みんなのケータイ

世界一退屈なケータイをバンコクのバーで使ってみた

 ハイネケンとボディガがコラボして作った「世界一退屈なケータイ」こと、The Boring Phone。2024年4月に発表されたときは「何もできないケータイ」として話題になりました。

 筆者もその後実機を入手してしばらくは眺めるだけだったのですが、せっかくなら実際に使ってみようということで、バンコクに行った時にホテルのバーで使ってみました。

The Boring Phone

 The Boring PhoneはHMD Globalのノキアブランドの4Gケータイ「Nokia 2660 Flip」をベースにしたフリップタイプのフィーチャーフォンです。外観は透明ボディーに好感されており、ややレトロ感あふれる外観も特徴。

 外画面は1.77インチ、メイン画面は2.8インチ、カメラは300万画素とロースペック。インターネット接続やアプリのダウンロードは非対応。通話、ショートメッセージくらいしかできない単機能なケータイです。

通話程度しかできない単機能端末だ

 The Boring Phoneは友人たちと集まったときなど、スマートフォンばかり見ないでリアルな人と人とのコミュニケーションを楽しもう、というコンセプトから生まれた端末です。

 そのため一応アプリらしきものとして「Call TAXI」、「Sports Check」、「Mail」がありますが、これらはジョークアプリで実際は機能はしません。

メールなどのアプリは正しく動かない

 筆者はこのThe Boring Phoneを入手後に、ハードウェアとしてのレビューを何度か行いました。しかしハイネケンの言う「コミュニケーションを楽しむ」シチュエーションで使う機会が無かったのです。

 ということで今回はバンコクに行った際に、ホテルのバーで友人たちと合うときに使ってみました。

初めてバーに持ってきた

 筆者はバーに友人たちより先に到着したものの、The Boring Phoneでは時間を潰すすべがありません。SNSもできないしブラウザを開いてニュースを見ることもできません。

 でも実はThe Boring Phoneには娯楽系のアプリが一つ入っています。ドットの絵を食べると蛇が伸びていくという、レトロ感あふれる「Quick Snake」です。このアプリは旧ノキアのフィーチャーフォンの初期のころから多くの人に愛用されていたアプリ。

 普段ならやらないようなゲームですが、1日の仕事を終え程度良く疲れた状態でクライバーにいると、これが結構楽しめます。

バーでの時間つぶしにQuick Snakeが楽しめた

 10分ほどして友人たちが合流。そのあとはThe Boring Phoneを閉じて友人たちと会話を楽しみます。話が盛り上がれば盛り上がるほど、あっという間に時間が過ぎていきます。時折時間が気になるものの、ポケットからThe Boring Phoneを取り出して画面を見れば十分です。取り出せば友人たちに「それ何? どこのケータイ」と、そこから話もはずみます。

時計を見るときだけポケットから取り出す

 夜遅い時間とはいえ、筆者は海外のスマートフォンメーカーとも仕事をしているので欧米からのメールが来ていないか気になります。

 スマートフォンがあればメールアプリを開き、返信が必要なら「ちょっとごめんね」と友人たちに断って文字入力に没頭してしまうのですが、The Boring Phoneの「Mail」アプリは起動すると、「There are no mails here(Get Back to having a good time)」という表示が出るだけ。

 ついつい癖でメールを見たくなるものの、起動してもメールは見れないのです。

 同様にSports Checkもサッカーや野球など贔屓のチームが気になる人向けのアプリで、これも起動後は「Your team is hopefully doing fine(But you can do better if you get baked to your friends)」と、これまた「そんなこと気にしてないで友人たちと楽しもう」という気にさせてくれるのです。

 実際のバーではこの画面を友人たちに見せてまた盛り上がったりと、別の意味で使えるアプリだなと思います。The Boring Phoneはリアルなコミュニケーションの時間中にスマートフォンはなくても困らないな、と改めて思わせてくれるのです。

Sports Checkを起動するとこの画面が出るだけだ

 さて2時間ほど楽しんだあと、そろそろ友人たちのタクシーを探さなくてはと思うのですが、TAXIアプリを起動すると、「STEP1:Get the bartender's attention.」→「STEP2:Ask if they can call you a taxi.」→「STEP3:Be proud thet you don’t drive after a drink.」と順番に表示されるだけ。

 バーテンダーを呼んでタクシーを頼め、そして自分は飲んだから運転はしないことを誇りに思う、こんな感じです。

TAXIアプリも何もしてくれない

 もちろんThe Boring Phoneがなくとも夜の時間は楽しめます。しかしThe Boring Phoneを持つことによってスマートフォンの無い不便さをかえって楽しんだり、The Boring Phoneが会話の話題になるなどむしろ積極的に夜の時間に使いたいと思えました。

 ネタとして生まれただけのThe Boring Phoneと思いきや、実際に使ってみると世界一退屈なケータイというよりも、世界一リアルなコミュニケーションの楽しさを再認識させてくれる製品でした。