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携帯各社の法人向け料金プランの動向

 携帯各社から2024年度第1四半期の決算が相次いで発表された。今回は、携帯会社の収益ドライバーとして強化が進む法人事業の料金プランについて、先日弊社で行った法人アンケート調査結果の内容を踏まえ、動向をお伝えしたい。

全体の38.8%が「相対契約」「相対パッケージ」で契約

 前回の記事でもご案内の通り、携帯各社にとって法人事業の重要性は年々高まっている。NTTドコモの法人事業の売上は既に30%程度に上り、楽天モバイルは伝えられるところでは、純増の成長ドライバーの1つが法人契約だと言われている。

 法人事業における回線販売で特徴的なことの1つが料金プランではないだろうか。コンシューマ向けでは、あらかじめカタログやネットで提示されている標準的な料金プランが適用されるのに対して、法人向けではカタログにはない特別プランを一定の条件(導入規模など)を満たす法人顧客に広く展開していく「相対パッケージ」や、さらに大型案件では契約回線数や取引関係などに応じて、法人顧客ごとにカスタマイズしたプランを提供する「相対契約」などがある。

 今回、弊社でアンケート調査を実施。2022年から2023年で通信キャリアを変更した際の料金プランを聞いたところ、実に全体の56.6%が「相対契約」もしくは「相対パッケージ」で契約していると答えている。

携帯会社が「相対」を推す理由

 弊社では法人市場に関して10年以上定点観測しているが、この相対比率は年々高まっているという感触を持っている。例えば、昔は1000回線以上の契約案件でなければ出なかったような料金プランが、今では100回線でも出されているケースもある。背景には、スマホも行き渡り、他社から契約を奪取するためには、インパクトのあるプランが必要で、そうなると相対しかないということになる。

 相対は標準的な料金プランと比較し安価であるため、当然だが利益率は低い。実際、相対比率は従業員規模が大きい企業層ほど導入率が高く、そのため、企業層に回線収益だけで見れば、ショップで標準的な料金プランを契約してくれる中小・零細企業層ほど利益率が高いと言われている。

 ただし、大企業層も相対で回線契約ができれば、その後に他商材やDX、ソリューションなどを導入してもらい収益を確保できれば十分にペイできるという算段がある。そのため、見せ筋商品として、魅力的な回線プランを提案するのだ。また、大手企業には回線以外に携帯会社と既に別の商材(例えば保険、什器、自動車など)で取引関係があって、そういう事情も踏まえて相対契約するというバーター取引も存在する。

 こうした事例はある意味、安定的な回線契約だが、逆にそれが他社へひっくり返った時には、業界に大きな衝撃が走る。大手企業によっては、1社で数万から数十万回線契約しているケースもある。

 今や法人市場の攻防が、携帯会社の純増の行方に大きな影響を及ぼしていることは間違いない。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/