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「日本ナンバーワンキャリアを目指して」楽天モバイルが法人向けイベントで披露した現況と今後の進化

 楽天モバイルは、同社の法人プラン1周年を記念し、「Rakuten Mobile Business Innovation Summit」を都内で開催した。

 講演には、楽天モバイル 代表取締役会長の三木谷 浩史氏と、代表取締役 共同CEOの鈴木 和洋氏、代表取締役 共同CEO兼CTOのシャラッド・スリオアストーア(Sharad Sriwastawa)氏、代表取締役社長の矢澤 俊介氏が登壇し、楽天モバイルの現況と今後の取り組みを説明した。

会場アンケートからスタート

楽天モバイル 代表取締役会長の三木谷 浩史氏

 冒頭登壇した三木谷氏は、まず会場の来場者に向けてアンケートを実施。まずは「今の日本の携帯電話料金は高いと思うか?」という問いに、8割の来場者が「Yes」と回答。

 続いて、「一生高級自動車に乗れるが、携帯は持てない」と「携帯は持てるが、一生自動車には乗れない」の2択、いわゆる自動車とスマートフォン、どちらに重きを置いているか? という問いかけでは、96%の来場者が後者を回答した。

 3問目は、楽天モバイルを実際に使っているかどうか。来場者の60%は利用している一方、40%のユーザーは「No」と回答。三木谷氏は、Noと回答した約70名に対し「帰りに楽天モバイルショップに立ち寄ってほしい」と呼びかける。

 4問目からは、モバイル技術に関連した質問。「O-RAN」に関して、33%のユーザーが知っていると回答。楽天モバイルが世界ではじめて商用化に成功した完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークを知っているか? には、57%のユーザーが知っていると回答した。

 また、OpenAIについては、94%のユーザーが知っていると回答した。

 楽天について、三木谷氏は1997年に「インターネットというものに果敢にチャレンジした」と、同社の先進性をアピールし、ショッピング流通総額が6億円、カードの取扱高が4兆円を超えるとアピール。

 そのうえで、生活に欠かせないスマートフォンについて、法人ユーザーにおいても重要だと指摘。業界最後発となる楽天モバイルについて「難しいと言われていたが、新しいテクノロジーでなんとかなるんじゃないか」と始めた経緯を説明。加えて「携帯電話料金が高すぎる」という問題について「健全な形ではない」とし、これを社会的なミッションとして捉え、参入したとした。

 楽天モバイルのビジネスとして、三木谷氏は「一般消費者向けのB2Cサービス」と「企業向けのB2Bサービス」があるとコメント。法人向けプランの導入から1年経過するが、「大きなポイントはAI、AIも基本的にスマートフォンで使うようになってくる」旨を語り、スマートフォンとAIを掛け合わせた売上向上やマーケティング効率を上げるといった効率化を目指していきたいとした。

 AI技術に関して、三木谷氏は「楽天は、おそらくAIについて日本の中ではトップグループに入っている」と指摘。英語を社内公用語にしている点や、世界中に研究拠点を設置し、楽天証券や楽天生命、楽天トラベルなどでもすでにユーザーに見える形で導入を進めている。社内においても、マーケティングやオペレーション、クライアント売上を20%上げる「トリプル20」という目標を掲げ、AIの活用を進めているとアピールする。

 三木谷氏は、「No AI,No Future」(AIが無ければ未来はない) とする一方、続けて「But No Human,No Future」(しかし、人間がいなければ未来がない)とし、AIによる活用だけでなく、人間味もしっかり残し、AIを推進していく姿勢を示した。

 最後に三木谷氏は、再び冒頭の質問について触れ「次回皆さんにお会いするときは、楽天モバイルを使っているのが60%ではなく100%になっていることを願いたい」とし、会場の笑いを誘った。

三木谷氏

つながりやすさをアピールする

代表取締役 共同CEO兼CTOのシャラッド・スリオアストーア(Sharad Sriwastawa)氏

 続けて登壇したのは、スリオアストーア氏。楽天モバイルが展開を進めている完全仮想化ネットワークについて「運用コストや設備投資は効率的」とする。たとえば、既存キャリアの基地局には、多くの機器がある一方、楽天モバイルの基地局では。ほとんどをクラウドにすることで、導入コストが安く、交渉も容易になり、基地局の敷地賃料、建設費を抑えることができるとアピールする。

 データセンターにおいても、1つのクラウドで動かすことで、効率化を図っているとした。日本全国に2000以上のエッジデータセンターを保有しており、仮想化とコンテナ化を1つのプラットフォームで進め、サーバーあたりのコストも削減しているという。

 一方で、楽天モバイルのサービスエリアについては、業界最高水準とアピール。世界的な評価機関でも、高評価を得ているとし、2024年からは「フェーズ3」と位置づけ、国内ナンバーワン携帯キャリアを目指して取り組んでいくと、自信をのぞかせた。

 また、エリアカバレッジについても、「プラチナバンド」の活用と、「ASTスペースモバイル計画」の2つを挙げ、取り組みを加速させていることをアピールした。

一番つながる楽天モバイル

代表取締役社長の矢澤 俊介氏

 続いて矢澤氏は「一番つながる楽天モバイルを目指して」とし、本格的サービス開始前の2020年第1四半期の基地局数4738から2023年第4四半期には6万940局に到達すると説明。総務省認定の計画値からも4年前倒しで人口カバー率96%を達成したと実績をアピール。KDDIのパートナー回線を無制限化することで、99.9%の人口カバー率を達成できたとした。

プラチナバンド

 矢澤氏は、これからのエリアカバー拡大を図る施策として、まず「プラチナバンドの活用」を挙げる。

 矢澤氏は、プラチナバンドについて「周波数の特性として飛びやすい、建物の浸透度も高く、飛ぶ距離も倍ほど違う」と説明。地下階やゴルフ場などのルーラルエリア、国立公園など基地局が置きづらい場所などで有用に進むとし、主要都市部から優先的に2024年早期の利用開始を進めるとし、「6月くらいにはスタートさせていこうと思っている」旨を言及した。

スペースモバイル

 また、AST スペースモバイルの低軌道衛星と、スマートフォンを直接通信し、地上の基地局によらない通信サービスの提供準備も進めているという。

 矢澤氏は、低軌道衛星について「アンテナの大きさが非常に重要」と説明。「アンテナを折りたたんで宇宙空間に運ぶ技術があるのはASTだけ」と、その先進性をアピールした。

法人事業においても民主化

代表取締役 共同CEOの鈴木 和洋氏

 鈴木氏は、楽天モバイルの法人事業について説明する。

 鈴木氏は、コンシューマー事業同様に、法人の携帯事業についても「民主化を目指している」とコメント。楽天グループ全体で90万社以上の法人と取引があるとし、DX加賀遅れている日本の特に中小企業のDX化を同社としても取り組んでいきたいとした。

 法人プランでは、開始から約1年間で1万社を超える契約を得たとし、3月からプラン名を「Rakuten最強プラン ビジネス」に改称することを発表した。

 今後の進化について、鈴木氏はまず「Rakuten Link Office」のデスクトップ版リリースを発表。パソコンからでも国内無料通話やSMSの送受信などシームレスなコミュニケーションができるとアピール。

 また、海外ローミングも2GBまで無料で利用できるとし、Rakuten Linkと併用することで、海外でのビジネスでも強力な武器になるとした。

 続けて鈴木氏は「パートナーソリューションの拡大」を挙げる。端末管理やセキュリティ管理などの要望を担うパートナー企業のラインアップを拡充するという。

 そして、「楽天経済圏との連携」についても言及し、楽天グループ全体の約90万社の取引先に「楽天のサービス」「楽天モバイルのソリューション」を提供していくとした。たとえば、楽天トラベルに掲出しているホテルや旅館では、スマートフォンがインカムになるソリューションを導入するなどにより、生産性向上に貢献できるとした。

 実際に、企業や地方自治体で楽天モバイルのソリューションを活用している事例があるとし、コスト面だけでなく、さまざまなソリューションで法人の事業を支援しているとアピールした。