三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

グーグル「Pixel 9a」のカメラ性能を実写レビュー! デザイン一新、日常を美しく切り取るデュアルレンズの実力

 ついにミッドレンジスマートフォンの真打ちが登場した。グーグルの「Pixel 9a」はデュアルカメラを搭載し、バリバリと使えるAI「Gemini」を引っさげて、リーズナブルな価格で春の商戦に名乗りを上げた形だ。さっそくそのカメラの写りを試してみようではないか。 なお端末の特徴や詳しいスペックなどは、本誌別記事を参照いただきたい。

Pixelの特徴「カメラバー」が消えた

 「Pixel 9a」を見ると「Pixel」シリーズの目印であったカメラバーがなくなったことに驚く。電車内や観光地などで「Pixel」シリーズを使っている人を、パッと見ただけで判別できていたのだが、シンプルかつフラットなカメラ部の形状に変更された。 これに伴ってカメラ部分の出っ張りもごくわずかになった。ポケットやバッグからスルリと出し入れしやすくなったのは歓迎できる。さらに純正のケースを装着すると、完全にカメラ部がケース内に収まりガードされるのもいい。安心安全である。

 「Pixel 9a」はデュアルカメラを搭載している。ライバル機がシングルカメラなので、これは大きなアドバンテージと言える。カメラのスペックはこのとおり。

項目内容
広角カメラ48メガピクセル Quad PD デュアル ピクセル
絞り値 ƒ/1.7、画角 82°
イメージ センサーサイズ 1/2 インチ
超解像ズーム最大 8倍
光学式および電子式手ぶれ補正機能
ウルトラワイド カメラ13 メガピクセル ウルトラワイド カメラ
絞り値 ƒ/2.2、画角 120°12
イメージ センサーサイズ 1/3.1 インチ

 撮影画面はほかの「Pixel」シリーズと同様だ。カメラの切り替えアイコンは3つで、シンプルで使いやすい配置になっている。

 各画角の写りはこのような感じ。ウルトラワイドカメラから広角カメラ、その2倍まではハイエンド機顔負けの見事な写りを見せてくれる。センサーサイズが小さくなったが、それを感じさせない描写がお見事。

0.5x
1x
2x
8x(デジタルズーム最大時)

 デジタルズーム最大時の8倍ではやはり厳しい描写だが、被写体によっては5倍程度ならなんとか見られる写りであった。

「Pixel 9a」でブラブラ実写スナップ

 使用感は実に軽快! 「Pixel」シリーズらしく起動も速く、シャッターチャンスにも強い。デュアルカメラなので表現の幅も広く、「a」シリーズ新搭載のマクロ撮影機能も便利。撮影が本当に楽しめる端末だと感じた。

お屋敷の和室。HDRの効きがよく、室内と屋外の明るさのバランスが絶妙である。天井の板、畳の目もしっかりと写しとっている
今年は神田川の桜が見事だった。半逆光でその姿を狙ったが、デジタルズームにしてはまずまずの解像感を得られた。5倍程度までは実用的か
桜の下に停まっていたハーレーダビッドソン。そのメタリックで使い込まれた質感を「Pixel 9a」はリアルに捉えてくれた。エアクリーナーの上に落ちた桜の花びらの発色もいい感じ
早稲田の定食屋でランチをとった。マクロフォーカスにならないギリギリの距離だったが、広角カメラもいい仕事をしてくれた。フライのサクサク感とソースのシズル感が肉眼同様に撮れた
「Pixel 9a」の新機能はとてもいい。このようなシチュエーションでもスッと被写体に接近して、シャープなマクロカットを撮れるのだから。花びらの可憐な色合い、そしてしべの精細感までとても美しい。ここまで接近できると背景のボケも大きくムーディーだ
電源ボタンのダブルクリックでカメラが起動できる「Pixel 9a」はブラブラと歩きながらの撮影が楽しい。気軽に撮影できるので、さまざまな被写体に敏感になり、歩くのがウキウキしてくるほどだ。それでいて写りがいいのだから堪らない
大学の校舎を撮った。広角カメラからのデジタルズームだが、5倍程度のこれくらいが何とか見られる倍率だろうか。建物のディテールがややおぼろげに感じられる
ウルトラワイドカメラがあると撮影の幅がグンと広がって楽しい。池の畔から建物の屋根を入れて撮ったカットだが、このような演出が可能になってくる。カメラの数は機種選びの指標になるだろう
「Pixel 9a」はハイエンド機ではないが、一般的なシチュエーションではそれに匹敵する描写を見せてくれた。2つのカメラで日常的なシーンをキレイに写し撮ってくれる端末である
立ち飲みワインバーでのカット。室内の照明と屋外の光とのバランスがいい感じ。グラス内の泡もしっかりと捉えている。シャッター音も控えめで静かな室内でも耳障りではない
大手町のビルを撮った。センサーサイズが小さくなっているが、ハイライト部、シャドウ部とも粘りとノイズ感もまずまずに感じられる。そういえば「Pixel 9a」はバッテリーの保ちもよかった。5100mAhという大容量で、1日中撮影して歩いてもまったく問題がない、というか数日間は保つ感じであった
都内では明るくなかなか夜景モードにならないが、「Pixel」シリーズの伝統で低照度下も「Pixel 9a」は強い。光源の色、タイルの目地、金属の質感まで、さすがコンピュテーショナルフォトグラフィーのパイオニアらしい写りだ

「Pixel 9a」まとめ

 カメラバーを廃したデザインになり、親しみやすさとポップさを手に入れた「Pixel 9a」。カメラはセンサーサイズが小さくなって、その描写が心配だったが杞憂に終わった。

 何よりも2つのカメラがあることによって、撮影表現の幅と楽しみが、しっかりと存在することが確認できた。AIを活用した編集機能や、買いやすい価格ということもあり、多くの人に手に取って撮影してもらいたい端末に仕上がっている。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau