミ」の3種類が用意されています。その大まかな特徴は、前々回の連載で紹介したとおりです。

 中でもUQ mobileが力を入れているのが、10分間の音声通話や20GBのデータ容量がセットになったコミコミプランです。このプランは、ドコモの「ahamo」や、楽天モバイルが同日に開始した「Rakuten最強プラン」への対抗を強く意識したものです。一方で、細かな点では違いもあり、まさに一長一短。ここでは、そんな違いをまとめていきます。

ahamo、Rakuten最強プラン対抗で登場したコミコミプラン、そのお得度を検証した

データ容量は減ってもお得度アップのコミコミプラン、ARPU底上げに貢献か

 UQ mobileのコミコミプランは、くりこしプラン +5GのLプランに相当する料金プランです。新料金プランのうち、ミニミニプランやトクトクプランはいわゆる“素の価格”である割引前価格が上がり、「自宅セット割」や「家族セット割」が半ば前提になってしまった一方で、コミコミプランにはこうした複雑な条件はありません。料金は3278円の一本勝負。1人で契約しても、auでんき、auひかりがなくてもこの価格です。

 この3278円で20GBのデータ通信が利用できます。前身と言えるくりこしプラン +5GのプランLは25GBだったため、5GBほど容量は下がってしまいましたが、そのぶん、素の価格は安くなっています。また、音声通話定額がセットになっているのもコミコミプランの特徴。無料になるのは1回10分まで、以降の通話には30秒あたり22円の通話料がかかります。

前身となるくりこしプラン +5GのプランLより、データ容量は減った格好だが、そのぶん料金は安くなった

 UQ mobileでは、1回10分の通話定額をオプションの「通話放題ライト」として880円で提供しています。これをくりこしプラン +5GのプランLにつけると、料金は4708円。自宅セット割を適用しても3850円かかっていたため、3278円のコミコミプランは値下げになっていることが分かります。

 コミコミプランは、くりこしプラン +5GのプランLよりデータ容量が5GB減ってしまっていますが、それを補うために「増量オプションII」をつけても3828円で利用が可能。条件をそろえた場合でも、割引適用“後”のLプランより安く利用できます。シンプルになり、かつリーズナブルになった背景には、プランLのテコ入れをしたかったという思惑があります。最上位プランのお得さに磨きをかけることで、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)を底上げしていく狙いもありそうです。

新旧料金プラン比較。条件をそろえても、コミコミプランの方が安くなることが多い

対ahamo、対Rakuten最強プランを検証、お得さは一長一短?

 UQ mobileは、もともとワイモバイルを直接の競合にしており、料金体系も比較的近かった印象です。一方で、コミコミプランでは、その矛先をahamoやRakuten最強プランに変えてきたことがうかがえます。ahamoやRakuten最強プランは、割引なしの素の価格で勝負している料金プラン。音声通話定額もセットになっています。コミコミプランは、こうしたプランに条件をそろえたと言えるでしょう。

ahamoはシンプルなワンプランで、Rakuten最強プランもこれに近い。コミコミプランはあくまでいちプランだが、ここに対抗した格好だ

 ただし、金額や諸条件に違いもあります。対ahamoでは、データ容量は同じ20GB。容量超過後の速度が1Mbpsに低下する点も同じです。一方で、金額はコミコミプランが3278円なのに対し、ahamoは2970円と、ahamoの方が308円安くなっています。そのぶん、音声通話が無料になる時間はコミコミプランが10分、ahamoが5分と2倍の違いがあります。料金がやや高いぶんだけ、通話が多くできるのがコミコミプランと言えそうです。

 対ahamoでコミコミプランの弱点になりそうなのが、国際ローミングです。UQ mobileの国際ローミングは、auと同じ「世界データ定額」が利用でき、料金は事前予約をして「早割キャンペーン」が適用された場合で1日490円(不課税)。アメリカや韓国、台湾以外の国や地域では1日690円(不課税)になります。事前予約がない場合の料金は、1日980円です。これに対し、ahamoの国際ローミングは無料。対応しているのは82の国や地域で、ドコモのほかのプランよりは少なめですが、料金が一切かからないのはうれしいポイントと言えそうです。

ahamoとコミコミプランの主な比較。料金はahamoの方が安いが、UQ mobileは無料通話時間が長い

 逆にRakuten最強プランとは3278円で金額が横並びですが、データ容量に違いがあります。Rakuten最強プランの3278円は、20GBを超えたあとの無制限でかかる金額だからです。同プランで20GBまでにデータ通信を抑えた場合、料金は2178円まで下がります。データ容量という条件をそろえると、Rakuten最強プランの方が1100円安くなるというわけです。

金額面では、Rakuten最強プランがUQ mobileをリードする

 また、楽天モバイルの音声通話は、「Rakuten Link」経由という条件つきではありますが、時間や回数に制限なく無料になります。KDDIによると、10分あれば9割の通話を無料でカバーできるというものの、Rakuten Linkであれば、残りの1割も無料になります。コールセンターに電話してなかなかオペレーターにつながらず、待たされてしまう場合などにはRakuten Linkの方が安心して使えると言えそうです。さらに、ahamoと同様、楽天モバイルも国際ローミングは無料。2GBまでと制限はありますが、その範囲であれば追加の料金はかかりません。

 対Rakuten最強プランという観点でコミコミプランを見た場合、優位性は料金や通話時間などの条件ではなく、通信エリアやショップの数といったインフラ面になりそうです。Rakuten最強プランもKDDIのエリアをローミングで利用できるものの、使えるのは800MHz帯のみ。速度的には、キャリアアグリゲーションをフルに使えるUQ mobileに軍配が上がります。また、ショップの数やショップでできることの多さも、UQ mobileに軍配が上がります。こうした点をどこまで重視するかで、コミコミプランへの評価は変わってくるはずです。

料金に表れない場所でも、UQ mobileとの差は大きい

対ワイモバイルでも強いコミコミプラン、SBはLINEMO訴求が必要か

 もともとUQ mobileは、ワイモバイル対抗を強く意識した料金プランを打ち出していましたが、コミコミプランを投入したことで、ahamo/Rakuten最強プラン対抗の色合いが濃くなりました。KDDIに近いブランドや料金がなかったこともあり、UQ mobileがその役割を担うようになったと言えるでしょう。とは言え、対ワイモバイルという点でも、コミコミプランは競争力を持っていることが分かります。

ワイモバイルの現行料金プランは、UQ mobileの5月までのそれに近い

 ワイモバイルは「シンプルプラン」の中に、S/M/Lと3つのデータ容量を用意しています。この点は、UQ mobileの旧料金プランと同じ。UQ mobileのコミコミプランと直接競合するのは、「シンプルL」になります。こちらの料金は、4158円。データ容量は25GBです。余ったデータ容量を翌月に繰り越すことも可能です。また、割引に関しては「家族割引サービス」で、2回線目から1188円安くなります。

 まず、金額ですが、これはコミコミプランに軍配が上がります。データ容量は5GB少ないのが玉にきずですが、10分の音声定額がつき、ワイモバイルのシンプルLよりも880円安くなります。コミコミプラン側に増量オプションIIをつけ、データ容量を25GBにそろえた場合でも3828円と、料金的な優位性を保っています。コミコミプランに改定したことで、ワイモバイルと比べたときの強みも増した格好です。

 また、コミコミプランと同額で3278円の「シンプルM」は、データ容量が15GBと、やや少なめ。音声通話定額もオプションで、1回10分の「だれとでも定額」をつけると、金額が4048円まで上がってしまいます。コミコミプランに条件をそろえるため、「データ増量オプション」をつけると、さらに高くなり、4598円に。ahamoやRakuten最強プランに対抗できる料金プランとして建てつけたこともあり、対ワイモバイルでも優位性はあります。

コミコミプランとワイモバイルのシンプルM、Lを比較。条件をそろえると、コミコミプランの強さが際立つ

 前々回の連載で指摘したとおり、UQ mobileの新料金プランはミニミニプラン、トクトクプランで改悪になった部分もある一方で、対ワイモバイルでは料金の優位性があるような建付けになっています。こうした点をふまえると、UQ mobileの新料金プランは、ワイモバイルをにらみつつ、ahamoやRakuten最強プランに勝負を挑みに行く料金プランと言えるでしょう。

 ただし、ソフトバンク全体で見れば、同社にはオンライン専用プランのLINEMOがあり、データ容量20GBの「スマホプラン」を2728円で提供しています。ここに、5分の音声定額を足すと3278円。UQ mobileとの比較だと通話が無料になる時間は短くなりますが、金額やデータ容量は横並びになり、競争力はあります。どちらかと言えばワイモバイルの影に隠れている印象もあったLINEMOですが、コミコミプランに対抗できる料金プランを展開しているだけに、再び脚光を浴びる可能性もありそうです。

LINEMOは、コミコミプランに位置づけが近い
石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya