法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

新生活のモバイル回線と料金プランはどう選ぶ?

 例年、2〜4月は新入学や新社会人など、新生活シーズン。生活や仕事の環境が変わることで、スマートフォンなどのモバイル回線も新たに契約したり、他社へ移行することが多い時期と言われる。今回は新生活シーズンに合わせ、この1年間に大きく動いた各社の料金プランを振り返りながら、どんな視点で回線や料金プランを選ぶのかを考えてみよう。

もっとも安くなった日本の携帯電話料金

 今年1月、ICT総研から「2022年1月 スマートフォン料金と通信品質の海外比較に関する調査」の結果が発表された。日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国の6カ国のMNOを対象に、各国のスマートフォン料金や通信品質を比べた調査では、日本の料金は6カ国中もっとも安く、主力サービスである4Gネットワークへの接続率も99.4%でトップという結果が得られた。ユーザーの料金に対する満足度も48.0%になり、前回(2020年7月)の調査に比べ、10ポイント近い改善が見られた。つまり、日本では品質の高いモバイルネットワークをより安価に利用できる環境が整ったわけだ。

 2018年に「4割下げられる余地がある」という発言が政府から飛び出し、安倍政権と菅政権においては半ば強引とも言える手法によって、値下げを促された携帯電話料金。その手法には業界内でもさまざまな議論があり、将来的な影響も含め、今後の通信行政を注意深く見守っていく必要があるが、ユーザーにとっては携帯電話料金が安くなったことは大歓迎であり、これをうまく利用していくことが重要になる。

 そんな携帯電話市場において、もっとも活況となるのが2〜4月の新生活シーズンだと言われる。新入学や新社会人などで、生活や仕事の環境が変わり、新たにモバイル回線を契約したり、他の携帯電話会社やMVNO各社などにMNPする人が多いためだ。

 携帯電話の契約は年次契約が主流のため、各社との契約更新もこの時期のユーザーが多く、各社が積極的にキャンペーンを展開していたが、現在は電気通信事業法の改正により、年次契約(定期契約)の契約解除料が1000円以下に定められ、各携帯電話会社も契約解除料を撤廃するため、移行に伴う手数料などの負担はほぼなくなりつつある。政府のさまざまな施策によって、ユーザーがMNPで移行しやすい環境が整ってきたわけだ。ただ、実際にユーザーが携帯電話会社を変えるかどうかはまた別の話で、各携帯電話会社の解約率は1%前後に収まっている。

各社の料金プランを振り返り

 政治などの話題はこれくらいにして、実際にどんな視点でモバイル回線や料金プランを選んでいくのかを考えてみよう。ただし、回線や料金プランに対する要求は使う人それぞれなので、自分がどれくらい利用するのかを把握したうえで、選んでいくことが基本だ。それぞれの料金プランに合うか、合わないかを決めるのは、契約者自身であることを理解しておきたい。

 まず、各社の内容や料金プランを振り返りながら、それぞれの特徴について、チェックしてみよう。

NTTドコモ

 NTTドコモは5G対応の「5Gギガホ プレミア」「5G ギガライト」、4G対応の「ギガホ プレミア」「ギガライト」、オンラインを基本とする「ahamo」などの料金プランを展開している。

 まず、大容量プランではデータ通信量が「5Gギガホ プレミア」は無制限、「ギガホ プレミア」は最大60GBに設定されてる。パソコンやゲーム機などを接続するテザリングもそれぞれのプランのデータ通信量に応じて利用でき、月々のデータ通信量が3GB以下のときは、月々の利用料金から1650円が割り引かれる。一方、段階制プラン「5Gギガライト」「ギガライト」は、データ通信量が1/3/5/7GBの4段階で変化する段階制プランとなっている。

 音声オプションについてはいずれのプランも共通で、月額1870円で国内通話がかけ放題の「かけ放題オプション」、月額770円で5分以内の通話が無料の「5分通話無料オプション」が提供される。一般的に、プライベートでの音声通話の需要は低くなりつつあるとされるが、仕事などでは必要とされることが多いため、音声通話の利用が多いようであれば、オプションの申し込みを検討した。

 いずれの携帯電話会社でも新規で契約するときは、自分が使いたいデータ通信量などから、いずれかの料金プランを選ぶことになる。進学や就職前から使ってきたユーザーも必要に応じて、料金プランを変更するわけだが、すでにNTTドコモと契約中のユーザーが料金プランを変更するうえで、注意しておきたいのが「ベーシックシェアパック・ウルトラシェアパック」など、シェアパック系料金プランの存在だろう。

 シェアパック系の料金プランは、すでに2019年5月31日に新規受け付けを終了したが、料金プランは継続利用できるため、現在もこれらのプランを契約したままのユーザーも少なくない。たとえば、これまで家族とシェアグループを組んでいて、進学や就職などに伴い、会計的にも独立し、前述の新しい料金プランを契約するとなると、シェアグループから離脱する手続きが必要になる。一般的には保護者がシェアパックの主回線で、独立するユーザーは子回線という想定だが、独立するユーザーが主回線のときは、シェアグループの他の契約者に主回線を切り替える必要がある。ちなみに、シェアグループからの独立や主回線の切り替えは、my docomoでも手続きができる。

2019年5月に受け付けを終了したシェアパック。代表回線に設定されているときは、他の回線に代表回線を変更しないと、新プランに移行できない

 シェアパック系のプランに関連して、もうひとつ注意したいのがネットワークの対応だ。シェアパック系の料金プランは4G LTE(Xi)対応のため、5G対応端末にSIMカードを挿しても4G LTEネットワークにしか接続できない。5Gネットワークを利用したいときは、シェアグループから独立し、「5Gギガホ プレミア」「5G ギガライト」などの5G対応の料金プランを契約する必要がある。ちなみに、NTTドコモは「5G対応端末の利用には5G対応の料金プランでの契約が必要」としており、シェアパック系料金プランや「ギガホ プレミア」「ギガライト」など、4G LTE対応のプランで契約したSIMカードを5G対応端末に挿しても動作は保証されない。実際には、4G LTE契約のSIMカードを5G対応端末に挿しても5Gネットワークにつながらないものの、動作することは報告されているが、保証外であることは理解しておきたい。

 また、シェアパック系の料金プランではなく、4G LTE対応のギガプランを契約しているのであれば、「5Gギガホ プレミア」と「ギガホ プレミア」の差額は100円、「5Gギガライト」と「ギガライト」は同額のため、5G対応端末に買い換えたタイミングで、料金プランも5G対応に切り替えた方が賢明だろう。

ahamo

 NTTドコモの料金プランのうち、他のプランと少し扱いが異なるのが「ahamo」だ。業界トップのNTTドコモが仕掛けたオンライン専用プランということで、2019年12月の発表直後から注目を集め、メディアなどでも大きく取り上げられた。正確な契約数は開示されていないが、NTTの2021年度第3四半期決算説明会では、契約数が200万台半ばまで獲得できていることを明らかにした。昨年3月のサービス開始から、まだ1年が経過していないことを考えれば、順調な伸びと言えそうだ。

ahamoは新規の契約者だけでなく、NTTドコモと契約中のユーザーも移行できる

 プランの内容としては、月額2970円に最大20GBのデータ通信量、5分以内無料の国内通話が含まれ、海外でのデータ通信は追加料金なく、国内で契約するデータ通信量を使うことができる。国内音声通話については、月額1100円の「かけ放題オプション」を契約すれば、国内通話をかけ放題にすることも可能となっている。

 前述の「5Gギガホ プレミアム」など、通常のプランとの違いとしては、申し込みやサポート、手続きがすべてオンライン専用であること、ドコモメールなど、いくつかのサービスがオプション扱いであること、留守番電話やspモード決済(キャリア決済)などが提供されないことなどが挙げられる。故障修理の対応はオンライン修理受付のほかに、ドコモショップでも対応する。サポートや相談なども基本的にオンラインの専用チャットを利用するが、「ahamo WEBお手続きサポート(有料)」を契約することで、ドコモショップでのサポートを受けられる。ドコモメールについては、当初、利用できなかったが、昨年12月に月額330円の「ドコモメール持ち運びサービス」がスタートしたことで、「ahamo」へのプラン変更時に申し込むことで、利用できるようになった。

 新生活という視点で、もうひとつ気をつけたいのが契約者の年齢だ。既存の料金プランが「中学生以上」としているのに対し、「ahamo」は「20歳以上の個人」となっているため、大学や高校に進学したばかりのユーザーは契約できない。

 支払い方法は契約者本人名義のクレジットカードか、金融機関での口座振替のいずれかを選ぶ。これらの支払い方法が利用できなくなったときは、契約者の住所宛に請求書が送られ、その際は発行手数料(165円)が請求される。

au

 auは5G対応と4G対応の料金プランの内容をほぼ統一する一方、5G対応の料金プランを中心にNetflixやAmazonプライムなどのOTTサービス組み合わせた使い放題プランをラインアップすることで、他社とは違った特色を打ち出している。

auの料金プランはNetflixやAmazonプライム、DAZNなど、OTTサービスを組み合わせたバンドルプランが豊富に揃う

 ベースはスマートフォンでのデータ通信が使い放題の「使い放題MAX 5G/4G」で、テザリングやデータシェア、世界データ定額のデータ通信は、上限が最大30GBまでとなっている。

 「使い放題MAX 5G/4G」をベースに、「Amazonプライム」と「TELASA」を組み合わせた「使い放題MAX 5G with Amazonプライム」、「Netflix」と「Amazonプライム」、「TELASA」を組み合わせた「使い放題MAX 5G Netflixパック(P)」と「使い放題MAX 5G Netflixパック(P)」、「TELASA」「Paravi」「FOD Premium」のテレビ系のコンテンツ配信サービスを組み合わせた「使い放題MAX 5G テレビパック」と「使い放題MAX 4G テレビパック」、「Netflix」「Apple Music」「YouTube Premium」「TELASA」などを組み合わせた「使い放題MAX 5G ALL STAR パック」がラインアップされていた。

 これらのラインアップに加え、2月下旬からはスポーツコンテンツ配信サービス「DAZN」を組み合わせた「使い放題MAX 5G DAZNパック」「使い放題MAX 4G DAZNパック」の提供も開始される。DAZNパックの開始に伴い、「使い放題MAX 5G ALL STAR パック」には「DAZN」が追加されるうえ、「Amazonプライム」とクラウドゲーミングサービスの「GeForce NOW Powered by au」も利用できるため、かなり幅広いジャンルのコンテンツを楽しめるようになる。

 こうしたOTTサービスとのバンドルプランは、すでに各サービスでアカウントを作成している場合でもそのまま継承できるケースがほとんどで、料金的にも割安になる。たとえば、「Netflix」はベーシックプランがバンドルされるが、スタンダードプランやプレミアムプランなどの上位プランを選んだ場合は、auかんたん決済で差額を支払う形で契約できる。今年1月に料金の値上げが発表された「DAZN」も割安で、個別に契約すると、月間プランが3000円だが、auのバンドルプラン「使い放題MAX 5G DAZNパック」で契約すると、「使い放題MAX 5G/4G」との差額は実質1100円しかなく、個別契約よりもかなりお得感がある。

 一方、auでは利用したデータ通信量によって、段階的に料金が変わる「ピタットプラン 5G」「ピタットプラン 4G LTE(新auピタットプランN)」も提供される。月々のデータ通信量の区切りは1/4/7GBの三段階で、1GB以下の場合は固定回線などと組み合わせて、月々550円が割り引かれる「auスマートバリュー」が適用されない。また、ピタットプランについては、前述の「使い放題MAX 5G/4G」系の料金プランで提供されているバンドルプランがないため、OTTサービスを利用しないか、個別契約でもかまわないというユーザー向けになる。

 音声オプションについてはいずれのプランも共通で、月額1870円で国内通話がかけ放題の「かけ放題オプション」、月額770円で5分以内の通話が無料の「5分通話無料オプション」が提供される。仕事で頻繁に音声通話を利用するユーザーはオプションの申し込みを検討するといいだろう。

povo

 auは既存サービスとは別に、オンライン専用プラン「povo」を提供している。2021年1月の発表時は、20GBのデータ通信量が利用できる月額2480円の中容量プランとして発表されたが、2021年9月に「povo 2.0」として大幅にリニューアルし、再スタートを切っている。当初発表された「povo 1.0」については、すでに新規受け付けを終了し、現在は「povo 2.0」のみが契約できる。

 povoはオンライン専用プランで、月額0円を基本仕様としながら、データ通信や音声通話、コンテンツサービスをトッピングで追加するしくみを採用している。データ通信は1GB(7日間)で390円から、150GB(180日間)で1万2980円まで用意されており、申し込みから24時間、データ通信が使い放題にになる330円のトッピングも選べる。コンテンツサービスは「DAZN使い放題パック(7日間)」の760円、「smash.使い放題パック(24時間)」の220円の2種類のみが提供されているが、今後、標準サービスのバンドルプランのように、他のOTTサービスとの提供も期待される。

 また、povoが注目されるもうひとつのポイントが「#ギガ活」で、ローソンやドトールコーヒー、すき家などでau PAYで支払うと、「ギガ」(データ通信量)をもらうことができる。オンラインで公開される謎解きでも「ギガ」がもらえるキャンペーンなども提供されており、ユーザーを楽しませる工夫が多い。

 povoは既存契約のプランと違い、海外渡航時に利用するプリペイドSIMの契約にも似たサービスで、必要になったときにトッピングで追加するといった使い方ができる。手続きやサポートはオンラインのみで、契約にはメールアドレスやクレジットカードが必要になるが、eSIMにも対応しているので、2回線目としても利用価値の高いサービスと言えそうだ。

povoは使いたいときにデータ通信量や期間を決めて、トッピングできる

UQモバイル

 KDDIのMVNOサービスとしてスタートしたUQモバイルだが、2020年5月にKDDIに事業統合され、現在はKDDIの別ブランド(サブブランド)として、サービスを展開している。auと並ぶブランドのひとつになったことで、モバイルネットワークは基本的にauと同等の品質とエリアで利用できる。契約やサポートなどの取り扱いもauショップにUQスポットが併設され、同じように扱われるケースが増えている。

 UQモバイルの料金プランも昨今の携帯電話料金の値下げで見直され、2021年1月に「くりこしプランS/M/L」が発表され、同年9月からは5G対応の「くりこしプランS/M/L +5G」の提供がスタートしている。「くりこしプランS/M/L +5G」の特長は、プラン名からもわかるように、余ったデータ通信量を翌月にくり越しができることで、たとえば、月額1628円で最大3GBまで利用できる「くりこしプランS +5G」の場合、まったく使わなければ、翌月は前月分を合わせた最大6GBまでが利用できる。くり越したデータ通信量は翌月末までしか使えないが、データ通信量はくりこし分から消費されるため、当月分が余れば、また翌月にくり越すことができる。現在のように、通勤や通学の頻度が読みにくい状況では、有用なしくみと言えそうだ。

 また、オプションサービスとして、「くりこしプランS/M/L +5G」に月額550円を追加することで、月々のデータ通信量を2GB、もしくは5GB、追加できる「増量オプションII」が利用できる。キャンペーンで13カ月間は月額550円が無料となるため、「くりこしプランS/M/L +5G」のデータ通信量では足らないというというユーザーは、申し込んでおくのも手だろう。

 音声通話のオプションは他社と少し違っており、月に最大60分の国内通話が定額の「通話パック(60分/月)」(月額550円)、国内通話が10分かけ放題の「かけ放題(10分/回)」(月額770円)、国内通話がかけ放題の「かけ放題(24時間いつでも)」(月額1870円)が用意されている。

 また、UQモバイルについても旧プランを契約しているユーザーは、5Gへの対応を考えても新プランへの切り替えを検討したい。たとえば、2021年1月に新規受け付けを終了した「スマホプラン S/R」の内、「スマホプラン S」は月額2178円で最大3GBまで利用でき、2回線目の契約と組み合わせる「UQ家族割」の適用で、現行の「くりこしプランS +5G」と同額の月額1680円になる。ただ、裏を返せば、家族などで2回線目の契約がなければ、割高になってしまうわけで、現行プランなら、1人でも出費を抑えることができる。ひとつ注意が必要なのは、新旧プラン間で切り替えるとき、旧プランで余ったデータ通信量を新プランにくり越せない点だろう。

ソフトバンク

 ソフトバンクはこれまでも無制限と段階制の2種類の料金プランを中心に展開してきたが、昨年3月からは「メリハリ無制限」と「ミニフィット+」で構成し、スマートフォンをはじめて使うユーザーのための「スマホデビュープラン」を提供する。

 まず、「メリハリ無制限」はその名の通り、スマートフォンでのデータ通信量が無制限で、テザリングやデータシェアは最大30GBに制限される。「ミニフィット+」は他社同様の段階制のプランだが、データ通信量の区切りが1/2/3GBで、上限が3GBまでと低い。上限を超えたときは通信速度が最大128kbpsに制限され、1GBあたり1000円の追加データを購入すると、通常の通信速度に回復できるが、「ミニフィット+」で3GBを利用したときの月額が4980円のため、合計5980円になってしまい、「メリハリ無制限」の月額6580円との差額はわずか600円になってしまう。ソフトバンクとしては可能な限り、「メリハリ無制限」を契約してもらいたいため、こうした月額料金の設定になっているようだ。

ソフトバンクの段階制プランの「ミニフィット+」は他社の段階制に比べ、1GBずつに区切られ、上限も3GBと低い

 ソフトバンクと新たに契約するのであれば、上記2つの料金プランから選ぶことになるが、すでに契約しているユーザーは最新の料金プランに変更されているかどうかを確認することをおすすめしたい。ソフトバンクに限った話でもないが、やはり、ここ数年、各社の料金プランは相次いで変更されてきたため、すでに新規受け付けを終了している旧プランのままになっているケースがあるためだ。たとえば、ソフトバンクの場合、大容量プランのデータ通信量で比較すると、2019年9月まで提供されていた「スマ放題」の「ウルトラギガモンスター」は50GBで月額7000円、同時期の「ウルトラギガモンスター+」は動画SNS放題付きで50GBで月額5980円、2021年3月まで提供されていた「メリハリプラン」は動画SNS放題付きで50GBで月額6500円となっている。

 これに対し、現行の「メリハリ無制限」は月額5980円で、前述の通り、テザリングなどの制限があるものの、スマートフォンでのデータ通信は無制限に設定されている。しかも月のデータ通信量が3GB以下のときは、月額料金が1500円、割り引かれるため、より安く利用することも可能だ。現在のように、テレワークやリモートワーク、オンライン授業などが多く、外出時の利用が少なく、自宅では光回線などの高速インターネットの環境が整っているのであれば、新プランに移行した方が割安になるはずだ。すでに大容量プランに移行したというユーザーも見直しをおすすめしたい。

ワイモバイル

 ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルは、ソフトバンクが大容量プランなどに注力する一方、中容量や小容量のユーザーのニーズに応える料金プランを展開している。現在の料金プランは2021年2月に提供を開始した「シンプルS/M/L」で、「シンプルS」が3GBで月額1980円、「シンプルM」が15GBで月額2980円、「シンプルL」が25GBで月額3780円で提供されている。当初は料金プランになかったが、2021年8月からは余ったデータ通信量を翌月までくり越せるようにしており、契約したデータ通信量をムダなく利用することができる。

 この他には「シンプルS/M/L」や従来の「スマホプラン/スマホベーシックプラン」などと組み合わせて利用できる「子回線専用プラン(シェアプラン)」も用意されている。たとえば、スマートフォンで「シンプルS/M/L」を契約しているユーザーがデータ通信対応のタブレットやiPadを利用するとき、新たにもう1回線を契約するのではなく、「シンプルS/M/L」で契約したデータ通信量をシェアする(共有する)ことができる。同様のプランは他社でも提供しているが、ワイモバイルを契約していて、テレワークやリモートワーク、オンライン授業などにタブレットやiPad、データ通信対応パソコンなどを併用したいときには便利なプランと言えそうだ。

 また、ソフトバンク同様、ワイモバイルも旧プランを契約しているユーザーは、見直しが必要だ。たとえば、昨年2月まで提供されていた「スマホベーシックプランS/M/R」、2019年9月まで提供されていた「スマホプランS/M/R/L」などは、現行の「シンプルS/M/L」と500円以上の差があるため、乗り換えた方が安くなる計算だ。

ワイモバイルは従来の「スマホベーシックプラン」から新しい「シンプル S/M/L」に乗り換えた方が安くなる計算

LINEMO

 ソフトバンクのオンライン専用ブランドとして、2021年3月にスタートしたLINEMOは、LINEやLINEモバイルのリソースを活かす形でサービスが提供されている。サービス開始当初は4G/5G共通プランとして、月額2728円(税抜2480円)で最大20GBのデータ通信量を利用できるものが提供されたが、その後、2021年7月に月額990円で3GBのデータ通信量を利用できる「ミニプラン」が発表され、既存の「スマホプラン」と並び、2つのプランが選べるようになっている。

 ミニプランが提供された背景には、元々、ソフトバンクとして、LINEが提供するMVNOサービス「LINEモバイル」からの移行を狙っていたが、LINEモバイルの料金プランに比べ、月額2728円のLINEMOのプランの方が高額なため、より移行しやすいプランを用意している。

 LINEMOの特長としては、手続きなどをオンラインに限定しており、やり取りもLINEをベースにしたユーザーインターフェイスを採用する。LINEに慣れ親しんだユーザーにとっては扱いやすいだろう。サービスの仕様としてはLINEを利用したときのデータ通信量がカウントされない「LINEギガフリー」、契約から1年間は5分以内の国内通話定額オプションが無料の「通話オプション割引キャンペーン」などが挙げられる。LINEモバイルはサービス提供開始から、まもなく1年間が経過するため、既存ユーザーは「通話オプション割引キャンペーン」の対象期間を確認することをおすすめしたい。ちなみに、ネットワークは4G/5G共に利用可能で、エリアや通信品質も基本的にソフトバンクと同等となっている。

LINEMOはLINEのトークからデータ量(データ通信量)や請求額を確認できる

楽天モバイル

 楽天モバイルは第4の携帯電話会社として、2019年10月から先行サービスを開始し、2020年4月から正式サービスをスタートさせている。当初はエリアが限られ、auネットワークへのローミングに頼るしかなかったが、エリア整備を前倒しで進め、今年2月には国内の人口カバー率で96%を達成している。これに伴い、auネットワークを利用するローミングも半年に一度の見直しを経て、都道府県単位で順次、終了している。

 楽天モバイルは料金プランとして、「Rakuten UN-LIMIT VI」のみを提供している。内容としては、利用するデータ通信量に応じて、月々の料金が変動する段階制で、1GBまでで月額0円、3GBまでで月額1078円(税抜980円)、20GBまでで月額2178円(税抜1980円)、20GB超は月額3278円(税抜2980円)という構成で、実質的な使い放題を実現している。ただし、このカウントの対象になるのは楽天回線のエリアで利用した場合のみで、auネットワークを利用するパートナー回線エリアは5GBまでで、5GBを超えたときは通信速度が最大1Mbpsに制限される。

楽天モバイルの「Rakuten UNLIMIT VI」は利用するデータ通信量が1/3/20GBで区切られ、請求額が変わる。2回線目以降は1GBまで月額0円の設定がなく、3/20GB/無制限の段階制

 音声通話は独自の「Rakuten Link」アプリを利用することで、国内通話がかけ放題になる(ナビダイヤルなどは例外)。音声通話の発着信に独自アプリを利用するものの、090/080/070で始まる電話番号を利用するため、実用面での差はあまりない。ただし、各端末のプラットフォーム向けに標準で提供されているアプリや機能、サービスなどが一部、利用できないことがある。また、各プラットフォーム標準アプリを利用した「10分(標準)通話かけ放題」も月額1100円で提供される。

安くなった携帯電話料金をどう活かすか

 ここ数年、モバイル業界では携帯電話料金の値下げ騒動が注目を集めたが、昨年、各携帯電話会社が新料金プランや新ブランドなどを相次いで発表したことで、世界的にもトップクラスの安さを実現されることになった。ただ、各社の料金プランが安くなっただけでは意味がなく、実際に料金プランを見直したり、契約する携帯電話会社を変更することで、消費者として、携帯電話料金の負担を抑えることにつながる。

 冒頭でも触れたように、2〜4月のシーズンは新入学や新社会人など、新生活に合わせ、新たに回線を契約する人も多い。はじめての携帯電話を契約するユーザーは、どの携帯電話会社がいいのか、どれくらいのプランがいいのかがなかなか見つけにくいかもしれない。ただ、従来のように、年次契約による拘束もないため、まずは自分が気になる携帯電話会社やMVNO各社と契約してみて、気に入らなければ、MNPを使って、次の事業者を試してみるくらいの姿勢でもいいだろう。各携帯電話会社が提供するポイントサービスなども回線契約で拘束されていないので、自由度の高さをうまく活かして、自分にあった携帯電話会社やMVNO各社を見つけていくといいだろう。

 また、安くなった携帯電話料金を活かす使い方は、ほかにもある。そのひとつが2回線目の需要だ。複数回線を契約したり、スマートフォンの2台持ちというと、少しマニアックな使い方と捉える人もいるかもしれないが(本誌読者なら、当たり前?)、街中を見ていると、実働世代だけでなく、若い世代のユーザー、意外にも女性ユーザーでも2台をスマートフォンを駆使する姿を見かけることが少なくない。実働世代であれば、1台はプライベート端末、もう1台は会社支給の業務用端末というケースもあるだろうが、用途に応じて、複数の端末を使い分けることもそんなに珍しい使い方でもなくなりつつある。

 たとえば、こんな使い方をする人もいるという。最近ではキャリアアップのため、就職後に他社や他業種に転職をすることは珍しくないが、自分のプライベートの電話番号とは別に、就職するときに仕事用の電話番号を取得し、転職するときはその仕事用回線を解約し、転職先では新たに仕事用回線を契約し、使う人がいるそうだ。当人曰く、2台持ちはプライベートと仕事を区分し、前職のしがらみを持たずに新しい転職先で働きたいという考え方だそうだ。仕事も含め、必要な人とはSNSなどでつながっていて、そこでコミュニケーションができるので、電話番号の引継ぎは必要ないそうだ。これまで「携帯電話会社を変えても同じ電話番号が使える」とMNPのメリットがアピールされてきたが、SNSというツールが普及してきたことで、電話番号の継続を必須としない考えも生まれつつあるのかもしれない。

 そして、複数の回線を運用するうえで、うまく活用したいのがSIMフリー端末を中心に搭載されている「DSDS(Dual SIM/Dual Standby)」や「DSDV(Dual SIM/Dual VoLTE)」などのデュアルSIMだ。たとえば、1枚目に各携帯電話会社のnanoSIMカードを挿し、2枚目にオンライン専用ブランドや別ブランド、MVNO各社のnanoSIMカードやeSIMを割り当てておくわけだ。1枚目と2枚目のSIMカードの料金プランはさまざまな組み合わせが考えられ、1枚目は段階制料金プランを選びながら、音声通話をかけ放題にしつつ、2枚目は割安なデータ通信が利用できるSIMカードを選ぶことで、1枚目のSIMカードのデータ通信量が増えたときのサブとして使うことができる。特に、最近はnanoSIMカードとeSIMを組み合わせたデュアルSIM対応端末が増えており、各社のeSIM対応もチェックしておきたい。ちなみに、iPhoneやPixel、シャオミ製端末など、一部の機種でデュアルSIMを利用したとき、110番や119番、118番などの緊急電話が利用できない不具合が報告されているが、プラットフォームのアップデートなどで、順次、事象が解消されつつある。

eSIMとnanoSIMを組み合わせたデュアルSIMなら、MNO各社の回線にMVNOのSIMカードを組み合わせ、使い分けることができる
2枚のnanoSIMカードを装着できるデュアルSIM対応は、2枚目がmicroSDメモリーカードと排他利用が多い。今度はnanoSIMカード/eSIMが主流になりそう。2枚のnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを同時に装着できるトリプルスロットの機種は非常に少ない

 最後に、端末については各社の端末購入プログラムを利用した安価な販売方法が注目を集めているが、この春のタイミングで、アップルから「iPhone SE(第二世代)」の後継機が登場するのではないかという噂も飛び交っている。本誌記事などで各社の発表もしっかりとチェックしながら、安くなった携帯電話料金を活かした選択をしていただきたい。