石野純也の「スマホとお金」
「au/UQ/povoの事務手数料値上げ」、ドコモやソフトバンク、楽天とあらためて比較
2023年4月6日 00:00
KDDIは、4月20日に各種事務手数料を値上げします。これまでは、新規契約や機種変更、SIMカードの再発行など、手続きごとに手数料の額が異なっていましたが、4月20日の改定後は、金額を統一。すべての手続きが、3850円に上がります。3300円だった手続きに関しては550円の値上げですが、2200円のものは1650円と値上げ幅も大きくなるため、注意が必要です。
この事務手数料、大手キャリア各社は一律のように見えますが、実際には細かな違いもあります。代理店への支払いがないオンラインショップでは、手数料を無料にしているキャリアも。一見すると同じようにも思えますが、完全に横並びではないというわけです。3850円というと、オンライン専用プランなら1カ月~4カ月分程度の料金に相当するため、ばかになりません。この事務手数料を改めて比較してみました。
幅広い手数料が一律3850円に、ただし無料継続の手続きも
まずは、4月20日に改定される、KDDIの事務手数料をチェックしていきましょう。もともと同社では、au、UQ mobileに共通の事務手数料を採用しており、新規契約、機種変更、SIMカードの再発行など、それぞれに料金がかかっていました。また、利用頻度は低いかもしれませんが、電話番号の変更や一時休止、回線の譲渡などにも手数料はかかります。
金額は、新規契約が3300円。機種変更は通常であれば2200円で済みますが、4Gから5Gにアップグレードする契約変更が伴う場合は、新規契約と同じ3300円の手数料がかかります。また、SIMカードの再発行やeSIMからSIMカードへの切り替えにも、2200円の手数料が発生します。SIMカードの再発行も機種変更に準じており、同時に契約変更を行うと、手数料は3300円に上がります。eSIMの再発行やSIMカードからeSIMへの変更も同じです。
ただし、eSIM再発行の場合、例外として料金が無料になることもあります。「My au」や「My UQ mobile」といったオンライン上で、再発行手続きをする場合がそれです。
また、iPhoneに実装されているeSIMクイック転送を使った場合も裏では再発行のプロセスが走っていますが、通信方式の変更がなければ手数料はかかりません。eSIMはSIMカードとは異なり、別の機種に移すだけで再発行が必要になるため、その配慮と言えるでしょう。
このほか、電話番号の変更や一時休止に2200円、回線の譲渡に2970円の手数料が発生します。こうした手数料は、auやUQ mobileの場合、オンラインでも同じです。手数料は、その一部が代理店への支払いなどに充てられています。人やシステムを動かす以上、無料で済ませることはできないというのが実情。そのため、各社とも何らかの手数料は徴収しています。
「機種変更だけでなぜ手数料がかかるの?」と思う向きもあるかもしれませんが、機種変更は単にSIMカードを差し替えているだけではありません。システムへの登録をはじめとした各種手続きをしています。キャリアはこの情報に基づき、故障時のサポートなどを提供しています。これが、手数料のかかる理屈です。一方で、ユーザー自身がSIMフリーの端末を自ら購入し、自身でSIMカードを挿しかえるのであれば、手数料はかかりません。この場合、キャリア側にはユーザーが機種変更したという情報は伝わっていないことになります。
冒頭で述べたように、これらの手数料が4月20日から、一律で3850円に値上げされます。KDDIが挙げている理由は、サービスの多様化や説明事項の増加。一言でまとめるなら、ショップスタッフの作業が煩雑になり、今の手数料体系では割に合わなくなったということでしょう。同様のことは他社にも当てはまるため、今後、追随するキャリアが出てきても不思議ではありません。
ただ、リアルなショップに比べると手がかからないオンラインショップまで一律で値上げになるのは、やや不可解です。無料とまではいかないまでも、事務手数料を分けるような対応があってもいいでしょう。
実際、今のところ手数料の改定を発表していないNTTドコモやソフトバンクは、リアルなショップとオンラインショップでかかる金額が異なります。また、楽天モバイルはそもそも手数料がかかる手続きが限定的です。
ドコモ、ソフトバンクは新規、機種変がオンラインは無料、eSIMも
たとえば、ドコモの場合、ドコモショップで手続きすると、新規契約や機種変更で手数料がかかります。料金は新規契約が3300円、機種変更が2200円です。契約変更の場合、機種変更を伴っていても手数料が3300円になる点は、auやUQ mobileと同じです。
ソフトバンク/ワイモバイルは、新規契約と機種変更が同じ3300円。通信方式の変更の有無に関わらず3300円かかるため、4月19日まではやや割高と言えるでしょう。
一方で、ドコモ、ソフトバンクともに、オンラインショップを利用するとこの手数料が無料になります。
オンラインでも在庫を抱えておくためのスペースやシステム、物流、サポートなどは必要になるため、実際にはキャリアの持ち出しになっている部分はありそうですが、リアルなショップを構えるよりもコストが低いのも事実。代理店ではなく直営になるため、この部分でも手数料を削減できます。こうした点を反映しつつ、差別化のために無料化したというのが2社のオンラインショップです。
2200円もしくは3300円と言っても、ばかにはできない金額です。購入する端末が安ければ安いほど、手数料が占める割合が大きくなってしまうからです。
特に、19年10月の電気通信事業法改正以降、売れ筋になったミドルレンジ以下の端末の場合、価格は2万円~5万円程度。その1割前後にあたる金額が手数料としてかかってしまうのは、やはり割高なように感じます。各社ともオンラインショップが伸びているのは、ライフスタイルが変化だけでなく、こうしたお得感も影響している可能性がありそうです。
ちなみに、細かな点ではドコモとソフトバンクに違いもあります。店頭受取を選択した場合の手数料です。
ドコモは、自宅への送付と店頭受取のどちらも無料なのに対し、ソフトバンクは店頭受取の場合のみ、3300円の事務手数料がかかります。代理店であるソフトバンクショップを利用しているため、仕方がない点かもしれませんが、3300円は少々割高です。ただし、現時点では、店頭での受け取りに対応した端末はないようです。
ドコモはショップで受け取るだけなら無料ですが、端末を受け取ったあと、初期設定のサポートを受ける場合は有料になります。ドコモショップの来店予約をしたあと、3300円の「初期設定サポート」を申し込むと、dアカウントやApple ID、Googleアカウントなどの設定に加え、データ移行をサポートしてもらえます。店舗利用の有無ではなく、サポートの有無で料金を分けている点は、納得感がある料金体系と言えるかもしれません。
SIMカードの変更の手数料は、ドコモが2200円、ソフトバンクが3300円です。
ただし、ドコモはドコモオンラインショップだと手数料が1100円に下がるほか、eSIMはキャンペーンで無料にしています。
また、ドコモはiPhoneのeSIMクイック転送にも対応しましたが、こちらを利用したeSIMプロファイルの発行、再発行にも料金はかかりません。ソフトバンクも、オンラインでのeSIM発行や再発行は無料です。
ほとんど全部タダの楽天モバイル、サブブランドは裏技も
これに対し、第4のキャリアである楽天モバイルは新規契約や機種変更の手数料がすべて無料です。
eSIMの再発行はもちろん、SIMカードの交換にも料金はかかりません。SIMカード、eSIMの種別などは問わず、ショップで手続きしても、オンラインで契約しても、金額は変わりません。あまり語られることはありませんが、この点は大手3キャリアに対する楽天モバイルの料金的な優位性と言えるでしょう。契約や機種変更がしやすいのは、いちユーザーとしても歓迎できます。
新規契約や機種変更だけなら、ドコモやソフトバンクでもオンラインショップを使えば無料になりますが、楽天モバイルの場合、改正や家族間譲渡、第三者譲渡まで手数料は徴収していません。1GB以下0円の「UN-LIMIT VI」を廃止してしまった楽天モバイルですが、そのほかの点では、2020年11月に出した「ZERO宣言」を守っていると言えるでしょう。ただし、契約者が死亡し、それを継承する場合のみ、3300円の手数料がかかります。
また、毎月の料金を銀行口座振替にしている場合、その手数料が110円かかります。クレジットカードで支払えば回避できる話ではありますが、何らかの事情でそれができない場合もあります。たとえば、大学に進学したばかりで自分のクレジットカードを持っていないといったケースも考えられます。このようなときには、110円の手数料が毎月かかる点には注意が必要です。
ちなみに、大手3社には口座振替手数料がありません。逆に、ドコモやKDDIは、dカードやau PAYカードといった自社カードで支払った場合の割引を設定しています。ドコモは「dカードお支払い割」、KDDIは「au PAYカードお支払い割」という名称で、それぞれ、割引額は187円です。
以前はいわゆる“2年縛り”と言われる期間拘束がありましたが、省令で、それがない場合との料金差に187円までという制限がかかりました。この状況に対応するために生まれたのが、クレジットカードによる割引です。期間拘束しない代わりに187円高くした一方で、それを割り引くというロジックです。
なお、 大手キャリアでも、サブブランドの場合、新規契約の手数料は裏技的に下げることができます 。Amazonなどで販売されている「エントリーパッケージ」と呼ばれるコードを購入するのが、その方法です。サブブランドだけでなく、MVNOも同様の施策を行っていますが、これを利用すると、3300円の新規契約手数料が数百円レベルまで下がります。
実際、4月4日時点では、UQ mobile、ワイモバイルともに350円でエントリーパッケージが販売されています。KDDIの手数料が値上げになっても、こうした手を使えば、新規契約の手数料を抑えることはできそうです。MVNOを契約する際にもお得なため、ぜひチェックしてみてください。