三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

薄くてシンプルデザインの「AQUOS R10」 カメラ性能の実力やいかに

 10万円近辺で購入できるスマートフォンが近ごろ盛り上がっている。今回取り上げるシャープ製Android端末の「AQUOS R10」もそのひとつだ。三宅一成氏による柔らかいデザインと、ライカ監修による約5030万画素のデュアルカメラを搭載しているのが特徴だ。その写りを試してみた。

 なお、端末の特徴や詳細スペックなどは、本誌別記事を参照いただきたい。

ライカ監修のデュアルカメラを搭載

 搭載されているデュアルカメラのスペックは以下のとおり。約50Mピクセルで撮影し、ピクセルビニングによって12.6Mピクセルの出力となる。もちろんフル画素での記録も可能だ。像面位相差オートフォーカスに対応し、メインカメラのレンズはHEKTOR(ヘクトール)を積む。

カメラのスペックはこのとおり
項目内容
標準カメラ有効画素数約5030万画素 CMOS、F値 1.9レンズ[焦点距離23㎜]、1/1.55インチセンサー、HEKTOR レンズ、全画素PDAF対応
広角カメラ有効画素数約5030万画素 CMOS、F値 2.2レンズ[焦点距離13㎜]、PDAF対応

 円形のカメラ部デザインはさりげない主張なので、撮影時に威圧感を被写体に与えなさそうである。また長く使える意匠に感じた。

 撮影画面はいたってオーソドックス。シンプルかつ使いやすい機能配置で迷うことはないだろう。設定画面から「ライカ」もマークを写し込めるウォーターマーク機能や、画面上にシャッターボタンを追加できるフローティングシャッター機能もオンにできる。AIパワーを活用してノイズの少ないナイトシーンや、料理撮影時などに端末の影を消す機能もある。

 「AQUOS R10」各画角の写りを見てみよう。各画角ともスッキリとしたクリーンな絵作りだ。メインカメラは明部、暗部ともにディテール描写は良好で、精細感もある。2.0xから上はデジタルズームになるが、線が太くなる印象もあるがその写りも予想以上にいい。

 広角カメラはまずまずといったところか。「AQUOS R10」はデュアルカメラだが、ヘビーに撮影しない限り、日常的な撮影に不便と不足はあまり感じないかもしれない。

0.6x
1.0x
2.0x(デジタルズーム)
4.0x(デジタルズーム)
8.0x(デジタルズーム)

「AQUOS R10」でブラブラ実写スナップ

 さっそく「AQUOS R10」を持って各所をブラブラ撮影してきた。まず感じたことは端末がかなり熱くなるということだ。晴天の日中では長時間の撮影を避けた方がいいだろう。撮影をこまめに行う、直射日光を避けるなど工夫は必要に感じた

フードトラックの看板を撮った。鮮やかな発色と表面の質感がうまく撮影できた。木目の感じがよく写っている
日陰にあった駄菓子の数々。太陽の反射光とテントの透過光という微妙な光源だったが、14chスペクトルセンサーのおかげだろうか、見た目同様の色合いに仕上がった
デジタルズーム最大時でのカット。やはりここまで行くとかなりしんどい描写となる。遠めに鑑賞するのならいいが、拡大したりトリミングするのは難しそうである。もし望遠カメラを多用するのであればデュアルカメラの本機ではなく、他の端末を選ぶのが賢明だ
「AQUOS R10」はライカ風の味わいを感じられるフィルターを搭載している。「オリジナル」、「ビビッド」、「モノクロ」、「セピア」だ。これはモノクロームによるものだが、ハイライトの清涼感とシャドウの締まりがいい印象である
このカットは上記フィルターの「セピア」を使った。夏の暑さ感を調色したモノクロプリントのように表現できた
晴天下、木陰にあったテーブルとチェアを撮影した。14chスペクトルセンサーの影響でスッキリとした色合いに写しとられたが、見た目の印象よりかなりあっさり目になった
工事中の橋と東京スカイツリー。デジタルズームの写りはやや残念だ。近距離のスナップや料理などの撮影では不満はないが、ちょっとしたおでかけや旅行などで、遠くの被写体をググッと引き寄せたい場合は注意と覚悟が必要だろう
河川敷にあった「イヌ禁止」の看板をマクロで。リアル感とテクスチャー感が両立していていい印象だ。料理などの撮影でも役に立ちそう
ナイトモードは優秀だ。手前の波に揺れる船から背景の建物まで「AQUOS R10」は鮮明に捉えた。ホワイトバランスも的確だし、ノイズの粒状感も好ましい
背景をぼかすことが可能なポートレートモードもいい。「ぼかし」と「美肌」をスライダーでコントロールできるほか、「人物」と「ペット」の切り替えもでき、ペットの毛並みもうまく切り抜くこともできる。このカットはネコでも招き猫だ。きれいに境界判定され、自然なボケを演出してくれた
試用していて気になったのはフレアの発生だ。どのスマートフォンにも現れるものだが、強力な点光源などをフレームに入れる際は注意したい。ちょっと構図を変えるだけでその影響を低減できるので、約6.5インチのディスプレイ(Pro IGZO OLED)をしっかりと見てシャッターを切りたいものだ

「AQUOS R10」まとめ

 ライカによる味付け、シャープの画質エンジン「ProPix」でスッキリかつ、フィルターによるユニークな写りを楽しめる「AQUOS R10」。

 薄くシンプルなデザインは、近ごろのゴテゴテした三眼カメラ搭載のスマートフォンと違って、優しい雰囲気を求める人にピッタリのルックスだ。

 一番の特徴はやはり比較的買いやすいプライスではないだろうか。デュアルカメラ構成ということに納得できるのであれば、機種変更する端末の候補にいれるのもいいだろう。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau