スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

LEDライトセイバーでライブコンポジット♪

LEDライトセイバーでライブコンポジット♪

 今年の春頃に購入したオリンパスの「OM-D E-M10」(以下、E-M10)。現在も愛用中です。

 それとはまったく別に、去年の春頃に「ある目的のため購入」したセンチュリーの充電式LEDライト「LEDてるてる棒」。「ある目的」とは長時間露光での商品撮影ですが、それをキッチリと果たすことができ、たいへん満足しました。

 ここで唐突に今回の記事内容の結果を言ってしまうと、E-M10(のライブコンポジット機能)とLEDてるてる棒(でなくても同様の棒状光源なら何でも)を組み合わせて使うと、ヒッジョーにキレイな商品写真を撮影できちゃうんです。つまりブツ撮り。ちょっと巧くすれば「プロ並み」とも言えそうな写真が撮れます。しかも、かな~り手軽に。慣れとか専門知識とかあんまり要らなかったりもします。

オリンパスのミラーレスカメラ「OM-D E-M10」と、センチュリーの充電式LEDライト「LEDてるてる棒」。「LEDてるてる棒」は白い棒状の部分全体が光ります。これらを組み合わせると、手軽にキレイな商品撮影がデキちゃうんです♪
左は室内の天井の照明で撮った写真。右はE-M10でライブコンポジット機能を使い、照明としてLEDてるてる棒を動かしながら使って撮った写真。掲載のため、両写真とも撮影後にホワイトバランス調整とレベル補正をほんの少し施してあります。

 上右の写真は、E-M10とLEDてるてる棒を組み合わせて撮り始めて、数枚目に撮れた写真です。プロが撮る商品写真と比べたら、たとえば一部が白飛びしていたり、「α7S」の「7S」の部分に光が回っていなかったり、レンズフードに汚れが付いていたりして、まだまだ改良すべき点が多々あってスイマセンって感じの写真ではあります。

 でも!! 初めてE-M10とLEDてるてる棒を組み合わせて撮って、数枚目で上右のような写真が得られちゃったって、我ながら言うのもナンですが、スゴくないですか? また、実際に撮影してみると、拍子抜けするほど容易に撮れたりもします。

 ちなみに、上左の写真は、普通の家の天井照明で撮ったもの。上右の写真は、E-M10の撮影モードをライブコンポジットに変えて、天井の照明を暗めにし、LEDてるてる棒を動かしながら被写体を照らして撮ったもの。カメラや被写体の位置は同じです。なのにこんなに違いが出るなんて、再度言いますけど、凄くないですか?

 詳しくは後述しますが、この撮影方法は「カメラを長時間露光にして、棒状の光源を動かしながら被写体を照らす」というもの。「LEDライトセイバーを使った撮影法」として知られています。簡単な機材だけで、「凝った照明を施したような静物小物写真」が撮れる方法なんですが、慣れや経験、それからある程度のネバリが必要な撮影方法です。

 しかし、E-M10とLEDてるてる棒を組み合わせると、普通一般の「LEDライトセイバーを使った撮影法」よりもず~っと簡単に撮れちゃいます。ほんの少し慣れが必要かもしれませんが、誰でもすぐに「普通の環境ではなかなか撮れない美しい静物小物写真」が撮れるようになると思います。

 ともあれ以降、イロイロご説明。どういうコトなの? どうやるの? みたいなあたりを。

ライブコンポジットってナニ?

 まずは、オリンパスのミラーレスカメラ「E-M10」で使える「ライブコンポジット」という機能から。これは夜景撮影や星空撮影などに便利な撮影機能です。

 ライブコンポジット機能は、E-M10内部で自動的に行われる画像合成機能です。合成(コンポジット)方法としては「比較明合成」。この単語をキーワードにして画像検索すると、クルマのライトや夜空の星が、光のスジのように描かれる写真がたーくさんヒットします。ああいう写真を撮るのに適した合成方法なんですな。

 比較明合成は本来、複数枚の写真を撮り、それらを合成して作ります。デジカメで連続撮影し、その写真をPC上のソフトで合成、とか。

 しかし最近では、デジカメ内で自動的に比較明合成を行える機種が増えてきました。たとえばリコー「GR DIGITAL IV」や「GR」の「インターバル合成」機能、キヤノン「PowerShot S120」や「PowerShot G16」や「PowerShot G1 X Mark II」の「星空モード」、ペンタックス「K-3」の「インターバル合成」機能などがそうです。カメラだけで比較明合成されたキレイな写真が撮れちゃうわけですな。

 オリンパスのE-M10のライブコンポジット機能も、カメラ内で自動合成できる比較明合成機能です。で、特徴的なのが「比較明合成がなされる様子をリアルタイムで見られる」ということです。

 たとえばクルマのライトが光がスジとして描かれる写真を撮る場合。ライブコンポジット機能は、あらかじめ設定した露光値(シャッター速度/絞り値)で最初の画像を撮影します。夜景の背景が適切な明るさとなるようにし、1枚撮るわけですな。その写真は画面上に表示されます。

 そして、そこに新たに加わった光があったら、その光だけが最初の写真の上に合成されます。それが自動的に繰り返されます。このとき、最初の写真に、徐々に新たな光が追加されていく様子を画面上で見ていられるというわけです。

E-M10のライブコンポジット機能を使用中のイメージ。最初の写真に徐々に光のスジが追加されていきます。光のスジが増える様子を見つつ、光のスジが好みの量になったら撮影を終了するだけ。カメラ内で自動合成できる比較明合成機能を、とても直感的に使えるんですな。

 ライブコンポジット機能では、従来の自動的な比較明合成機能にアリガチだった「あーちょっと光のスジが多すぎた」「今度は少なすぎだ~」というような失敗が起きにくいんですな。光のスジなどが増えて行く様子を見つつ、「もうちょっと光のスジが加わったらOKにしよう」てなコトとができるのです。

 ライブコンポジット機能については、デジカメ Watchの曽根原昇氏のレビュー礒村浩一のレポートにも詳しく書かれています。美しい作例付きなのでぜひご一読を♪

 なお、ライブコンポジット機能は「OLYMPUS PEN Lite E-PL7」でも使えます。また、「OLYMPUS OM-D E-M1」のアップグレードバージョンにも搭載されるようになりました。もちろん既にE-M1をお使いの方は、カメラのファームウェアを「ver.2」に上げれば使えるようになります。

LEDライトセイバーを使った撮影法って?

 次に、「LEDライトセイバーを使った撮影法」について少々。これは、スタジオやストロボなど専門的な環境や機材を使わず、広告に使われるような美しいライティングの写真を得られる撮影方法です。写真家の伊藤裕一氏が考案した撮影方法だと言われています。

 撮影方法自体はわりと簡単で、カメラと被写体の位置を固定し、カメラを長時間露光(数秒から十数秒のシャッター速度)にします。そしてシャッターが開いている間に、「LEDライトセイバー」と呼ばれる棒状のライトで被写体を手早く照らしていきます。

 この撮影方法の詳しい説明は、「武蔵野電波のプロトタイパーズ」や本連載バックナンバーでも書いています。ともあれ、以下のような写真が撮れたりします。

左が部屋の天井照明だけで撮ったもの、右が「LEDライトセイバーを使った撮影法」で撮ったもの(以下同様)。光源は自作のLEDライトセイバーです。
光源はLEDてるてる棒です。「LEDライトセイバーを使った撮影法」だと、撮影環境を整えなくても、被写体への不要な映り込みを大幅に抑えることができます。
こちらの写真の光源は自作の冷陰極管(CCFL)フリフリライトです。「LEDライトセイバーを使った撮影法」だと、写真の印象がガラリと変わりますな。

 細かな撮影方法は上記リンクにあるとおりですが、上の写真のような「LEDライトセイバーを使った撮影法」は、やや難易度が高い撮影方法です。露出/ピントのマニュアル撮影ができるカメラが必要で、暗室のように真っ暗にできる撮影環境も必要です。

 加えて撮影には「勘」や「経験」が必要だったりもします。ハンディな照明器具で「被写体に光を塗っていくイメージ」で被写体を照らしていくわけですが、「このへんは広めに2秒くらい照らす?」「こちら側は範囲狭めに素早く照らそう」という感じで、自分の感覚を頼りに露光を進めていくからです。撮影者のネバリと試行錯誤が必要という点で、決して手軽とは言えない撮影方法かもしれません。

 ただ、慣れると非常におもしろく、独特の撮影結果が得られるユニークな撮影方法ですので、興味のある方はぜひトライしてみてください。小型LEDライトでのLEDライトセイバー自作が手軽でイイかもしれません。

ライブコンポジットで仕上がりを確認しつつ撮影♪

 けっこー難しかったり失敗しがちだったりする「LEDライトセイバーを使った撮影法」ですが、それは「仕上がりをアタマの中で想像するしかなかったから」です。それゆえ「勘」や「経験」が必要だったんですな。

 でも、撮影方法はそのままに、カメラをライブコンポジット機能が使えるものに変えれば……そうなんです、光の加わり具合をモニターで確認しながら撮影ができるようになります。光の塗り絵でもしているような感覚で、次第にモニター上に画像が現れてきて、ヒジョーに楽しかったりもします。

 それから、「必ずしも部屋を真っ暗にする必要がない」という点も、「ライブコンポジット機能搭載カメラでのLEDライトセイバー撮影」ならではのメリットです。ライブコンポジット機能は「元の写真と比べてより明るくなった箇所のみ合成する」という比較明合成機能だから、部屋が真っ暗でなくても撮影できるんですな。

 普通の長時間露光の場合、シャッター速度が遅いほど、被写体の光の当たった部分が次第に明るくなってしまいます。一方、ライブコンポジット機能は、長時間露光とは違ってシャッターが開きっぱなしでも「新たに明るい部分が現れなければ元の写真に何も合成されないので写真の明るさは変わらない」というわけです。

 と、アレコレ書いてもなかなかイメージしにくいと思います。ので、まずはE-M10のライブコンポジット機能による「LEDライトセイバーを使った撮影法」の実際を動画でご覧ください。

E-M10のライブコンポジット機能を使い、「LEDライトセイバーを使った撮影法」を行っている様子。光源の光が直接レンズに入らないよう注意して、被写体に光を塗っていく感じで撮影を進めます。モニターを見ながらゆっくり露光させられますので、容易に適切なライティング効果が得られると思います。

 ね、簡単な感じでしょ? カメラ側の絞り値やシャッター速度など設定にもよりますが、このようにビデオ撮影ができる程度部屋が明るくても撮影可能です。また、新たに光を加えなければ、時間とともに写真が明るくなったりすることもないので、焦ることなくジックリ撮影を進めていけます。

 このようにして撮った写真を以下に並べてみます。リサイズのみでレタッチはしていませんので、色がおかしかったりしますがご愛敬。また、部分的に妙な光が入っていたりしますが、それについてもご説明します。

写真左は室内天井の蛍光灯での撮影です。右がE-M10のライブコンポジット機能による「LEDライトセイバーを使った撮影法」で撮ったもの。どちらもホワイトバランスはオートです。ちなみに、ライブコンポジット撮影の露出設定は、シャッター速度が1/2秒でF値が18です。これらの条件は以下の写真も同様です。被写体は、微妙な質感のある猫の置物。色も黒なので撮影しにくいのですが、わりとキレイに撮れました。背後にあるグレーの波のようなものは光のムラです。背景にさらに光を当てれば消えるでしょう。
この撮影方法は、こういった光沢のある被写体の撮影にも向きます。光沢の出具合や余計な写り込みをコントロールできるからです。
レンズを撮ってみました。天井の照明だと、照明のカタチが写り込んでしまいます。ライブコンポジット機能+LEDライトセイバーで撮ると、そういう写り込みを抑えられます。
右のライブコンポジット機能での撮影は、失敗。撮影中にカメラが微妙に動いたようです。メーカーロゴ周辺がブレてしまっています。
気を取り直して再撮影。まずまずうまく行きましたが、今度はメーカーロゴ周辺にハレーションのような光が出て微妙に失敗してしまいました。光源の光が直接レンズに入ってしまったのかもしれません。

 てな感じで使える、ライブコンポジット機能による「LEDライトセイバーを使った撮影法」。手軽にできる新しい撮影方法だと思いますので、興味のあるかたはぜひトライしてみてください。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。