石野純也の「スマホとお金」
固定回線のバックアップでモバイル通信を活用、スマホ料金プランの候補は?
2023年4月13日 00:00
4月3日の7時10分ごろ、NTT東日本、NTT西日本の設備で通信障害が発生しました。加入者収容装置の不具合が原因で、フレッツ光やその転用サービスなどの最大44万件に影響が出ていることが発表されています。この通信障害で、インターネットやひかり電話などが利用できない/利用しづらい状況になったといいます。
22年はKDDIの大規模通信障害などが起こり、モバイル通信の冗長性に注目が集まりましたが、不通になってしまう可能性があるのは固定通信も同じ。今回はNTT東西の設備が原因でしたが、プロバイダーなど、その他が原因で通信ができなくなることもありえます。モバイル回線の障害時にはWi-Fiなどを経由して固定回線にオフロードする手段が推奨されていますが、逆もしかり。「home 5G」などの固定代替サービスが出ていることからも分かるとおり、ある程度の速度でよければ、モバイル回線でも固定の代わりになります。
ただ、一般的に、PCなどのデバイスはスマホに比べると通信が発生しやすいため、データ容量が少ない料金プランだとすぐに使い切ってしまうおそれがあります。使い放題の料金プランも、テザリングなどによる外部機器の接続には、30GBや60GBなどの制限がかけられていることがあります。では、緊急時に固定回線のバックアップになりうるのは、どんな料金プランでしょうか。ここでは、その代表例を取り上げていきます。
無制限プランにも制限が、そんなときに便利なpovo2.0
固定回線が使えない、というときに役立つのが、スマホのテザリングです。モバイル回線のため、速度や遅延の面では光回線に及ばないものの、4Gや5Gであれば数十Mbpsのスループットが出るのは一般的。通信障害時に、一時的に固定回線代わりにするなら十分と言えます。たとえば、ドコモの「5G ギガホプレミア」の場合、スマホだけでなく、テザリングまで含めてデータ通信の容量に制限はありません。こうした料金プランを契約している人は、単純にテザリングを有効にすればいいでしょう。
ただ、同じ使い放題の料金プランでも、auの「使い放題MAX」やソフトバンクの「メリハリ無制限」には、テザリング時の制限があります。前者はどちらも、そのデータ容量は30GBです。auの場合、「Netflixパック」や「ALL STARパック」を選ぶと、テザリングの容量が60GBや80GBに増えますが、ソフトバンクにはその手段がありません。数時間程度の代替として使うぶんにはこれでも十分ですが、通信障害発生時にはそれがいつまで続くのかが分かりません。普段からテザリングを利用している場合、その容量が減ってしまうのもネックです。
また、すべてのユーザーが使い放題の料金プランを契約しているとは限りません。大手キャリアであっても段階制の料金プランを契約していたり、サブブランドやオンライン専用プランの小容量プランを選んでいたりすると、テザリングだけで1カ月分の容量が吹き飛んでしまうおそれもあります。MVNOの小容量プランも、同様です。このようなときの備えとして、オススメなのが、一定期間のみ低価格でデータ通信が使い放題になる料金プランです。
1つ目の候補として挙げておきたいのが、KDDIのpovo2.0です。トッピングを購入しなければ維持費は0円。テザリングで思う存分データ通信したいときには、「データ使い放題(24時間)」のトッピングを購入すればよく、固定回線のバックアップになりえます。1回の料金がわずか330円というのも魅力的と言えるでしょう。180日間以上トッピング購入などがないと利用停止や解約になってしまいますが、それを加味しても、維持費は非常に安価です。
モバイルの代替回線を選ぶ場合は、キャリアを分けるのが鉄則ですが、固定回線の代替として使うのであれば、その必要もありません。auの「スマホミニプラン」や、UQ mobileの「くりこしプラン +5G S」を選択している人が、もう1回線予備として持っておくのも手です。出張時にホテルのWi-Fiがつながりにくいときなど、障害時以外でも活躍する余地もあるため、柔軟に使い放題をトッピングできるのは便利です。
ソフトバンクはデータ通信専用3GBプランに無制限オプションが
povo2.0のデータ使い放題に近い仕組みのオプションが用意されている料金プランは、ほかにもあります。ソフトバンクの「データ通信専用3GBプラン」がそれです。筆者も本コーナーで何度か取り上げている同料金プランですが、そのお得さだけでなく、「時間制ギガ無制限オプション」があることも使い勝手のいい理由。一定時間だけ、データ容量を無制限にすることができ、障害時などの一時的な利用にもピッタリです。
時間制ギガ無制限オプションは、全5種類。1時間、3時間、6時間、12時間、24時間に区切られています。1時間なら110円、3時間なら220円と、時間が短ければpovo2.0のデータ使い放題トッピングよりも安価です。様子見や外出するまでの1時間だけ使うといったこともでき、柔軟性があります。申し込みをするとSMSが届きます。終了後は普段のデータ容量を使用してしまうため、時間を気にしながら使うようにするといいでしょう。
povo2.0と比較した際の弱点は、その維持費です。料金は1408円と、3GBプランとしては少々高め。ただし、契約翌月から5年間割引が適用され、990円まで料金が下がります。また、本連載でも言及しているように、同料金プランも「ソフトバンクプレミアム」の対象。ソフトバンクプレミアムには、還元率の高いPayPayクーポンが含まれているため、これで“元を取る”ことは可能。クーポンを駆使すれば、990円以上の還元を受けられるのも魅力です。
また、MVNOまで視野を広げると、使い放題のオプションは選択肢が広がります。mineoの「マイそく」も、そんな料金プランの1つです。マイそくは、普段の通信速度が料金プランに応じて32Kbpsから3Mbpsに制限されているほか、正午から13時までの通信も32Kbpsに落ちますが、24時間有効な「24時間データ使い放題」を適用することで、それを解除できます。元々通信速度別の料金体系を採用しているため、容量制限はありません。
バックアップ用途には、32Kbpsの「マイそく スーパーライト」がオススメ。通信料金が250円に抑えられるうえに、24時間データ使い放題も1回198円と安いのが特徴です。povo2.0より維持費は高くつきますが、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社から回線を選べるため、よく使う場所で通信環境がいいキャリアを選択するといったことも可能です。ただし、MVNOは、通信の混雑時間に速度が出なくなることもあります。通信できないよりはいいのですが、こうしたデメリットも念頭に置いておきましょう。
大量の通信には制限も、あくまでバックアップとして使うのが正解か
ただし、バックアップといってもあくまでモバイル回線のため、あまりに大量のデータを流してしまうと、制限の対象になってしまう可能性があります。固定回線の代わりと一口に言っても、人によって使い方は様々。たとえば筆者の場合、NAS経由で取材時に撮影した写真や動画をすべてGoogleドライブにアップロードし、バックアップしています。普段は数十GBで済みますが、初期設定時にはTB単位で通信をしており、こうした使い方をしていると、機械的な大量の通信と判断されてしまう可能性も捨てきれません。
たとえば、先に挙げたソフトバンクの時間制ギガ無制限オプションは、サービス提供条件として、制御対象になる通信があることが明記されています。現時点では制御中の水準は未定となっていますが、動画やAR、VR、クラウドゲームなどのサービス利用時の速度が、一定程度まで制限できるよう、条件が定められています。
この制限に加え、一定期間に大量の通信を継続的に行った場合や、機械的な通信と判断されてしまった場合にも、速度が制限される可能性があります。もう少しユーザー側で判断できるよう、緩やかにでも基準を明らかにしてほしいところですが、ギリギリを攻める人が出てきてしまうこともあり、例示が難しいのが実情のようです。ちなみに、筆者も時間帯無制限オプションを使い、3時間で1.5GBほどデータ通信したことはありますが、特に制限らしい制限はかかりませんでした。この程度であれば、あまり気にする必要はなさそうです。
似たような規約は、他社にもあります。povo2.0のデータ使い放題にも、「ネットワークの混雑時や動画・クラウドゲームなどの利用時に通信速度を制限する場合があります」との注釈が記載されています。データ容量が無制限の料金プランでは、万が一のためにこうした規約があるのが一般的。先に挙げたドコモの5Gギガホ プレミアにも、やはり機械的な大量発信や設備に影響がおよぶようなコンテンツ、アプリでの通信には制限をかけることが明記されています。
とは言え、かつてのように、3日間で何GBといった一律の制限はなくなりつつあります。筆者もドコモ回線で月数十GBは通信していますが、特に制限がかかっているようなことはありません。固定回線の不通時のバックアップとしては、十分なスペックになっていると言えるでしょう。自宅に設置したルーターに多数の機器がつながっている場合など、すべてのケースはカバーできませんが、PCなど、メインで通信するデバイスはある程度、テザリングでもカバーすることができそうです。