三井公一の「スマホカメラでブラブラ」
グーグル「Pixel 9 Pro XL」のカメラを試す 「オートフレーム」など新機能も盛りだくさん
2024年8月22日 02:00
世界だけでなく日本でも大変好調なグーグルのAndroidスマートフォン「Pixel」。2024年は例年より少し早めの新シリーズ「Pixel 9」の市場投入となった。最新のチップセット「Tensor G4」を搭載して、AIによるカメラ性能に磨きをかけたラインアップはとても強力に感じる。
今回はそのフラッグシップ端末「Pixel 9 Pro XL」を一足先に試してみたが、その写りに驚かされた。AIを活用した編集機能も面白く、使うたびにワクワクさせられた。ではその描写力をご覧いただきたいと思う。なお、端末のスペックや価格など詳細は本誌別記事を参照してほしい。
デザイン一新のカメラ部
「Pixel」といえば端末を横切る独特のカメラユニット部が特徴だったが、そのデザインが変更された。両端が丸みを持ったいわば楕円形のような意匠になったのだ。よりカメラ部が主張を持った感じに思える。
「Pixel 9 Pro XL」に搭載される3つのアウトカメラのスペックはこのとおり。
- 50MP広角カメラ(F/1.68 35mm判換算24mm相当)
- 48MP望遠カメラ(F/2.8 35mm判換算110mm相当 光学5倍ズーム対応)
- 48MP超広角カメラ(F1.7 35mm判換算12mm相当 マクロフォーカス対応)
超広角から超望遠まで幅広いレンジを撮影できるようになっている。いずれもピクセルビニングによって出力は約12MPになるが、カメラの「プロ」設定により約50MPでの撮影と書き出しも可能になっている。
「プロ」設定では、50MPやRAWでの撮影、マニュアルライクな撮影セッティングが行える。
画角比較カット
「Pixel 9 Pro XL」の各カメラの写りを見てみよう。超広角、広角、望遠の3つと、デジタルズーム域のカットだ。どのカットも色合い、解像感ともに申し分のない写りで「Pixel」画質を感じることができる。特に望遠域での描写は申し分ない。
これに「ズームエンハンス」というAIを活用した新機能が「Pixel 9 Pro」シリーズには加わる。昨年「Pixel 8」シリーズ発表時にアナウンスされていたデジタルズームでの画質向上機能がようやく搭載されたもの。
超望遠域で撮影したカットを「Googleフォト」において超解像写真にアップデート可能だ。画面左下に出現する「ズーム画質...」というボタンをタップし、しばらく待つとシャープでクリアな像にアップデートされた。元の画像とは比べものにならない解像感である。AIの力、恐るべし。
ユニークな「一緒に写る」
「消しゴムマジック」で話題を呼んだグーグルの編集機能だが、この「一緒に写る」もAIを使った面白い撮影ができる。
集合写真を撮る場合、シャッターを押す人は一緒にフレームインできないが(セルフタイマー使用時は除く)、ディスプレイ上のガイダンスに従えば別々に写したカットをうまくAIが合成して、一緒に記念写真を撮ったかのように仕上げてくれるのだ。
知り合いの父娘を撮影したあとに「Pixel 9 Pro XL」を手渡し、赤ら顔の自分を撮ってもらって、うまく記念写真を仕上げることができた。いろいろなシーンで活用できそうな機能である。
AIを活用した「オートフレーム」と「イマジネーション」
「オートフレーム」はAIが考えた最適なフレーミングを提案してくれる新機能だ。
たとえば縦位置で撮った写真の横方向に画像を生成して横位置で使えるようにしたり、フレームに一杯で窮屈な写真の周辺部を生成して余裕のある構図にしてくれたりするもの。写真的にはちょっとひっかかるものがあるが、用途によっては助かる機能だといえよう。
新東名の工事現場を縦位置で撮ったカットを、編集マジック内の「オートフレーム」で縦位置に。オリジナルにはなかった雲や樹木が自然に生成され、縦に伸びやかなカットに変身した。
「イマジネーション」はプロンプトを用いて写真を変化させるものだ。テキスト入力して背景などをさまざまな印象に操作可能である。現在プロンプトは英語のみ使用できる。
ひまわり畑のカットを編集マジックで開き、背景部分をタップして、英語でプロンプト「Manhattan skyscraper」と入力。青空と山の背景がマンハッタンの摩天楼に置き換えられた。なかなかうまい感じに写真を変えることができた。
新UIが楽しいパノラマ
パノラマも進化を遂げている。まず暗いシーンでの描写が向上したのと、撮影UIが一新された。これがまた面白く使いやすいのだ。ディスプレイ上のドットを中央に表示される○にドンドンと重ね合わせていく感じ。リズミカルに右(または左に)ドットを追いかけていき、好みのパノラマ感まで来たら終了である。今までよりスムーズかつ違和感の少ないパノラマ写真を撮影できるようになっている。
低照度環境の地下街でもクリーンなパノラマ写真を撮ることができた。新UIも使いやすく、水平を出しやすかった。
天体撮影モード
「夜景番長」の異名を持つPixelシリーズだが、ナイトシーンはもとより星空を写す「星景撮影モード」も評価が高かった。しかしその起動にはしっかりとした三脚に据え付け、端末が振動しなくなった場合にしか発動しなかった。
それが今回手動で切り替えることが可能になったのだ。カメラを起動して「夜景モード」を選択し、右下のアイコンをタップすればスライダーが表示される。それを操作すればいい。5秒のセルフタイマーもあるのがニクい。
動画ブースト
動画機能もグンと強化されている。まず撮影だが最大20倍までの高解像度ズームが使用可能に。そしてAIアップスケーリングによる8Kビデオも収録可能になった。8Kの設定で撮った映像をアップロードしてサーバーで処理するイメージである。
停泊している船の上から、羽根を乾かしている鵜(ウ)を撮ったが、その精細感はもちろんのこと、船上で結構な風が吹いていたのに手ブレ感もかなり抑えられている。これはスゴい。8Kの仕上がりにはビックリさせられた。
「Pixel 9 Pro XL」でブラブラ実写スナップ
超広角から超望遠、暗所から星景まで、8K動画からパノラマ、AIを駆使したユニークな編集機能と最新スマートフォンならではの機能満載の「Pixel 9 Pro XL」だが、その使い勝手も良好だ。
電源キーダブルクリックでのカメラ機能立ち上げはもちろん、明るく見やすいディスプレイ、長時間のバッテリー駆動、高速でキビキビとした動作など、写真を撮っていても楽しい端末に仕上がっている。もちろん画質は上々だ。
夜も相変わらずいい描写だ。グーグル日本法人の入るビルと月を撮ったが、露出とコントラストのバランスも良好だ。色合いも見た目の印象に近い。
「長時間露光」モードを使えばライトトレイルも簡単に撮影できる。手軽に写真を楽しめるのが「Pixel 9 Pro XL」のいいところである。
超広角カメラの緻密な写りにも注目だ。鳥居のディテールと、細い枝と葉先までしっかりと写しとることができた。50MPでの撮影もできるのでプリントしたい場合でも安心である。
グーグル「Pixel 9 Pro XL」まとめ
「Pixel 9 Pro XL」は先代モデルから着実に進化したスマートフォンだという印象を持った。まずはキビキビとした動作速度、そして明るく大きいディスプレイ、楽しく便利なAI、なによりも超広角から超望遠までスキがなく高い描写力が何よりも素晴らしかった。
ただサイズと名称がわかりにくくなった感じがある。「Pixel 8 Pro」が「Pixel 9 Pro XL」と同等サイズで、同じカメラスペックで小さいサイズのものが「Pixel 9 Pro」というラインアップになったのだ。
外装も高級感が増し、所有欲も手に取った感じもとても満足感が高い仕上がりになっている。
純正ケースを装着すればカメラ部もほぼフラットに近い状態になるので、ポケットへの収納や置いた際にも安心である。
「Pixel 9 Pro XL」は超広角から超望遠まで、暗所から8K動画まで、AIを駆使して写真を楽しめる端末になっているといえる。本当に使っていて楽しかった。「Pixel 9 Pro Fold」や「Pixel Watch 3」、「Pixel Buds Pro 2」など新製品も目白押しなので、グーグルからしばらく目が離せそうもない。