法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」が目指した新しい必要十分
2021年4月20日 06:00
2017年の初代モデル発売以来、ユーザーが求める必要十分なスペックを追求しながら、誰もが手にしやすい価格帯を実現し、着実に進化を遂げてきた「AQUOS sense」シリーズ。その4世代目のモデルとなる「AQUOS sense4」、初の5G対応モデル「AQUOS sense5G」がそれぞれ好調な売れ行きを示している。各携帯電話会社向けのモデル以外に、オープン市場向けのSIMフリーモデルも発売され、シリーズの支持はさらに拡大しようとしている。
筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。
「スマートフォン」に何を求めるか
「新しい生活様式」というキーワードが掲げられてから、そろそろ一年が過ぎようとしている。生活にも仕事にも新しいスタイルや価値観が生まれつつあると言われるが、日々の生活に欠かせない「スマートフォン」に求められる要素にも少しずつ変化が見られる。
2019年10月に施行された改正電気通信事業法により、端末購入補助が2万2000円に抑えられたため、スマートフォンの売れ筋が変わったというストーリーは、これまでも何度も触れてきた。その一方で、コロナ禍の影響を受けた約一年間のモバイル市場は、ユーザーが端末を選ぶときの目が徐々に厳しくなり、その端末が価格に見合う価値を持っているか、体験ができるかを慎重に検討するユーザーが増えたように見える。
かつて、シャープは2019年秋のスマートフォンAQUOSの発表時、「“なんとなくハイエンドスマホ”の終焉」というキーワードを掲げ、明確なこだわりを持つユーザーがハイエンドスマートフォンを手にするのに対し、多くのユーザーは「間違いない、賢い選択をしたい」と考え、堅実な製品選びが進むだろうと指摘していた。この一年のモバイル市場の動向を振り返ってみると、その傾向は予想以上に強く見られるようになった印象だ。
今回、取り上げるシャープ製端末「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」は、まさにその流れを強力に牽引するモデルだ。2017年に初代モデルが登場したAQUOS senseシリーズは、毎シーズン、新機種をリリースし、それぞれのシーズンに合った“必要十分”のスペックを搭載しながら、リーズナブルな価格を実現してきた。ユーザーからの支持も幅広く、2019年に発売された「AQUOS sense3」は300万台を販売し、2020年8月の段階でシリーズ累計700万台を突破したという。
今シーズンの「AQUOS sense4」も昨年11月の発売以来、好調な売れ行きを示しており、各社のまとめた販売ランキングではiPhone 12シリーズを抜き、トップセールスを記録したこともあった。続く「AQUOS sense5G」は今年2月から順次、発売され、こちらも5G対応端末として、着実に販売を伸ばしている。
3つのバリエーションが展開される「AQUOS sense4」
今回、取り上げる「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」は、基本的なボディデザインを共通にしながら、各携帯電話会社やMVNO各社向けに複数のモデルを展開しながら、SIMフリーモデルも販売している。特に、「AQUOS sense4」については細かい仕様の違いにより、ほぼ同じデザインで、3つのモデルが展開されており、やや混同しそうなので、少し整理しておこう。
まず、基本となるのは「AQUOS sense4」で、2020年11月にドコモから「AQUOS sense4 SH-41A」が発売され、同月下旬にデュアルSIM仕様のSIMフリーモデル「AQUOS sense4 SH-M15」が発売されている。少し意外な印象もあるが、auとソフトバンクでは「AQUOS sense4」が販売されていない。ちなみに、ドコモの「AQUOS sense4 SH-41A」は店頭で販売される4色のカラーバリエーションに加え、ドコモオンラインショップ限定カラーの3色も展開されている。
次に、同じく昨年11月に楽天モバイルで発売されたのが「AQUOS sense4 lite」だ。こちらは「AQUOS sense4」のトリプルカメラから広角が削除され、標準と望遠のデュアルカメラで構成される。SIMカードは楽天モバイルがeSIMのサービスを提供しているため、nanoSIMカードとeSIMのデュアルSIM仕様となっており、デュアルSIMで利用するときもmicroSDメモリーカードを併用できる。
3つめのバリエーションが同じく昨年11月にワイモバイルで発売された「AQUOS sense4 basic」だ。こちらも「AQUOS sense4」のトリプルカメラから広角が削除され、標準と望遠のデュアルカメラ構成だが、本体前面の指紋センサーもなく、RAMも基本仕様の4GBに対し、3GBに削減されるなど、かなりコストダウンが図られている。
ちなみに、同じ「AQUOS sense4」の名を冠したモデルとして、楽天モバイルとオープン市場向けに「AQUOS sense4 plus」というモデルが昨年末から販売されているが、こちらはボディやデザイン、仕様などがまったく異なる上位モデルという位置付けになる。この機種については、また別の機会に取り上げたい。
シリーズ初の5G対応「AQUOS sense5G」
シリーズの初の5G対応端末として、今年2月から順次、発売されているのが「AQUOS sense5G」だ。
ボディなどの基本仕様は「AQUOS sense4」と共通で、ケースや保護フィルム(保護ガラス)なども同じものが利用できるが、各社の5Gネットワークに対応している点が大きな違いになる。
販売はドコモ向け「AQUOS sense5G SH-53A」、au向け「AQUOS sense5G SHG03」、ソフトバンク向け「AQUOS sense5G(A004SH)」に加え、オープン市場向けのSIMフリーモデル「AQUOS sense5G SH-M17」も展開される。各キャリア向けモデルがシングルSIMであるのに対し、SIMフリーモデルはnanoSIMカードのデュアルSIM対応である店などが異なる。
「AQUOS sense5G」の価格については、各社で少しずつ違い、一括払いの価格は主要3社扱いのモデルが4万円弱から4万円前後、SIMフリーモデルが4万円台半ばから5万円弱となっている。各社の端末購入割引を利用すれば、もう少し安価に購入することも可能だ。
ジャストサイズの持ちやすいアルミ製ボディ
まず、外観からチェックしてみよう。AQUOS senseシリーズは同じシャープ製端末のフラッグシップモデル「AQUOS R」シリーズなどに比べ、ひと回りコンパクトなボディを採用しており、「AQUOS sense5G」「AQUOS sense4」共に、幅約17mmの手にフィットするジャストサイズにまとめられている。
ボディは従来モデルに引き続き、バスタブ構造のアルミボディを採用しており、ボディカラーはアルマイト染色によって、仕上げられている。一般的に、ボディカラーは何層かの塗装やガラスの貼り付けなどで仕上げられるが、塗装による仕上げは長期間、利用していると、どうしても剥げたり、擦れたりすることが多くなってしまう。ガラスも落下時の破損のリスクを伴う。その点、アルマイト染色はアルミの素材そのものを染めているので、長期間の利用でも色が剥げるようなことはない。
ボディはIPX5/IPX8の防水、IP6Xの防塵対応に加え、耐衝撃や耐振動、高低温動作及び保管、氷結など、全19項目を含むMIL-STD-810H準拠の対環境性能を備える。防水防塵、耐衝撃だけでも十分だが、過信はできないものの、さまざまな環境で利用できる性能を確保しているため、ユーザーとしても安心して利用できる。ちなみに、昨今の環境を踏まえ、市販品のアルコール除菌シートでの拭き取りも確認済みだという。
ボディ周りで少し特徴的なのは、右側面の電源キーと音量キーの間に、「Googleアシスタントキー」が備えられていることだ。他機種でも採用例が増えているが、このボタンを押下することで、Googleアシスタントをすぐに起動できるほか、設定を変更することで、シャープ製端末でおなじみの「エモパー」を起動したり、「AQUOS sense5G SH-53A」と「AQUOS sense4 SH-41A」ではドコモが提供する「my daiz」を起動する設定も選べる。
こうした専用ボタンはどちらかと言えば、各社のキャッシュレス決済アプリなども起動できるようにしたいところだが、「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」では独自の機能として、後述する指紋センサーを利用して、電子決済アプリを起動できる「Payトリガー」という機能が搭載されており、こちらを使うことをおすすめしたい。
ちなみに、ドコモの「AQUOS sense5G SH-53A」と「AQUOS sense4 SH-41A」では、端末を振るだけで、指定のアプリを起動できる「スグアプ設定」が用意されており、出荷時には「d払い」アプリが設定されている。
5.8インチフルHD+対応IGZOディスプレイを搭載
ディスプレイは「AQUOS sense5G」「AQUOS sense4」共に、5.8インチフルHD+対応IGZOディスプレイを搭載する。IGZOディスプレイについては、改めて説明するまでもないが、高い透過率によるLEDバックライトの低消費電力化、液晶アイドリングストップをはじめとした高い省電力性能を実現している。今回は省電力設定の状態でも従来モデルに比べ、5%の輝度率を向上させたほか、DCI-P3対応の豊かな色域の再現、コントラストやバックライトの輝度を調整して、屋外でも見やすくする「アウトドアビュー」、就寝時間に合わせてブルーライトを抑える「リラックスオート」などの機能も備える。「AQUOS sense5G」ではNetflixやAmazonプライム、YouTubeなどで対応コンテンツが増えてきた「HDR10コンテンツ」の再生にも対応している。
ちなみに、「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」に搭載されるディスプレイは解像度も同じだが、実際に表示してみると、微妙に表示サイズが異なり、出荷時設定では「AQUOS sense5G」の方はより多くの行数を表示できる。たとえば、SIMフリー版のAPN一覧や[設定]アプリなどで見比べると、わかりやすいが、[設定]アプリの[ディスプレイ]-[表示サイズ]を確認すると、「AQUOS sense5G」が4段階でサイズを選べるのに対し、「AQUOS sense4」は3段階しか選べない。そのため、表示に差異が出ているわけだ。
なぜ、このような違いがあるのかは説明されていないが、おそらく両機種は搭載するチップセットが違うため、グラフィック表示のドライバーソフトなどが異なるのかもしれない。実用上の差は気にならないが、「AQUOS sense5G」の方が細かい調整ができると言えそうだ。
ディスプレイの上部には半円のノッチにインカメラ、下部には指紋センサーを備える。生体認証は指紋認証と顔認証に対応しており、画面ロック解除をはじめ、my docomoなどのログイン認証に利用できる。外出時は常にマスクを装着している昨今の状況を鑑みると、外出時は指紋認証、在宅時は顔認証といった使い分けができる点はうれしい。ちなみに、前面の指紋センサーは手に持ったときに操作しやすいように、親指を登録することが多いが、机の上に置いたときでも利用できるように、人さし指や中指などの登録しておくと便利だ。
また、前述のように、指紋センサーは長押しをすることで、電子決済アプリなどを起動できる「Payトリガー」という機能が搭載される。出荷時設定はオフだが、[設定]アプリの[AQUOS便利機能]-[指紋センサー]-[Payトリガー]で選んだアプリを起動できる。「d払い」は前述の「スグアプ設定」が利用できるが、「au Pay」や「PayPay」はこれらを設定しておくと便利で、コンビニ各社アプリなど、ポイントサービスのアプリを利用するときにも使うことができる。
このほかにも指紋センサーをナビゲーションキーのホームキーとして設定したり、左右にスワイプするジェスチャーで、ナビゲーションキーの[戻る]や[履歴]の機能を割り当てられるようにするなど、指紋センサーの応用範囲は意外に広い。
従来モデルの約2倍超のパフォーマンスを実現
チップセットは対応するネットワークが違うため、「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」で異なるものを搭載する。「AQUOS sense5G」は米Qualcomm製「Snapdragon 690 5G」、「AQUOS sense4」は米Qualcomm製「Snapdragon 720G」をそれぞれ搭載する。
一見、「AQUOS sense4」に搭載されるSnapdragon 720Gの方がシリーズ番号が大きいため、上位のチップセットのように捉えられそうだが、従来モデルのAQUOS sense3に搭載されていたSnapdragon 630とのCPU性能の比較を見ると、「AQUOS sense5G」のSnapdragon 690 5Gは約2.4倍、「AQUOS sense4」のSnapdragon 720Gが約2.2倍と表記されている。つまり、パフォーマンスとしては「AQUOS sense5G」の方が高いという結果になるが、これくらいの違いであれば、パフォーマンスを体感で判別できるレベルではないので、実質的な違いは対応ネットワークくらいだと考えても差し支えないだろう。
メモリーとストレージは共通仕様で、RAMは4GB、ROMは64GBを搭載し、最大1TBのmicroSDメモリーカードを装着できる。SIMフリー版については、2枚のnanoSIMカードを装着できるデュアルSIM仕様だが、2枚目のnanoSIMカードはmicroSDメモリーカードと排他利用となっている。
ネットワークは「AQUOS sense5G」が5G NR/4G LTE/3G W-CDMA/2G GSM、「AQUOS sense4」は4G LTE/3G W-CDMA/2G GSMにそれぞれ対応する。
「AQUOS sense5G」の5G対応については、主要3社向け及びSIMフリーモデルもSub-6のみの対応だが、auとソフトバンクについては5G本来の割り当て周波数帯域に加え、既存の4G LTE向け周波数帯域を5Gに転用する運用を今春からスタートさせている。
auについては「AQUOS sense5G SHG03」が700MHz/3.5GHz帯の転用に対応する予定とアナウンスされているものの、今のところ、端末のアップデート情報で対応した旨は伝えられていない。
ソフトバンクについては「AQUOS sense5G(A004SH)」が700MHz/1.7GHz/3.4GHz帯の5G転用がアナウンスされており、すでに今年2月18日の段階で、ソフトウェアアップデートが公開済みとなっている。
SIMフリーモデルの「AQUOS sense5G SH-M17」については、出荷時に国内の5G NRバンドの「n77/n78/n79」に対応しているものの、auとソフトバンクの5G転用周波数にどのように対応するのかは、まだアナウンスされていない。国内ではSIMフリーモデルの5G対応スマートフォンがまだ少ない状況なので、シャープにはもう少し各社対応情報などを積極的に開示して欲しいところだ。
無線LANについてはIEEE 802.11a/b/g/n/ac対応となっており、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)には対応していない。テザリングについてはWi-Fi/USB/Bluetoothでそれぞれ利用可能で、各携帯電話会社やMVNO各社の料金プランの範囲内で、通知パネルから設定を切り替えれば、すぐに利用できる。特に、「AQUOS sense5G」については、各社の5G対応料金プランでテザリングが無制限、もしくは一定容量まで利用できる環境が用意されていることもあり、「テザリングオート」と呼ばれる機能が搭載されている。
テザリングオートはあらかじめ設定した場所に着いたとき、自動的にテザリングのON/OFFができる機能で、自宅や取引先などに着いたとき、自動的にテザリングを有効にして、パソコンやタブレットですぐにインターネットを接続できるようにする。あるいは、Wi-Fi環境があるオフィスやカフェではテザリングをオフにしておき、その場所を離れたときはテザリングを有効にして、移動中もすぐにパソコンをインターネットに接続するといった使い方ができる。テレワークやリモートワークが増え、自宅に光回線などがないユーザーにとっては便利な機能のひとつと言えるだろう。
バッテリーは両機種共に、AQUOS senseシリーズ最大の4570mAh大容量バッテリーを搭載する。バッテリーでの駆動時間は対応するネットワークが違い、搭載するチップセットも異なるため、まったく同じではないが、ライトな利用であれば、おおよそ一週間程度、利用できるとしている。カタログスペック上の連続待受時間や連続通話時間は、「AQUOS sense4」がわずかに長いものの、実使用ではほとんど差を感じることはなかった。
「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」をほかのAndroidスマートフォンやiPhone 12などをいっしょに持ち歩き、1~2日ほど、経ったとき、他機種はすでにバッテリー切れに近い状態なのに、「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」はバッテリー残量がまだ半分近くだったこともあった。もちろん、使用する頻度が増えれば、バッテリー駆動時間は短くなるが、IGZOディスプレイの高い省電力性能などとも相まって、同クラスのAndroidスマートフォンでももっともロングライフの端末であると言えるだろう。
Android 11を搭載
プラットフォームについては「AQUOS sense5G」がAndroid 11、「AQUOS sense4」がAndroid 10を搭載した状態で出荷されているが、「AQUOS sense4」はすでにOSバージョンアップが配信されている。
筆者の手元にあるドコモの「AQUOS sense4 SH-41A」、SIMフリーモデルの「AQUOS sense4 SH-M15」は、いずれもAndroid 11が動作しており、Android 11で利用できる「スクリーンレコーダー」や「ニアバイシェア」などの新機能が利用できる。本誌ではすでにおなじみだが、シャープ製端末は発売から2年間、最大2回のOSバージョンアップ、3年間のセキュリティアップデートが約束されており、長期間、利用したいユーザーにとって、安心できる環境が整っている。ただし、各キャリア向けモデルとSIMフリーモデルでは、アップデートが配信されるタイミングが少しずつ違うので、その点は理解しておきたい。
日本語入力については、これまでのシャープ製スマートフォン同様、独自の「S-Shoin」が搭載される。日本語を扱うスマートフォンにおいて、日本語入力はもっとも重要な機能のひとつだが、「S-Shoin」は変換効率も良く、カスタマイズ性にも優れているうえ、シャープの会員サイト「SH-SHOW」から追加辞書をダウンロードできるなど、使いやすさにもこだわりを見せている。最近は独自の日本語入力をやめ、Googleが提供する「Gboard」を採用するメーカーも少なくないが、日本語を快適に使えるように、今後も「S-Shoin」の搭載を継続して欲しいところだ。
ユーザーインターフェイスについてはドコモの「docomo LIVE UX」をはじめ、各携帯電話会社独自のホームアプリも搭載されているが、シャープ独自の「AQUOS Home」と「AQUOSかんたんホーム」が全機種にインストールされている。
これらの内、「AQUOS Home」はAndroidプラットフォーム標準にもっとも近い素直なユーザーインターフェイスで、ホーム画面にはウィジェットやショートカットを貼り付けたり、ホーム画面から上方向にスワイプして、アプリ一覧を表示できる仕様となっている。GoogleのPixelシリーズなども同様のユーザーインターフェイスを採用しているが、「AQUOS Home」はアプリ一覧の画面で、アプリをフォルダーにまとめる機能を追加するなど、さらにユーザビリティを向上させている。
また、シャープ製端末ならではの独自機能も充実しており、[設定]アプリで[AQUOS便利機能]から操作することができる。ブラウザやSNS閲覧時に自動的にスクロールできる「スクロールオート」、ワンタッチでスクリーンショットが撮れる「Clip Now」、ゲームプレイ中の通知などをコントロールする「ゲーミング設定」など、実用性の高い機能が揃っている。「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」では「テザリングオート」の有無など、細かい部分に違いがあるが、両機種のユーザーなら、各項目をひと通りチェックしておくことをおすすめしたい。
パッケージに同梱される「クイックスイッチアダプター」を使い、初期設定時、これまで使ってきたスマートフォンとUSBケーブルで接続すれば、Androidスマートフォンだけでなく、iPhoneからもほとんどのデータが移行できる。シャープの「よくあるご質問」のクイックスイッチアダプターのページでも解説されているので、ぜひ、ご覧いただきたい。
広角/標準/望遠のトリプルカメラ搭載
カメラについては、冒頭でも少し触れたように、「AQUOS sense5G」「AQUOS sense4」共に、背面にトリプルカメラを搭載する。
背面下段の外側に搭載されているのが約1200万画素のCMOSイメージセンサーに、F2.0のレンズを組み合わせた標準カメラで、焦点距離は24mm相当(35mmフィルム換算、以下同)、画角83度の撮影が可能。背面上段の内側に搭載されているのが約1200万画素のCMOSイメージセンサーにF2.4レンズを組み合わせた広角カメラで、焦点距離は18mm(35mmフィルム換算、以下同)、画角121度の広角撮影に対応する。背面上段左側に搭載されているのが約800万画素のCMOSイメージセンサーにF2.4のレンズを組み合わせた望遠カメラで、焦点距離は53mm相当、画角45度の撮影が可能。焦点距離で比較すると、望遠カメラは標準カメラの約2倍強の望遠となっている。3つのカメラはいずれも電子手ぶれ補正に対応しており、静止画と動画で手ぶれを抑えた撮影ができる。
新画質エンジンは「ProPix2」を搭載し、従来モデルで培われてきた多彩な撮影機能が継承されている。シーンに合わせた最適な設定で撮影ができる「AIオート」、人物撮影で背景をぼかす「背景ぼかし」、明暗差があるシーンでも白飛びや黒つぶれを抑えられる「オートHDR」、動画撮影中にきれいな構図の静止画を自動的に撮影する「AIライブシャッター」、動画撮影と同時に自動的に約15秒のショートムービーを作成する「AIライブストーリー」、子どもなどの特定の被写体にフォーカスして再生できる「フォーカス再生」などが搭載されている。「AIオート」には新たに「ナイトモード」が加わり、夜景を自動的に判別し、ライトアップされた風景やイルミネーションなども美しく撮影することができる。
ちなみに、背面のカメラモジュールの写真をご覧いただくとわかるが、カメラモジュール中央に「おサイフケータイ」のアイコンがプリントされており、非接触決済などを利用するときはこの部分をリーダーライターにタッチする。接触時にリーダーライターへの干渉を避けるため、カメラ部の周囲はエッジが立っており、実際にレンズ部分がほかのパーツに当たるようなことはなさそうだ。
インカメラは約800万画素CMOSイメージセンサーに、F2.0のレンズを組み合わせており、焦点距離は26mm、画角78度での撮影を可能にしている。顔の輪郭や目の大きさ、肌の色などを調整する補正機能も搭載される。
5Gへ進むか、4G LTEを続けるか。新しい必要十分を追求した定番モデル
冒頭でも触れたように、国内のモバイル市場は難しい時期を迎えつつある。
2019年の電気通信事業法改正に加え、コロナ禍の影響、新しい生活様式への適応、テレワークやリモートワークの普及など、さまざまな要素によって、ユーザーがスマートフォンに求めるものが変わりつつある。もちろん、各社のフラッグシップモデルやプレミアムモデルも魅力的だが、不確定な要素が多い現在の社会環境においては、やはり、コストパフォーマンスのバランスが取れ、必要十分な仕様が満たされたモデルを選びたいというのが多くの人が思うところだろう。
今回、取り上げた「AQUOS sense5G」と「AQUOS sense4」は、スマートフォンを利用していくうえでの必要十分な仕様を満たしつつ、高い省電力性能や実用性に優れた機能を搭載することによって、多くのユーザーにとって、満足度の高いモデルに仕上げられている。長期間の利用を考えた本体の仕上げや防水・防じん・耐衝撃などの対環境性能、OSのアップデートやセキュリティパッチの提供など、ユーザーが安心して利用できる環境も整っており、「定番モデル」の名に相応しい仕上がりの製品と言えるだろう。
悩みどころとしては、ほぼ同等のスペックを搭載しながら、4G LTE対応の「AQUOS sense4」、5G対応の「AQUOS sense5G」という2機種が同時に販売されていることだろう。
将来を見越せば、端末の1万円という価格差であっても「AQUOS sense5G」を選びたいところだが、利用する地域によってはまだ5Gのエリア拡大が期待できないところもあり、あえて4G LTE対応の「AQUOS sense4」を選ぶという手も考えられる。その一方で、auとソフトバンクは既存の4G対応の周波数帯域でも5Gが利用できる転用をスタートさせており、都市部を中心に「5G」のアンテナピクトを見かける機会も増えてきそうだ。
5Gへ進むか、4G LTEを続けるか。自分が求める必要十分と利用環境を確認しながら、選ぶことをおすすめしたい。