三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

もっと撮りたくなるスマホ「Nothing Phone (3a)」の魅力とは

 ユニークなデザインと斬新なGlyphインターフェースで注目を集める英Nothingから、「Nothing Phone (3a)」が登場した。先代モデルのデュアルカメラからトリプルカメラに進化し、日常的な撮影をスムーズにこなせるような端末に仕上がっていた。奇抜なルックスだけでなく、描写性能と機能も素晴らしい物であった。
端末の特徴や詳細スペックなどは、本誌別記事を参照いただきたい。

3つのカメラを搭載した「Nothing Phone (3a)」

 トランスルーセントのバックパネルに鎮座する3つのカメラは本気のデザイン面での特徴だ。

 カメラのスペックはこのとおり。

項目内容
メインカメラ50MP 光学手ブレ補正搭載、1/1.57インチセンサー、焦点距離24mm
望遠カメラ50MP、1/2.75インチセンサー、焦点距離50mm
2倍光学ズーム、4倍センサー内ズーム、30倍ウルトラズーム
0.64µm、f/2.0、視野角49.5°
ウルトラワイドカメラ8MP、1/4インチセンサー、焦点距離15mm、視野角120°

 ルックスとは反対に、カメラ撮影画面はオーソドックスなデザインだ。

 設定画面もご覧のとおり。

 各画角の写りを見てみよう。ウルトラワイドカメラと広角カメラは自然で見た目に近い仕上がりだ。望遠とその4x時はやや像がくすみがちな印象である。

 ただ使用感はいたって軽快で、電源ボタンのダブルクリックで起動してサクサクとスナップショット撮影を楽しめた。

0.6x
1x
2x
4x

 「Nothing Phone (3a)」は「TrueLensエンジン 3」という映像エンジンを搭載し、撮影した結果を演算して1枚の写真に仕上げている。HDRは「Ultra XDR」と呼ばれ、1ショットで8枚のRAW画像を取得し、「TrueLensエンジン 3」とSnapdragon 7s Gen 3 AIエンジンで高速処理される。ポートレートモードやナイトモードでも同様だ。

 また「プリセット」機能もユニークだ。簡単に言えば自作および共有できるフィルターなのだが、LUT(.cube)の読み込みもでき、ステップを踏んでの自作プリセットの制作が面白い。色合いというか味わいがなかなかよく、とても気に入ってしまった。撮影に適用するのも簡単で、気軽にさまざまなプリセットを適用できるところもいい。

 「Nothing Phone (3a)」はディスプレイも大きくて明るく、日中の撮影でも視認性が高くフレーミングしやすい。またボディもエッジが立ってるもののホールドしやすく、使っていてとてもいい印象を受けた。

「Nothing Phone (3a)」でブラブラ実写スナップ

 本機は電源ボタンのダブルクリックでのカメラ起動も高速で、街を歩きながらのスナップショット撮影も快適に行えた。カメラの切り替えもスムーズで、プリセットの適用も素早く行えるので、ストレスを感じることなくシャッターを切ることができた。またSIMを入れなければシャッター音がしないので、静かなシーンでも安心である。

航行中の屋形船。望遠カメラでその後ろ姿を撮ったが、フォーカスもピッタリでまずまずの仕上がりになった。とっさのシャッターチャンスにも強いのが「Nothing Phone (3a)」だ
ウルトラワイドカメラは8メガピクセルだが、実用性は十分だ。隅田川沿いを歩く外国人観光客を撮ったが広々としたカットになった
全般的に好印象な「Nothing Phone (3a)」の写りだがフレアには悩まされた。強い点光源がフレーム周辺部にあると盛大にフレアが発生する。これには注意が必要だ
ナイトモードで都会の空き地を撮影した。ノーマル時と比較してかなりコントラストと明瞭度が高く感じられる。照度と必要時に応じて使い分けるといいだろう
「Nothing Phone (3a)」の発色はなかなかムードがあっていい。特に夕方から夜間にかけては味わい深く感じられる。暖かい色味が気に入った
上野方面に撮影に行ったあと、必ず立ち寄る甘味屋で季節限定のクリームあんみつを撮った。若桃の甘露煮にフォーカスしてシャッターを切ったが、そのシズル感に驚かされた。また食べたい
夜の別府、歓楽街を徘徊。歴史あるライブハウスのサインが実にムーディーに撮影できた。「Nothing Phone (3a)」、ちょっと欲しくなってしまった
別府駅前に立つ油屋熊八の像。別府観光生みの親でもあり、「亀の井旅館」創業者でもある彼の像をポートレートモードで撮った。足の間がやや境界処理できていないが、駅舎のボケ具合などはいい感じだ。立ち位置やアングルを変えてベストな結果を求める必要がありそうだ
ゴールデンウィークのイベントを訪れた。木々に提げられたバナーの文字がユニークだ。やや線が太く感じる物の、気持ちいい空気感や爽快感が自然な色合いとともに捉えられている
通常のアウトプットは約12MPだが、設定で50MPでの撮影も可能である。1x、2xの撮影となるが、必要に応じて使い分けたい
自然だが記憶色ベースの仕上がりになる「Nothing Phone (3a)」はなかなか楽しい。より自分好みの結果を得たいのであればプリセットを自作して、追い込んでのセッティングができるところがいい。似たような機能を持つスマートフォンもあるが、この「Nothing Phone (3a)」はそれが作りやすく共有しやすいのがいいね
三軒茶屋で昔懐かしいサインを発見した。「Nothing Phone (3a)」はそれを克明に捉えた。ひび割れ剥げかけた塗料が時間の経過を物語っている。こんな光景をもっと「Nothing Phone (3a)」で撮影したいと思った

「Nothing Phone (3a)」まとめ

 斬新で奇抜なルックスで話題の「Nothing Phone (3a)」だが、実際に使ってみてとてもいい印象を持った。まずは持ちやすく使いやすいサイズ感、そして軽快な動作のカメラ。そして作りやすく共有しやすいプリセット。「Nothing Phone」はシリーズ独自の世界観を持つが、外観、アプリのデザインも統一されていてその「ワールド」にハマってしまった感じだ。

 何よりもカメラの色合いがよく、もっともっと撮影したいという気分にさせてくれた。ちょっと欲しくなったスマートフォンである。日本未発売のフラッグシップ機の「Nothing Phone (3a) Pro」も気になるところである。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau