スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

OM SYSTEMのミラーレスカメラ「OM-1」を仕事に使ってゆきたいッ!!!

OM-1を気に入っているのだが、物撮りは「?」

 OMDS(OMデジタルソリューションズ)のミラーレスカメラ「OM-1」。昔はOMシリーズ一眼レフカメラ(フィルムカメラ)をガシガシ使っていたので、その「OM-1」を冠したデジタルカメラに「うっ!」と思いつつ懐かしさもあってガスッと購入。

 使ってみたら、さすがOM SYSTEMブランドのフラッグシップカメラだけあって、高性能で多機能で軽くて堅牢。PCと接続してテザー撮影するためのソフトウェアも揃っており(無料)、しかも使い勝手が良かった。

 先日は屋外での商品撮影に使ってみたが、やっぱり小型軽量のOM-1はイイ。単純にカメラが軽いので疲れず携行でき、アクティブに撮影できる。それとOM-1はAFが高速で正確で非常に良好。さらにボディ内手ぶれ補正(最高補正能力7段)に加え、対応レンズならシンクロ手振れ補正が機能して最大8段の手ぶれ補正効果がある。高い機動力を持ちつつブレもしっかり抑えられて効率よく撮影できるOM-1なのであった。

 それとOM-1、以前に使っていたオリンパス「OM-D E-M1 Mark II」と比べると、発色傾向も変わった!? 色乗りがよくなった感じで、納得感の高い色味の写真が撮れるようになった気がする。ロケ用カメラとして機能性も画質も非常にイイ感じになった。

2016年2月に購入して長らく使ってきたオリンパス「OM-D E-M1 Mark II」(生産完了)。レンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」と組み合わせていた。発色は(初期設定では)抑えめという印象だった。

 OM-1はサクサク動作するしAFも正確だし手ぶれ補正もスゲく効く。しかも小型軽量。仕事カメラとして十分ツカエるのだが、一点、俺的に納得いかない要素がある。

 それはティルト撮影(アオリ撮影)ができる(しっかりした)マイクロフォーサーズ規格レンズがないこと。ティルト撮影ができる良いレンズがあれば、机上に被写体を置いての商品撮影をガッツリこなせる。だが、マイクロフォーサーズ規格のティルト撮影対応レンズは、オリンパスからも出てこなかったし、OMデジタルソリューションズのOM SYSTEMからも出てこない雰囲気だ。

ティルト撮影ってナニ? 商品撮影がどう捗るの?

 ティルト撮影とは、ピント面をレンズの真正面以外にも変化させられるレンズだ。その多くのユースケースをザックリと言うと「机上に並べた被写体全体にピントを合わせた撮影ができる」という感じ。

ティルト撮影対応レンズで、ティルト機構を使わずに撮ったもの。被写体手前にピントを合わせたが、被写体奥にはピントが合わずにボヤけている。ちなみに絞り値はf8.0。
こちらはティルト機構を使って撮ったもの。被写体全体にピントが合っていることがわかる。こちらの絞り値もf8.0だ。

 ティルト撮影対応レンズは各社から発売されてはいるが、画質的にも信頼性的にもメジャーと言える製品は、キヤノンとニコンの製品。キヤノンからはTS-Eシリーズレンズ(TSはTilt Shift)、ニコンからはPCシリーズレンズ(PCはPerspective Control)が発売されている。どちらもティルト撮影に加えてシフト撮影も行える。キヤノンのラインナップがスゴいので、商品撮影のプロはTS-Eシリーズレンズを使う人が多いようだ。

 シフト撮影は被写体の遠近感を調節したりできる。下から見上げた建物の上が窄まっていない写真が撮れたりするので、建築写真などに多用される。シフト機構を使うと、被写体へのカメラ自体の写り込みを“避ける”こともできる。

 ティルト撮影やシフト撮影はキヤノン「TS-Eレンズスペシャルサイト」にわかりやすい説明がある。ので、詳細はソチラを。

ティルト機構の動作イメージ。※キヤノン「TS-Eレンズスペシャルサイト」より抜粋。
シフト機構の動作イメージ。※キヤノン「TS-Eレンズスペシャルサイト」より抜粋。

 俺の場合、キヤノン「TS-E50mm F2.8L マクロ」とキヤノン「TS-E24mm F3.5L II」を使用中。ブツ撮りに使いやすいと思われるのは90mmや135mmのTS-Eレンズかニャーと思うのだが、俺的撮影環境って狭いんスよ。被写体と十分な距離を置いての(被写体から離れて歪みをなるべく抑えての)撮影ができないので、これら2本でどうにかしている。

 どちらもマニュアルフォーカスレンズで、カメラはキヤノン「EOS 5Ds R」を使うことが多い。アダプターを介してキヤノン「EOS R5」で使うことも少々。

キヤノン「TS-E50mm F2.8L マクロ」をメインで使用中。最短撮影距離は27.3cmで「寄れるティルトレンズ」として衝撃的に使いやすい。実勢価格は30万円前後。
キヤノン「TS-E24mm F3.5L II」は「もうこれ以上被写体から遠ざかれず、被写体が画面に収まりきらない」という場合に使ったりしている。やや邪道。最短撮影距離は21cmで使いやすい。あとこのレンズ、発色がすっごーくイイ。実勢価格は24万円前後。

 こういった特殊なレンズを使わずとも、机上の被写体全体にピントを合わせた撮影ができないことはない。具体的にはなるべくf値を大きくして撮ることだ。しかし、f値を大きくするとレンズに回析現象が発生し、画質が低下(コントラスト低下などして“ネムい画像”化)する。

 またf値を大きくしても「より幅広くピントが合ったように見えるだけ」で、実際のピントはある1面だけに合っている。ティルト機構はそのピントが合った1面を被写体表面に沿うようにコントロールできる。同時にレンズ性能をよく発揮できるf値に設定してピント面をコントロールできるので、f値を大きく上げて撮った写真とレベル違いのシャープさと画質で撮影できるというメリットがある。

 スゴいんですよTS-Eレンズ。斜めか被写体を撮っても、その表面にシャキーッとピントが合うし、f値を少し上げると表面上下にもピントがよく合ってるように見える。使い慣れると一発でオッケー合格グッジョブな商品撮影ができ、非常に効率的なのだ。

もしやOM SYSTEMはコンピュテーショナルフォトグラフィーでティルト撮影?

 んもぅーなんでOM SYSTEMとかはマイクロフォーサーズのティルトレンズ出さな……あっ、もしかして、ごく僅かなユーザーしか買わないしスゲく高価になっちゃうティルトレンズとかいうハードウェアなど開発せず、被写体全面にピントを合わせることをコンピュテーショナルフォトグラフィーでやろうとしてる? ……のかもしれない!!!

 OM-DシリーズやOMシリーズには、けっこう進んだコンピュテーショナルフォトグラフィー機能が搭載されている。たとえばライブコンポジットなんてのがあるが、使うと夜景撮影が爆発的に捗ったりする。

オリンパスOM-Dシリーズカメラでライブコンポジット撮影をしている様子。基本的には比較明合成撮影で、新たに現れたより明るい光を追加して多重露光していく。ライブコンポジットは、その様子をライブビューで逐一確認できる。左は「もうちょっとクルマのテールライトの光が欲しい」というところ。テールライトの光がさらに合成されるまで待ちつつ、「このくらいでいいかな」と確認できたのが右。一般的な比較明合成撮影をスゲく簡単に行えるようにしたコンピュテーショナルフォトグラフィー機能だ。現在では多くのデジタルカメラにこれに近い機能が搭載されている。

 ほかにも、複数枚の写真を合成して80MPや50MPの高画素画像が得られるハイレゾショット、本来ならNDフィルターが必要となるスローシャッター写真表現を可能にするライブND、深度合成、HDR撮影などのコンピュテーショナルフォトグラフィー機能がある。そのうちの「深度合成」という機能を使うと、ティルト撮影っぽい「被写体全体にピントが合った撮影」ができる。

 この深度合成は、ピント位置をズラした写真を複数枚撮影し、カメラ内で「ピントが合った部分だけを合成する」という機能。OM-1の場合は、被写体に応じて合成枚数を3~15枚に設定できる。これとは別に、外部アプリの「OM Workspace」を使う場合は、カメラのフォーカスブラケット機能(最大999枚)を利用すると、より緻密な「ピント合いまくり写真」を合成できるようだ。

 深度合成は、かなり前からあった機能で、使ったことはあったが……その後は結局使っていない。かすかな記憶から、「合成スピードが遅い」とか「わりと失敗する」といった物撮りにおけるイマイチな実用性があったような気が……。

 でもすぐ試せる機能なので、このOM SYSTEMのフラッグシップカメラOM-1で試してみた。すると……あら、けっこー自動合成するの速いっスね。撮影自体も速い。あと手持ちで撮影しても、ボティとレンズの手ぶれ補正がよく効いて、鮮明な合成結果になる。カメラのモニターで見ても、悪くない仕上がりだ。

イケるぞOM-1の深度合成、でもやはりTS-Eレンズのほうが……

 ということでさっそく、いつもの物撮り用の照明など用意し、マジメにOM-1の深度合成機能を使っての商品撮影をしてみた。結果、かなりイケることがわかった。便利かも♪

OM-1で単に1枚だけ撮ったもの。被写体の手前だけにピントが合っている。絞り値はf8.0。
OM-1で深度合成(15枚/フォーカスステップ5)撮影したもの。被写体全体にピントが合っている。こちらも絞り値はf8.0。

 なかなかイイ!!! しかも上の写真は手持ちで撮影したもので、シャッター速度は1/60や1/80。ブレてナーイ! テザー撮影もしていて、撮影&深度合成結果をすぐPCに自動転送することもできた。これなら捗るかも!

 ちなみに、これら写真は手持ちで撮っているので、若干被写体の見え方がズレた。ただし深度合成の処理上、写る範囲はビューファインダー上の映像よりも少し狭まる。撮影時にファインダー上にガイドが出るので、どのエリアが深度合成結果として写るかは確認できる。

 ただ、深度合成結果だけを保存するとかPCに転送するとかいうことはできないもよう。ほかの素材も必ず保存もしくは転送されてしまうようだ。15枚撮って合成すると、合計16枚の画像が保存されてしまう。

 なんかこの「深度合成素材も絶対保存」って効率が悪い感じ。でも「深度合成素材は保存しない」って設定もあるんだろうなと思って探してみたが、全然見つからない!

 そこで、OM SYSTEMのお問い合わせ窓口で質問してみることに。窓口対応時間外だったが、AI対応は24時間OK。AIの自動回答に期待してみた。

おっ一発で回答が得られた。やるなOM SYSTEM AI。十数秒で「合成結果だけの保存ができなくて効率が悪い(あとで不要画像を消す必要がある)」ことがわかったゼ!!!

 なお、同じ被写体をキヤノン「EOS 5Ds R」と「TS-E50mm F2.8L マクロ」の組み合わせでも撮ってみた。撮像素子サイズもレンズも全然違うものなので、ご参考までに。

同じ被写体をキヤノン「EOS 5Ds R」と「TS-E50mm F2.8L マクロ」の組み合わせで撮ったもの。
左がOM-1の深度合成で撮ったもので、右がキヤノン「EOS 5Ds R」と「TS-E50mm F2.8L マクロ」の組み合わせで撮ったもの。やや拡大したものを左右に並べてみたが……。

 パッと見、どちらも良好な発色で解像感も十分あり、立派にティルト撮影ができている。だがディテイルを精査してみると、OM-1の深度合成で撮ったものは細部が一部ぼやけた感じになっていたり、コントラストが甘かったりするところがある。

 たぶんフォーカスステップのはざまでピントが十分合っていない箇所があったり、合成が十分うまく行っていない箇所なのだろう。設定を変えて撮ればより良好な結果になるかもしれない。

 一方のキヤノン「EOS 5Ds R」と「TS-E50mm F2.8L マクロ」の組み合わせで撮ったものはバッチリ完璧。EOS 5Ds Rの解像感の高さや、TS-E50mm F2.8L マクロの解像力は、やっぱり素晴らしい。

 余談だが、EOS R5を導入後、EOS R5+マウントアダプター EF-EOS R+TS-E50mm F2.8L マクロで物撮りをしようと試みた。理由は液晶モニター上にピーキング表示ができるから。マニュアルフォーカスのレンズのピント合わせを(老眼鏡と肉眼で頑張らずに)ピーキング表示頼りにしたら快適かニャーと思ったからだ。

 結果、ピント合わせはめちゃくちゃ快適になったものの、画質的にはEOS 5Ds Rのほうがより良かった。ディテイルの解像感の高さがけっこー違うのだ。結局Web記事に使う写真として縮小してしまうが、そういう場合でも元の画像の質の高さはわりと大きく影響してくる。ので、多くのケースでまだEOS 5Ds Rを使っている。

 ただ、OM-1などで使える深度合成にはスゲく大きなメリットが感じられた。それは深度合成機能対応レンズが多々あることだ。OM-1の深度合成に対応しているレンズは具体的に以下のとおり。

OM-1の深度合成に対応しているレンズ
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14
  • M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20

 マクロ撮影から風景撮影から超望遠撮影まで深度合成ができる。今回試したティルトレンズ的な深度合成撮影応用は小さな一例で、ほかにも様々な被写体に対して「被写界深度を極端に深められる」というメリットがあるわけだ。上の深度合成対応レンズを見れば、どんな被写体でも手前から奥までガッツリとピントを合わせての写真が撮れそう。

 ブツ撮りのために深度合成機能を使っての「これはイイ」というメリットも感じられた。大きいのは「ズームレンズでティルト的撮影ができる」ということだ。今回は「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」(35mm版換算24-200mm)を使ったが、ブツ撮り時のカメラセッティングがめちゃラク。キヤノンやニコンのティルトレンズは単焦点なので、被写体サイズに合わせて都度カメラ位置を変える必要があるが、OM-1などの深度合成機能をズームレンズで使うと、カメラの向きをちょっと変えてズームを調節するだけでイケちゃうのであった。

 しかもオリンパスやOM SYSTEMのレンズの多くは「被写体にグッと寄れる(最短撮影距離が短い)」のだ。「うっ、これ以上被写体に寄るとピントが合わない」ってことが少なく、なんかもースゲくラクして机上での商品撮影ができまくりなのである。なので、そのうち、OM-1での物撮りが増えていくのかなーとか思ったりしている。

 てな感じのOM SYSTEMの「深度合成」。フィギュアとか撮るときも、虫や花など非常に小さい被写体を撮るときも、パースの効いた風景写真を撮るときも非常に有用に使えると思うので、興味のある方はゼヒ! 最近では短期間のカメラレンタルなんかも流行っているらしいので、とりあえずレンタルで使ってみるというのもアリかもしれない。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。